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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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79話 隔てる壁とは


よく見掛ける事だろう、“一般人”という表現。

芸能人や有名人の熱愛や結婚等の報道等で使用され当たり前の様に目にし、耳にし、口にする言葉。


では、この一般人とは如何なる定義の事なのか。


極端な例を挙げれば、一般人とは社会的な法律下で前科の無い非犯罪者。

それ以外は全ては犯罪者、と。

そう線引きする事が出来ると言えるだろう。

ある意味、これが最も判り易い訳で。

本来の法律の効力を正しく施行する為には最適だと言う事も出来るのではないだろうか。


だがしかし、それでは本当に極端な訳で。

それ故に、もう少し分類線(・・・)が増える。

ただ、それ自体が微妙なのが現実だったりする。


判り易いのは政治家や芸能人、アスリートだろう。

ある程度の知名度や影響力を持っている者であれば一般人のカテゴリーには入れない。

そういった考え方なのかもしれないが。

立場や職業的には圧倒的な少数派だが、彼等自身は他の人々と同じで、同じ社会の中に生きている。

少し特別では有るかもしれないが、それだけで。

それが理由で「一般人ではない」とされる。


果たして、それは差別(・・)と何が違うのか。

或いは“マイノリティ・ハラスメント”と言うべき社会性集団ハラスメントではないのか?。


俗に言う、“プライベート保護”の問題で。

彼等の様に圧倒的少数派の立場・職業に就く人々に個人情報の保護する権利は存在しないのか?。

少し考えれば、誰もが「それは可笑しい」と思える事を身勝手な理由で恰かも正しい様に見せる。

これは立派な詐欺罪に当たるのではないのか?。


けれど、罪に問われる事は無い。

犯罪者(・・・)の主張が正しいとされる社会。

それを疑いもしない事を。

何故、人々は恐ろしく思わないのだろうか?。


その理由こそが、最大の原因。

元々、そういった立場・職業等の人達というのは、基本的に遠い存在(・・・・)だった。

日常的に会ったり、話したりは出来無い。

だからこそ、多くの人々が彼等に関心を持つ。

それに目を付け、商売として成功した。

個人情報を売る(・・・・・・・)事で利益を得る。

そう、彼等は間違い無く、犯罪者である。


だが、事件等で取り上げられる問題とは区別され、彼等が罰せられる事は無い。

有名人であれば、プライベートは無視出来る?。

そんな法律が存在しているのだろうか?。


マスメディアを通し、多く情報が発信されてきた。

そして今、科学技術の発展により、様々な人々から多種多様な情報が簡単に発信出来る時代。

本当の意味での恐ろしさを理解していますか?。

個人情報を売られるのは有名人だけではない。

今まで彼等の情報に関心を持っていた人々。

自称(・・)一般人も今や対象と為っている。

その事実を目の当たりにした時。

貴方は、その手を、どうしますか?。


“個人情報の保護”を法律で行うのなら。

決して、例外(・・)を赦してはならない。

そして、全て執行猶予無しの懲役十年以上。

それ程に強化されなければ、繰り返される犯罪。


如何に技術が進歩しようとも。

必ずしも、法律が伴って最適化(・・・)されてはおらず。

また、人々のモラルが守られている訳でもない。


そして、自分が被害者となる可能性は高まり。

周囲の人達が無害(・・)である保証は無く。

同時に、自分も加害者となる可能性も高まった。

そういう社会、そういう時代に生きている、と。

改めて自覚し、自身の言動を見直す事。

それが一番簡単で、しかし一番難しい訳で。

だからこそ、常に「どうなのかな?」と。

本の少し、想像力を働かせる必要が有るのでは?。

それが結果的に自身を、誰かを、守る事に繋がる。

それは誰にでも出来る事なのだから。



「…やっぱり、かなり大きいな」


「し、仕方が無いじゃないですか、そういったものなんですからっ、一々言わないで下さい!」


「…ん?、ああ、いや、違う違う

愛紗の胸の話じゃないって

擁の手足(・・)の大きさの事だから」


「………へ?………──っ!?、~~~~~~っ…」



俺の呟きに恥ずかしそうに抗議した愛紗。

だが、それが勘違いだと判り、瞬間沸騰。

擁が起きていれば、「御母さん、顔真っ赤っか」と思ったかもしれないな。

まだ生まれて間もないんだから、無いだろうけど。


──と言うか…のぉ、愛紗さんや?。

それは儂が常日頃から女人(おなご)の乳ばかりを見ておる、助平じゃと言いたいんかのぉ?、んん?。

勿論、儂も男じゃからのぉ。

「気にならん」「全く見ん」とは言いわせんよ。

ああ、男として視線は行くとも。

勿論、胸だけという訳でもないがのぉ。

じゃが、仕方無かろう。

それが男としての本能なんじゃから。


──という翁な俺の語りは置いといて。

愛紗が抱っこした擁の手足を見ながらだったから、愛紗が勘違いしたのも仕方が無い。

視線の高さ的には、同じ辺りだしな~。

でも、そういう風に間違えるとは……もしや。



「実は小さくなるのが勿体無いと思っている?」


「──っ!?、そ、そんな事有りませんっ」



…いやいや、愛紗さん。

貴女、こういう時の嘘が下手過ぎますから。

まあ、そういう事なら夫として頑張りましょう。

「な、何を…」って、判ってるでしょうに。

「だ、駄目、擁が…」って、大丈夫大丈夫。

ぐっすりと眠ってるから。

さっき授乳して御腹一杯、御眠の時間です。

だから、安心しなさい。



「そういう事ではっ────」






何だかんだで夫婦仲は円満そのもの。

愛紗にしても「早く二人目をっ…」って感じです。

まあ、それは愛紗だけじゃないんですけど。

俺としても娘も欲しいから二人目以降は望みます。

──とは言え、今は幽州統一の途中ですからね。

流石に優先順位を間違えはしません。



「それで、擁は?」


「確かに誠達よりも二回りは大きいな

まあ、産まれた時点で擁は大きかったけど」


「それはそれでしょ?」


「まあな、けど、心配する様な事じゃないって

寧ろ、アレは擁が生まれ持った天賦だしな」


「手足の大きさがか?」


「成長すれば手足も大きくはなる

でも、成長の仕方って人各々だろ?

同じ女性でも、白蓮と同じ身長で足の大きい女性が居れば、逆に小さい女性も居る

身長は低いが、足が大きかったり、身長は高いが、足が小さなかったり、と」


「それは……まあ…確かにな」


「手足の大きさにも良し悪しは有る

大きい手は大きな物を掴んだり、支え易い

ただ、狭い所には手を入れられないし、細かい物を掴んだり扱ったりするのに苦労する事も有る

大きな足は安定感や脚力に繋がるが、特注しないと靴を用意出来無かったり、隠密行動で苦労したりと考えれば出てくる

それでも、大きい事や小さい事は特別な才能だ

意識して大きくしたり、小さくしたりは出来無い

それが理由で特別視されたりする事も有るが…

その辺りは周囲の考え方や在り方次第だからな」


「宅の場合、そういう心配は無いわね」



咲夜の言う通り、それは当然だ。

そんな差別や虐めを看過する理由が無いからな。

それを認め、活かす術を教える事は有っても。

貶めたり、侮蔑したりする様な事は赦しません。

我が子だから、ではなくて。

子供の可能性を否定する真似を、だ。

ええ、そんな馬鹿な連中には特別授業(・・・・)です。

先生は心を鬼にして愛の教鞭を振るいましょう。



「そういうものか…」


「そういうものだな

擁の場合、あの手足は武に向いてるだろうな

勿論、本人が望めば、だけど」


「愛紗が熱心に教えそうだけど?」


「それは大丈夫だと思う、俺達も居るしな

愛紗自身、強要されて今が在る訳じゃないからな

意志(遣る気)の必要性は理解してるよ」


「無理に遣らせても伸びないものね」


「才能は勿論だが、自主性が一番大事だからな

結局、本人に遣る気が無いなら、高が知れてる

一線(其処)を越えるには努力しかない」


「それと指導者の存在が、だけどな」


「そうね、それは本当に大事よね」



──と、白蓮と咲夜が俺を見詰めてくる。

そんなに見詰められると…忍、困っちゃう。

──なんてボケは要りませんか…そうですか。


まあ、確かに白蓮も咲夜も俺と出逢って伸びた。

それまでは望んでも、頑張っても、届かなかった、越えられなかった。

その苦悩を、挫折を、失望を、悲哀を、渇望を。

よ~く、知っているからこそ。

そういう出逢いの重要さを理解している。

勿論、俺や華琳達もね。

俺の場合には、母さんと老師の存在が大きい。

……同時に、二人の死も、な…。

“失う事”を知らない者よりも。

知っている者の方が、根幹の強さが深い(・・)

根張り(・・・)が違う”とでも言うべきか。

それが、生死を分ける決定打になる事も有る。


まあ、それから、華琳達に教えていた事も大きい。

他者に教える事で言語化したり、整理したりする。

そうする事で再認識したり、更に深く理解したり、より効果的・効率的に出来る様に為ったり。

教える事で自分も教わる。

そういった積み重ねが今の俺を成している訳だ。

転生特典(チート)の恩恵も有るけど。

そういう能力にしたのは俺自身だしね~。

改めて、俺グッジョブ!。


──っていう自画自賛は大体スルーされます。

ああ、華琳や数名は別です。

寧ろ、拾われたら面倒なので。

俺の方が遠慮します。



「まあ、何にしても殆んどが新興(・・)なんだ

それに初代(・・)は皆、女当主だからな

各家の()に関しては追々になるだろ」


「そうね、夫・父親が同じでも立場は様々だし…」


「代々続いてる身だと色々と有るしなぁ…」


「名家・名門は大変ね」


「他人事みたいに…」


「事実、他人事だもの

妻同士、母親同士、友人として、同じ家臣として、相談に乗ってあげる事は出来るけど、決定・実行は貴女達自身がしなければいけないもの

それだけは忍にも代わって貰えない事でしょ?」


「だから面倒なんだっての…」


「ふふっ、それは贅沢な(・・・)悩みよ」



咲夜に諭され、卓に突っ伏す白蓮。

別に咲夜も揶揄ったり、皮肉ったりはしていない。

何方等かと言えば、激励(・・)に近いだろう。


皆が俺と結婚し、徐家に入る(・・・・・)なら違うのだが。

実際には皆、各家の当主という立場だ。

白蓮や月達の様に、元々が立場や影響の強い場合、下手に別の人物を当主に据える事は悪手。

伝手(・・)を勘違いし、暴走されでもしたら。

目も当てられませんからね。

そんな事態を招かない様に、皆が当主を務める。

ただ、それ故に、如何に夫婦でも俺が各家の当主の代わりに家の事を決めたりは出来無い。

絶対ではないが。

遣り過ぎたり、慣れ過ぎたりすると不味い。

自分達は勿論だが、周りが陥ると厄介だから。


それは咲夜達にしても同じ。

そして徐家の当主である俺にしても言える事。

誠達とは父子だが、そういう面では他家の関係。

息子達にしても、兄弟としての自分達と、各家嫡男としての自分達とが有る訳で。

将来的には今の白蓮の様に為っている事だろう。

俺達も親として指導し、助力もするが。

ある程度の年齢に為れば、自分達で遣って貰う。

頑張れ、愛しき息子達よ。


白蓮達にしても、「さっさと譲りたい」というのが嘘偽り無い本音だろうからなぁ…。

尤も、そうしたら後は俺とイチャつく日々。

ええ、紫苑なんて「十五人は欲しいです」と笑顔で言ってますからね。

冗談ではないし、それは上限(・・)でもない。

飽く迄も、本人の希望ですが。

それは「少なくても(・・・・・)」ですから。

そして、紫苑は本気な訳で。

ええ、産めますよ、俺達には氣が有りますから。

…十五人か……名前、考えられるかなぁ…。


──と、軽い現実逃避をしている所に近付く気配。

その主──華琳の存在が現実に引き戻してくれる。



「失礼します、御兄様」


「何か有ったか?」


「はい、つい先程、隠密衆からの報告が届きました

“遼東属国”に動きが有ったそうです」





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