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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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78話 変化は日常に


コミュニティというのは“類似同好者の集まり”と言い換える事が出来るだろう。

そのコミュニティの前提条件が何なのか。

それが違うというだけの話で。

コミュニティは数多存在する。


そんなコミュニティに誰しもが属している。

「いや、自分は誰とも関わってはいない」と言って否定する人も居る事だろう。

しかし、それは所詮、個人の(・・・)の言い訳で。

誰しもが何かしらのコミュニティに属している事は誰にも否定は出来無い事実。

何故なら、“人間”“人類”“地球人”という括りでならば、間違い無く、属しているのだから。


それを否定するなら、死ぬ以外の術は無い。

死ねば、どんなコミュニティからも解放される。

何故なら、死者にコミュニティは必要無い。

コミュニティとは、生者の為のものなのだから。


そんなコミュニティに属している人間なのだが。

国際的な社会問題である“人種差別”。

それは歴史的に見ても非常に根深い問題であり。

今尚、解決する糸口は見えてはいない。

寧ろ、悪化・混濁・破綻と複雑化する一方でだ。


ただ、過去と現在とでは問題の起因が異なるのだと人々は認識を改めなくてはならないのではないか。

過去の人種差別に対する対応策は既に劣化し。

現在では適した新たな対応策を構築するべき。


そう考えてみると、見えない物が見えてくる。

差別問題は知る(・・)事から始めるべきなのだから。


そんな人種差別の代表格が“肌の色”だろう。

しかし、それは社会というよりも世代的な価値観に大きく起因していると言わざるを得ない。

近代社会──特に若年層はゲームやアニメといったキャラクターに触れる事で差別意識が意外と低い。

その為、人種差別という観点では隔たりが少ないと言えるのではないだろうか。


これは一つのキャラクターという媒体を介した時、そのキャラクターを知る事から始まる為であり。

また、物語が進めばバックグラウンドも見えてきて印象が逆転するキャラクターも少なくはない。

それも、知る事により起きる事である。


対して、そういった文化が未発達・未成熟であった時代の人々は差別までは行かずとも排他的な意識が少なからず何処かに存在しているとも言える。

その最たる原因が、知ろうとはしない忌避意識。

「触らぬ神に祟り無し」ではないが。

所謂、“我、関せず”が良い事(・・・)だとする。

そういう一時代の風潮が悪影響として残っている。

そんな旧世代(・・・)が一つの社会問題だと。

考える人々は意外と少ない事だろう。

何故なら、自ら「私達が時代に不要な存在だ」と。

そう言うのも同然なのだから。

そんな声を上げれば、どうなるのか。

批難され、誹謗中傷の的にされてしまう。

それを考えて、考えない様にしている。

そういう人々が多い社会こそが、大きな問題だと。

人々が気付くまでに、先何十年が必要なのか。

それを考えるだけで億劫になってしまう。


けれど、そういう根本的な問題から取り除く以外に有効な方法というのは確立されないだろう。

“老兵はただ去るのみ”という台詞が有るが。

正しく、社会の在るべき循環を比喩していると。

そう思える人々が増える事。

それこそが健全な社会の新陳代謝ではないか。


世の差別問題とはコミュニティの問題でもある。

自分が属するコミュニティを認識する範囲が小さく狭い人である程、差別意識は強くなる。

それは自分のコミュニティが脆弱であるが故に。

他のコミュニティを攻撃し、上回ろうとする為。


自分が世界最大のコミュニティの一員である。

その自覚と意識が持てたなら。

少しは他者に対する認識も変わるのではないか。

そんな一歩すら踏み出せない程に。

世の人々は狭いコミュニティの中に居る。

その事実に気付く人々は、一体何れ程居るのか。

数字が全てではないのだが。

やはり、それ位しか判断基準が無いのも事実。

“見えないもの”を見ようとするなら。

少なからず、妥協や矛盾を孕む事に成るのだと。

それを人々は理解しなければならないだろう。



「──ぁ、あのっ、忍様…」


「どうした、麗羽(・・)?」


「その…ですね、あの…こ、この様な(・・・・)事は私…」


「嫌か?」


「いっ、いえっ、その様な事は!」


「なら問題無いだろ?」


「それは……そうなのですが…その…やはり…」



そう言って顔を俯かせる麗羽。

耳まで真っ赤にしている姿からは“原作”の袁紹を何れだけの人々が想像出来るだろうか。

はっきり言って俺や咲夜でも無理だと言える。

寧ろ、知っているから尚更にだな。


そんな照れまくる麗羽の表情が可愛い訳ですが。

別に麗羽を抱き締めたり、押し倒したりしている訳では有りませんから。

また可笑しな羞恥プレイをしている訳ではなく。

ただ、手を繋いで(・・・・・)歩いているだけです。

俗に言う“街ぶらデート”をしている訳で。


しかし、宅の麗羽さんは超の付く箱入り娘です。

月も箱入り娘ですが、御転婆でも有りますから。

それに世間知らずとは言え、政治(此方)には博識。

その才器は間違い無いですからね。


そういう意味でも麗羽の方が本当に初です。

何しろ、字が本初(・・)なだけにね。


──とまあ、そんな駄洒落は虚空の彼方に放って。

今、俺達が歩いているのは本拠である啄郡の都。

麗羽達を下し、袁家の勢力と領地を半分奪ったが、今も尚、袁硅は生きているし、勢力も存在する。

だから、本当の意味では袁家との戦は継続中。

その為、現状は小休止という状況。

それ故に最前線(・・・)から距離を取っている訳です。


それとは別に麗羽達の気分転換も兼ねての事。

新しく獲た袁家の領地は新体制に移行中。

其処に麗羽達が絡むと民の意識が分散し易い。

そうはしたくないから、麗羽達を遠ざけているし、御互いに(・・・・)切り換える為に必要な訳だ。

要するに、ちょっとした冷却期間(・・・・)って事。


袁家に対する忠誠心(・・・)は無いが。

支配される事に慣れ過ぎた隷属意識(・・・・)は根深い。

それを改善するには荒療治(・・・)が必要。

その為にも麗羽達が関わる事は避けたいからだ。


まあ、()は仕事、美羽(・・)鈴々(・・)は勉強で。

各々も少しだけ距離を置いて生活させている。

依存、という程ではないが。

自立心を刺激し、奮起させる為にね。

そんな必要は無いんだけど。

出来る事は遣って置いて損は有りませんから。


それに何より──麗羽が予想外に可愛いから。

いや、本当にね、マジで。

曹操というライバルとの因縁が無いからなのか。

宅の麗羽は見栄っ張りでは有りません。

必要ならキャラ作り(・・・・・)はしていますが。

それは味方を鼓舞したり、施政者として民に対して印象付けたり、働き掛けたりするのに必要だから。

基本的には麗羽は、桃香に御嬢様感を加えた感じ。

気品や淑やかさを持つ慈悲深い女性。

勿論、甘いという訳ではない。

…まあ、宅の基準的には甘さ(・・)が有りますが。

それは然程大きな減点箇所とは言えません。

寧ろ、そういう部分が有る方が男としては萌える。

──いや、燃えるんです。


ぶっちゃけ、麗羽は直ぐにでも懐妊させてもいい。

そう出来る様にと、下準備(・・・)は整えてある。

──とは言え、それは最悪の場合の強行策。

実際には皆の様に実績を残してからです。

麗羽自身に自信を付けさせたいしね。


本人は「私は無能です」とか思ってるけど。

少なくとも当主としての才器は確かだ。

あの詠が見限らずに支えていた訳だしね。


原作でも顔良・文醜等から慕われていたしな。

決して、性根が腐っている訳ではないし、無慈悲や極悪非道で残虐という事も無い。

ただ、そうネタキャラ設定(・・・・・・・)だっただけ。

だから現実の彼女は情に厚く、民に慕われている。

──とは言っても、それだけでは足りない。


結局の所、麗羽に限らず、白蓮達も同じ。

“政治は男の社会”という常識(巨壁)が立ち塞がる。


それを「何それ?、美味しいの?」と鼻ほじしつつぶっ壊して来たのが俺達な訳です。

だって、宅って実力主義なんですもん。

他所の常識なんて糞喰らえですからね~。

ええ、俺達の知った事じゃ有りません。


そんな訳で、麗羽には()を破って貰います。

まあ、急がせはしませんが。

可能なら、袁硅との決着には間に合わせたいです。

そうする事で麗羽の袁家(・・・・・)が価値を持つので。

本当、政治って面倒臭いですよね~。


──という愚痴を胸中で呟きながらも。

手を離す所か、控え目に握り返してくる照れまくる麗羽に癒されている今。

本当、状況が違ってたら直ぐにでも御持ち帰りして麗羽の耳許に愛を囁いているのに…残念!。

ま、楽しみは取って置きましょう。



「こうして街を歩いたりした事は?」


「…殿方と二人きりでなど有りませんわ…」


「いや、美羽達とでも構わないんだけどな」


「──っ!?、~~~~~っ…

それならそうと仰有って下さいましっ」



ちょっとした勘違いだったんだが。

つい、“鈍感主人公”的な返しをしたくなった。

うん、俺が悪い訳じゃないよね。

今のは不可抗力だよ、不可抗力。

だって、麗羽が御約束過ぎるんだもん。

そう言いたくも為っちゃいますって。


──で、勘違いに気付いた麗羽は更に真っ赤に。

恥ずかしさから怒った様な反応を見せてはいるが、決して手を振り解こうとはしていません。

そんな所も可愛いと思いませんか?。

やはり、御嬢様にツンデレは鉄板でしょう。


尚、月達もツンデレ的な所は有りますが、感情的に甘酸っぱいを疾うに通り越していましたので。

はっきり言って、肉食一途(ニクデレ)です。

それはそれで全然有りなんですけどね。


まあ、要するに、段階的な関係を踏んでる相手って俺の場合は意外と少ないんですよ。

そうしようとはしてるんですけどね。

何かこう…時空超越(キンクリ)するんです。

ええ、摩訶不思議なAVGみたいですよね~。



「……私達の立場上、こういった事は気軽に出来る訳が有りませんでしたので…初めてです」


「如何に名家と言っても肥大化し過ぎたら、単なる鈍重な狙い易い獲物でしかないものな」


「…そういう事を女性に向かって言います?」


「そういう受け取り方をするって事の方が、俺には気にしてる様に思えるんだけどな」


「それは………そうなのかもしれませんが…」


「まあ、麗羽には関係無い話だろ

俺の評価としては美味しそう(・・・・・)だからな」


「────なァッ!?」



油断している麗羽の耳許で囁いてやれば、現状など綺麗に忘れて声を上擦らせる。

そんな麗羽の声に周囲の目が向けられ──気付く。

俺が態と麗羽に声を上げさせる様にした事を。

しかし、この状況では怒鳴ったりも出来無い事を。

だから、麗羽は「意地悪ですわ!」と。

拗ねる様に睨む事しか出来無くて。

──ああいや、前言撤回。

何だかんだで麗羽も負けず嫌い。

繋いでいる手を引き寄せ、抱える様に身を寄せる。

麗羽の豊かな実りが、しっかりと押し付けられて。

俺の腕を飲み込む様に歪む。

きっと、卑猥って、元々は“秘歪”だったんだね。

うん、そうだと思うんだ。



「貴男も少しは恥ずかしさを味わって下さいまし」


「いや、そう言われてもなぁ…」


「………それはまあ、妻が沢山居らっしゃいますし慣れてはいるのかもしれませんが…」


「そうじゃなくて、俺は嬉しいからな」


「……嬉しい、ですか?」


「麗羽を俺の女、俺の妻だって見せ付けられるんだ

だから、男として鼻が高いんだよ」


「──っ!?、あ、貴男はまた、その様なっ…」


「麗羽は俺と一緒に歩くのは恥ずかしいのか?」


「…………狡いですわ…」


「それは嫌じゃないって事で良いんだな?」


「…知りませんっ」



一睨みした後、そう言って外方を向く麗羽。

しかし、離れる事は無く。

腕を介し麗羽の高鳴る鼓動を聞きながら。

俺の口元は自然と緩んでいくのだった。





 袁紹side──


徐子瓏──()様に投降して早一週間。

私達の日常や生活はというと、まるで別世界に迷い込んだかの様に変わりました。

──とは言っても、それは悪い意味ではなくて。

とても素晴らしく、充実しているものです。

最初は責任を感じていた詠でしたが、忍様の妻で、軍師でも有る皆様に容赦無く叩き潰されまして。

「もう笑うしか無いって位に完敗だったわ」と。

吹っ切れた様に笑っていました。

その笑顔を見て、私は安心しました。

本当に素晴らしい殿方に巡り逢えたのだと。


美羽達も歳の近い娘が増えて楽しそうですし。

忍様には感謝してもし切れませんわ。


そんな忍様は──ええ、少々意地悪な方です。

勿論、本当に嫌な事をしたりはしません。

それは私にとって躊躇したり、恥ずかしかったり。

そういった感じの事を狙って来られます。

…結果的に、忍様との仲が深まるばかりで。

だからこそ、私も嬉し恥ずかしで困っています。

決して悪い事には繋がりませんが。


……そ、それは兎も角として!。

私は気になっていた事を御訊ねしました。



「あの…どうして私を妻に?

自分で言うのも何ですが…私は無能です…

袁家の血筋を、というなら美羽や他の娘も…」


「麗羽、俺は御前だから妻に選んだんだ」


「────っ!!」


「確かに血筋も必要な条件なのは否めない

しかし、それだけなら俺は袁家を潰している

正直、俺は袁家自体には価値を見出だしてはいない

俺が袁家を残すのは、麗羽、御前が居るからだ

御前は自分自身の無力さ、政治の複雑さと困難さを知っているし、その上で向き合い続けている

その姿勢こそが、俺には価値有るものなんだ

だから自分を卑下するな、御前は良い女だ」



──と忍様は仰有られて。

これで嬉しく思わない女は中々居ませんわ。

勿論、意中の相手や伴侶が居るなら別ですが。

抑、そういった女性に忍様が手を出される事自体、私には考えられませんから。

つまり、そういう事です。


そんな訳で、私は忍様と一緒に過ごしています。

まだ(・・)純潔は守ってはいますが。

夜を共にしたり、口付けをしたり、一緒に御風呂に入って身体を洗い合ったり…。

まさか、忍様に素手で全身を洗われるだなんて…。

……~~~っ……い、いけませんわ。

思い出したら身体が火照ってしまいます。

………ああ、ですが……忍様……逞しくて………。

私も、そういう(・・・・)事の知識は有ります。

ええ、飽く迄も知識に過ぎませんでしたが。

一緒に入った白蓮様や華琳様が実際に(・・・)遣って。

どうするのかを指南して頂きました。

…その…忍様に喜んで頂けたのが嬉しくて。

つい、四度(・・)も続けてしまいましたが。


…殿方は疲れると聞いていたのですけど…。

「御兄様は御兄様、他と比べては駄目よ」と。

華琳様の一言で納得致しましたわ。

そして皆様が順調に子供を授かっている事にも。

私も早く忍様との子供達を腕に抱きたいです。



──side out



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