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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   生じて新たな


俺にとっては前世を含めても初めてとなる子供で、第一子の誠の誕生から早九ヶ月。

先日、五人目となる我が子が生まれました。

愛紗との長男で、名は関()です。

…決して、「寛容な人に成れ」とかの意味が有って名付けた訳では有りません。

勿論、人の上に立つ者としては必要な事ですが。

愛紗への当て付けとかでは有りませんから。

それに愛紗とも相談して決めていますからね。

その辺は誤解無き様に。



「誰に言ってるのよ、貴男は…」


「心の中に居るリトルな俺?」


「疑問で返さないで頂戴」



──とまあ、慣れた咲夜との会話。

しかし、そんな咲夜の腕の中には擁が居る。

愛紗?、“御花摘み”ですが、何か?。


全力を尽くしているので当然ですが。

母子共に無事で健康です。

息子達の中では産まれた体重は一番大きくて。

その割りには愛紗も安産だったので良かったです。

愛紗は安産型でしたしね。

スポンッ!、って感じで産まれましたよ。


それはそれとして。

愛紗は華琳を除けば俺にとっては最古参の妻。

出逢った頃から異性──嫁候補として意識していた相手でも有りましたからね。

色々と感慨深いです。

勿論、梨芹の時も嬉しい事は嬉しかったんですが。

白蓮達と重なった忙しさも有りましたからね。

一人一人と向き合いながら、ではなく。

一段落してから、「…俺も父親か~…」と。

じんわりと感動したって感じだったので。

単独だった愛紗の方が、気持ち的には盛り上がった感じが有るのは否めません。

妻達にも息子達にも格差(・・)は有りませんが。


それに五人目ですから。

冷静に感じ取れるだけの余裕も出来てますしね。

感じ方に変化が有るのは当然と言えば当然かと。

結局、嬉しいものは嬉しいし、目出度い訳で。

妻も子も愛しい事には変わりません。


──とか、そんな事を考えていると声が掛かる。



「そう遣ってると咲夜の子供みたいだな」


「私達にとっては皆、可愛い我が子(・・・)でしょ?

それとも、貴女にとっては違うのかしら?」


「ぅぐっ…悪い、私の言い方が悪かったよ…」


「私達は構わないけど、子供達の前では気を付けて貰わないと困るわよ?

貴女って変な所で抜けてる(・・・・)から」


「はぁ~…言い返す言葉も無いなぁ…」



戻って来た愛紗と一緒に来た白蓮と咲夜の会話。

確かに、まだ息子達には解らない話だろうな。

少なくとも転生者の可能性は無いんだしな。

ただ、親を見て、子は育つ。

家庭内では何気無い言い方だったとしても。

一歩、家の外に出てしまえば価値観は違う訳で。

それが他人を傷付けたり、不快に思わせたりする。

そういった事は決して珍しくはない。

だから、家庭内でも意識して置くべき事は多い。

それは親である自分達の責任であり。

何より、我が子達を守る為に繋がるのだから。



「初めまして、擁ちゃん、貴男のお兄ちゃん達よ」



そんな二人を他所に一緒に来ていた紫苑は咲夜から渡された愛紗が抱く擁の前に維達を見せる。

ずっと一緒に育っている誠達は御互いを兄弟として認識している様だが、擁とは初対面。

そして、まだ兄弟という概念は理解していない。


しかし、それでも本能的に判るのか。

擁の小さな手を、恐る恐るといった感じで握り。

擁が嬉しそうに笑うと、維も笑顔を見せる。


それは誠達にしても同じで。

反応に個人差は有れど、皆、初めての弟。

大人達の感覚では誠達は兄弟だが。

本人達は四つ子も同然な感じの様で。

仔犬や仔猫が集まって眠っているみたいに。

四人は一緒に昼寝をしたりすると重なり合ったり、引っ付き合ったりしている。

だから、こうして明確に弟という存在は初めてで。

けれども、その存在を愛おしく思えるのなら。

それで十分。

小難しい話は大きく成ってからで構わない。

笑顔で「宅の弟は可愛い!」と言えるなら。

取り敢えずは、兄弟仲は大丈夫でしょうから。



「…それにしてもアレよね

貴男の子供達って皆、母親似なのよね

まあ、まだ五人しか生まれてないけど」



そう咲夜が言う様に我が息子達は皆、髪や眼の色は母親から丸々受け継いでいる。

久は祭から肌の色も受け継いでいるしな。

ある意味、“彼女を男にしたら…”な感じだ。

つまり、皆、将来は美形になるって事です。

…く、悔しくなんてないんだからねっ?!。


──という謎のツンデレ現象は置いといて。

個人的には大して気にする事ではない。

母親からだろうが、父親からだろうが、混じろうが両祖父母からの隔世遺伝だろうが。

俺にとっては些細な事です。

だって、自分の子供なんだし。

重要なのは其処だけですから。


尚、結婚相手の連れ子を我が子として愛せる人を、個人的には凄いと思います。

亡くなった母さんも、そういう人でしたが。

俺は我が子として(・・・・・・)は難しい。

勿論、それは立場等の違いも有ってなんですが。

孤児院を創設し、子供達を保護・教育して送り出すというのとは違いますからね。

それは普通に遣ってますし、件の孤児院の子供達に対する接し方は一般的な子供達よりは親しい。

その辺りだと言えます。

ただ、優遇したり、より厳しくする事も無い。

飽く迄も、送り出すまでが大人としての責任だと。

そういう立場で接していますからね。


…まあ、咲夜達に言わせると「貴男は子煩悩よ」な感じみたいですが。

自分の事は意外と自分が一番解らないものです。


それから、華琳達との関係も俺的には別物です。

華琳達とは家族でも兄弟姉妹な関係ですからね。

他にも幼馴染みや師弟関係も加わりますが。

それは恋愛対象(・・・・)と成り得る可能性を含みます。


ええ、義理の娘との恋愛は俺には不可能です。

年齢差が開き過ぎるのは無理。

そういう意味だと、母さんへの想いも憧憬かな。

まあ、当時は転生したばっかりだから意識は前世の感覚に引っ張られてただろうしね。

そう考えると可笑しな事でもない。

現在、母さんと同じ年齢差の女性を恋愛対象に見る可能性は有りませんしね。

抑、俺には華琳達が居ますから。

余所見している余裕なんて有りませんよ、マジで。



「皆、各家の跡取りなんだから良いんじゃないか?

見た目にも母親似の方が血筋が判り易いしな

それに確率的に考えれば孰れは生まれるだろうし、男子は母親似、女子は父親似って言うだろ?

そういう事でなら正しく出てる(・・・)って事だからな」


「まあ、確かにね…」


「何より、可愛い我が子に変わりはないんだ

「自分に似てないから可愛くない」とか言う連中の気持ちや価値観は俺には理解出来無いからな」


「理解したくもないでしょ?」


「当然」



結局、そういう奴は子供が好きな訳じゃない。

自分の伴侶(パートナー)が好きな訳でもない。

自分が(・・・)大好きなだけだ。

だから、自分に似た(・・・・・)我が子を愛する。

要するに、超ナルシストなだけ。

伴侶の事も自分の遺伝子を残す為の道具程度にしか考えてはいないし、重要視もしていない。

自分が好きで好きで仕方が無い。

そういう連中だからな。

はっきり言って、相容れない存在だ。


──と言うか、そういう理由で不倫等を疑うとか。

そういった思考も理解し難い。

勿論、「不安を感じて…」というのは解る。

ただ、それとこれとは直結させるべきではない。

そういう可能性が高い伴侶なら話は別にしてもな。

──と言うか、そんな相手を選んだのは自分だから後から文句を言っても仕方が無いと思う。

そういう相手が嫌なら最初から選ぶなって事。


人間、死に掛けでもしない限りは変わりません。

“性根”っていうのは、そういうものです。

その人物が生きてきた分だけ、根深い訳で。

それを都合良く正せる(・・・)と思う方が間違い。


ほら、“人と形を見る”って言うでしょ?。

容姿や実績等は外側──形なんです。

だから、内側の性格や価値観──人を見極める。

そういう眼力(・・)を養いましょう。

それが幸せへの第一歩だと俺は思いますよ。


まあ、俺が素晴らしい人物って事じゃなくて。

飽く迄も、個人的な持論なだけです。

ええ、そんな大した者じゃ有りませんから。



「背負うと決めたものを背負える

それは誰にでも出来る事じゃないと思うけど?」


「規模の大小は有っても誰にでも出来る事だ

その意志と覚悟が本物で、揺らがなければな」


「そうは出来無いのが人なのよ」


「だが、その弱さこそが人の可能性でもある

だから、結局は自分次第って事になるんだけどな」


「まあ、そうよね…」



苦笑しつつ、膨らんだ自分の御腹を撫でる咲夜。

「何だかんだ言っても貴男の御父さんは優しいし、そういうのを赦せない人なんですけどね~」とか。

まだ産まれてもいない我が子を教育(洗脳)しようとは。

御父さんは許しませんよ!。

──いやいや、何か違う時空間軸が絡まったな。



「…はぁ~…何て可愛らしいのでしょうか…」


「本当ですよね~、狡い位に可愛いですよね~」


「私達も孰れは授かり、産むのだと思うと…」


「何か、こう…身震いしちゃいますよね~」


「ええ、その気持ち、私も判りますわ」



──という会話をしているのは麗羽と桃香。

擁達を見て、物凄く顔を緩めている。

そうなる気持ちも判るが。

実際の所、その大部分は女性としての想いで。

そういう意味では完全には分からない。

──とは言え、「俺が女性なら…」と想像したなら理解は出来る範疇だと思う。

うん、断言は出来ません。

だって、俺は男なんですから。


まあ、それは兎も角として。

現状、この二人は先半年以内に妊娠する様に考えた立場や実績作りをしている所です。

桃香には先の袁家戦での戦功が出来たし、麗羽には元々の家柄と複雑な状況下での頑張りが有る。

遼西郡侵攻の件は黒幕の袁硅に罪ですからね。

麗羽への評価は多少下がった程度です。

その為、袁家内部(・・)大掃除(・・・)さえ終えれば。

麗羽は袁家の正統後継者として復権可能。

その後は宅がサポートして遣ればいい。

勿論、麗羽自身にも成長し、頑張って貰うけどな。


そういう事なんで、そんなに時間は掛かりません。

後は俺との純粋な心の距離感だけです。

…え?、「何方も即OKだろ?」ですと?。

それは……ええ、まあ、そうなんですけどね。

それだけで許容すると今までの皆の頑張りとかね。

そういう事を考えると、そう簡単には出来ません。

勿論、状況や条件は違いますし、変わってますが。

そういう心情にも配慮する必要が有ります。


「愛してる」は魔法の呪文では有りません。

愛が有れば何でも許容出来る訳では有りません。

御互いに理解し合い、配慮し合い、支え合う。

そうしなければ、真っ直ぐに立つ事は無い。

比重が偏れば、次第に傾いてゆき──軈て倒れる。

一方的であれば、立つ事すらない。

そう、文字通りに“寝言は寝て言え”の様に。

それは愛などではなく、只の勝手な妄想。

そう成らない様に、気を付けましょうね。



「貴男には無縁な事だと思うわよ」



そう言ってくれるのは男として、人として光栄だ。

しかし、堕落という誘惑が常に有り、抗い難いのが我々の生きる社会の怖い所ですからね。

油断なんてしませんよ、俺は。

ちょっと足取りが軽くなって、弾みそうでも。

ついつい、鼻唄なんて遣っちゃいそうでも。

心に「喝っ!」と唱えて、自重しますとも。



「流石です、御兄様」


「そういう事を常と出来るのも貴男の凄さよね」



そう言いながら抱き付いてくる二人。

思わず、「持ち上げても何も出ないぞ?」と誉める華琳と咲夜に言いたくなる。

ただ、言ったら言ったで搾られる(・・・・)流れなので。

その位は察しますとも。

伊達に長く家族としても夫婦としても皆と一緒には歩んでいませんからね。

学習すべき所は学習しています。

ええ、この後も俺には(・・・)仕事が有りますので。

此処で蜘蛛の巣に掛かる訳には参りません。

…まあ、結局は夜には同じ様になるんですが。

それはそれです。





 関羽side──


待望の忍との第一子となる長男の擁が産まれた。

忍の子供という意味でなら誠達の事も可愛い。

ただ、やはり自分が産んだという事実は大きい。

我が子が特別に可愛いという意味ではなくて。

私自身が、忍の子供を産めた。

その達成感が、私に大きな幸福感を与えてくれる。

だから、早く二人目が欲しく為ってしまいます。

勿論、考えた時点で華琳に睨まれましたが。

仕方が無いじゃないですか。

欲しいものは欲しいのですから。



「ふむ…しかし、擁は大きいのぅ…

産まれたばかりの久の倍は有りそうじゃ」


「いや、それは流石に大袈裟だろ

ただまあ、本当に擁は大きいよな」



祭と白蓮が言う通り、五人の中では産まれた時点の身体の大きさや体重は擁が一番大きいです。

逆に祭の産んだ久は一番小さかった訳ですが。

勿論、それが健康・不健康に関わる訳ではなくて。

ただ単に御腹の中での成長の差なだけです。

それ自体に良し悪しは有りません。

忍に言わせれば「別に久も未熟児じゃないしな」と大して気にしてもいませんでしたからね。

そういう意味では、私達の考え過ぎな訳です。

私達よりも忍の方が詳しいですから。

忍が「大丈夫、何の問題も無い」と言うなら私達が心配する事は無い、という事です。


…まあ、そうは言っても不安は拭えませんが。

だからこそ、御互いに話し合い、忍に相談したりと一人で抱え込まない様に気を付けています。

妊娠中は勿論、“産後鬱”というのも有りますから御互いに支え合う事で緩和・脱却する訳です。


尤も、私達の夫は忍ですからね。

正直、その辺りの心配はしていません。

安心して寄り掛かれますから。



「でも、此方(・・)は大差無いわね」


「確かにのぅ…」


「いや、赤ん坊だからだろ?

──と言うか、気にする所か、ソレって…」


「あら、男の子なんだから重要な問題でしょう?」


「父親程非常識ではなくとも各家の嫡男じゃしな

娶った妻を満足させられるかは重要な事じゃ」


「いや、だからって赤ん坊だぞ?」


「ならば白蓮よ、今夜から十日に一度に減っても、御主は文句は無いのじゃな?」


「──っ…いや、それは………………くっ…

…その、流石に無理だけどさ…」


「そうじゃろぅ?

勿論、儂等は忍という味を知り、覚え、刻まれた身じゃからな、仕方無かろぅ…

それでも忍は人数が増えても満足させてくれる

これは妻の身としては本当に喜ばしい事じゃろ?」


「まあ、確かになぁ…」


「そう考えれば、コレも重要な事な訳じゃ」


「ぅぅ…そう言われると否定出来無いしなぁ…」



祭に言い丸められている白蓮。

ですが、それは前提条件が可笑しいですからね?。

忍が子供を沢山成す分、各家の嫡男は一夫一妻でも全く問題有りませんから。

その場合、忍や私達とは状況が異なりますので。

寧ろ、一途さや純愛観を重要視するべきです。

…それはまあ、同じ女性としては精強さ(・・・)は有る方が良いかもしれませんが。

何事も程々(・・)が無難だったりします。



──side out



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