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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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73話 比べる事から


国際社会に置ける課題の一つ、“いじめ”問題。

当然、肯定する理由は無く、排除されるべき事で。

人道的・道徳的に見ても社会性を欠いている訳で。

その加害者には相応の罰則が課されるべきで。

それが若年齢である内に程、施行されるべきで。

正しく学ばせ、更正(・・)させる事に繋がる。


成人を迎えた者は社会犯罪者と定めれば良い事。

セクハラ・パワハラ・モラハラ等と違わない以上、法律で縛る事は出来無い訳ではないのだから。


ただ、これらには大きな問題点も有る。

それは、何処から、何を基準に線引きをするのか。

それが実に難しく、曖昧で、あやふやな事。

暴力や恐喝・脅迫の様な事は判断・認定し易い。

しかし、“無視”の様な行為は判断が難しい。

何故なら、孤立が周囲の意図に因る事なのか。

或いは、本人の意思に因る事なのか。

それは客観的には見極め難い事だろう。


勿論、当事者達に訊ね、確認する事が一番の方法。

けれど、それを“過干渉”と思う場合も有る訳で。

「放って置いて欲しい」と思う者からすると。

その親切心や正義感・義務責任は押し付け(・・・・)で。

それ自体を不快と感じる事も少なくはない。


その為、いじめ問題は学校の責任だけではなく。

家庭は勿論、地域や国の問題として考えるべき事。

何故なら、いじめという行為は集団性に伴うもの。

一対一なら、それは喧嘩や不仲というだけ。

いじめは必ず複数が絡むか、社会的立場を伴う。

つまり、“マウンティング”の一種な訳だから。

その根幹を絶たない限り、幾らでも起こり得る。


そんないじめ問題だが。

その解決策は中々に難しい。

──というより、短期的・効果的な方法は無い。

何十年、百年以上の超長期的に。

しかも、それを最低でも国単位の規模で。

継続して行い、根底から意識改革をしない限りは。

無くなる事は、先ず有り得ないだろう。


それは人間が社会性を構築する上で得た方法が故。

()の優劣で勝てないなら、集団(・・)で覆す。


いじめ問題は、とても根深い。

どんなに話し合おうが現実が伴わなくては無意味。

せめて、年齢や立場に関係無く罰せられる様に。

先ずは法律を整備する所から始めるべきなのだが。

これもまた、冤罪や新たな犯罪を生む可能性を孕む非常にデリケートな課題だと言わざるを得ない。


迅速さを求められるが。

それには長期的な継続性と評価・対応力が必要で。

社会性にも寛容に、慎重に理解を必要とする。


一つの失敗を取り上げ、集団で叩く。

そんな、いじめと同じ真似をする人々の意識こそ。

問題の根幹に有る、根深い過った思考なのだと。

一人一人が気付く事。

其処から、始めるべきなのかもしれない。



「──忍っ!、誠が立った、立ったぞっ!」


「はいはい、ちゃんと見てるよ、そう興奮しない」


「何でそんなに落ち着いてられるんだよっ?!

誠が立ったんだぞっ?!」


「白蓮、御前が俺と付き合う事になった後、周囲に色々言われた時、どんな気持ちだった?」


「放っとけ!、余計な御世話だっ!」


「だろ?、誠も同じ気持ちじゃないか?」


「そんな事────っ……………………」



歓喜から興奮し、感情が昂っていた白蓮。

それを自身の体験を思い出させて、重ねさせる。

厳密に言えば、同じな訳ではない。

だが、本人よりま周りが勝手に盛り上がる。

その状況は、似ている訳で。

当事者の気持ちを察する上では。

一つの判り易い比較材料となるんですよ。


──と、白蓮を落ち着かせた所で。

俺はフラフラしながらも歩いてきた誠を抱き止め、抱えあげると笑顔で誉める。



「上手に歩けたな、誠、頑張ったな」


「きゃぁ~い」



抱っこして誉める。

単純な事ですが、これで子供には十分なんですよ。

──と言うか、大人に対しても同じです。

きちんとした評価、感謝・労い・謝罪、愛情。

こういった事を言葉にして伝える。

それだけで御互いに気持ちが良いものです。


“誉めて伸ばす”という考え方も有りますが。

その場合、考えさせる(・・・・・)事が重要。

つまりは、自己解決が前提条件に有る訳です。

だから、それが出来無い場合の想定も大事で。

相手を見ながら、逐次修正・改善する事も必須。


教育というのはマニュアル通りには行きません。

知識を身に付けさせる事と、教育は別物です。

その辺りを、教え導く側が理解しているか否か。

それが大きな差であり、決定的な違いですが。

まあ、其処まで考えないのが人間なんですよね。


本当に、どうして人間って、こんなに愚かなのか。

ちょっと考えれば解る事を考えずに、他人の評価や言動には疑いもせずに乗っかって。

それが異常だとは気付かないんですから。

「人類は知恵を得て、進化した」?。

現実の人類を見てから、言いなさいって。

そんなのは人間故の身勝手な傲慢な自己評価。

現実的には人間の社会性は動植物以下です。

他の種を()で滅ぼす。

そんな真似をするのは人間だけなんですからね。



「ぁぅ~?、とぉ~と?」


「んー、何でもないぞ~」



ちょっとばかり出た「人間、死に晒せ」思想による剣呑な空気を察した様で誠が心配そうな顔をした。

こういう所は白蓮(母親)似かもな。


そう思いながら抱き上げ、誤魔化す様に笑う。

まあ、子供は敏感だから、切り替えるが正しい。

下手に誤魔化すと、それが影響を与えますからね。

小さい頃の嫌な経験は長く尾を引きますので。


尚、息子達は皆、俺の事は「とと」と呼びます。

流石に「ちち」は微妙です。

ええ、“父”ではなく“乳”と勘違いされたら…。

将来、息子達は言われ続ける訳ですからね。

それが大人の勝手な勘違いだったとしても。

まるで子供の方が悪い様な言い方をする。

ええ、大人って狡賢いんですよ、本当に。


それはそうとして。

まだまだ舌っ足らずな息子達に呼ばれると…。

ええ、父性・母性が確変からのフィーバー突入。

萌えに燃えてエモりまくりです。



「むぅ…這い這いは久が最初じゃったのにのぅ…」


「這い這いと歩行じゃ身体の使い方が違うからな

今は当たり前の様に立って歩いてるけどさ、それを出来無い者に一から説明して教えられるか?」


「それは………無理じゃろうな」



膝に久を乗せたまま腕組みをして考える祭。

それにより強調された大魔境に視線が行った事は、男としては仕方が有りません。

それを如何に好き放題に堪能出来るのだとしても。

それはそれ、これはこれなんですから。


──という思考は置いといて。

這い這いから立ち歩きをする過程も人各々。

這い這いが上手いから、速度が有るからといって、立ち歩きが出来る様に成る訳では有りません。

這い這いが全身運動なら、立ち歩きは平衡感覚。

必要となる要素が違う以上、イコールで繋がる事は難しいのが現実だったりします。

筋力や身体の成長という意味では違いが出ますが、そのままに反映される訳では有りませんからね。



「まあ、這い這いの時にも言ったけど、別に早さが優劣を決めるって訳じゃないんだ

それを親や大人の勝手な尺度で決め付けて子供達を評価する事の方が問題だからな

出来る様になったら、誉めてやる

出来無いからと言って、不安に思う事は無い

一人、一人、各々の歩む早さは違うものだ」


「…そうじゃな、済まなかったのぅ、久」


「……ぅ~?」


「そんな風に謝られても解らないってさ」


「やれやれ…それもそうじゃったな」



久を見下ろしながら謝る祭だったが、当事者の久は状況や意図が理解出来る訳ではない。

だから、祭の雰囲気に首を傾げる。

まるで、「母様、何が?」と言う様に。

それを見て、俺に言われて、祭は苦笑。

自分が思っていたよりも親馬鹿だと自覚。

「気を付けねばのぅ…」と自省する。


子煩悩なのは良いが、親馬鹿が度を越すと不味い。

それは過保護な事にも言えるのだが。

過度な子供への期待は子供を潰す可能性が高く。

子供自身を見ず、親は自分の理想を見ているだけ。

そうなってしまっている事は起こり得る。

そして、それは親自身、自分では気付き難い。


子供の為の筈が、何時の間にか外れたり、逆に。

或いは、親のエゴに為ってしまっている。

見えない事であるが故の、怖い恐い落とし穴。


そんな状況を、祭を見て白蓮も自省する。

喜ぶ事は悪くはない。

ただ、それが自分の優越感や自尊心に直結するなら客観的に自分を見詰め直さなくては危険。

そうなる兆候が、其処には有るのだから。


祭に抱き上げられた久は嬉しそうに笑い。

俺から白蓮に抱き渡された誠も甘える様に喜ぶ。



「ですが、忍様、やはり少しは親の影響というのは有るものなのでしょうか?」


「んー…全く無いとは言い難いのが事実だな

特に肉体的な強さや靭やかさは遺伝し易いしな

そういう意味だと誠が一番に立ち歩きが出来たのも代々騎馬戦術に優れている公孫家の血筋だろうし、這い這いが早かった久と維は武門である黄家の血筋だからとも言えなくもないからな

だから、武門の家や血筋同士で婚姻関係を結ぶのは子孫に色濃く血を受け継がせるという意味でなら、強ち間違った方法でもない」


「成る程…そう言われてみると頷けますね」



そう言って紫苑が腕の中で、頭を揺らしている維を見詰めながら納得する様に頷く。

御眠な維は既に落ちるまでのカウントダウンに。

その様子も可愛らしいな、うん。


尚、這い這いをしだした順番は久・維・誠・義。

個人の武で言えば、一番膂力が有るのは梨芹だが、梨芹の血筋は代々続く武門という訳ではない。

そういう意味では同じ父親を持つ息子達の能力差は母親側の能力や血筋の影響が強く出易くなる。

…まあ、皆常人離れしてるんですけどね。



「…それでは、忍、智謀という意味では遺伝し難いという事ですか?」


「其方も全く無いとは言わないよ

ただ、肉体的な遺伝に比べると出難いのも確かだな

しかし、其方は教育や修練、環境次第かな

ほら、璃々が判り易い例だ

璃々の適性は祭や紫苑と比べると文官寄りになる

勿論、それでも十分に優れてはいるんだけどな

宅の判断基準で見ると璃々は文官──軍師枠だ

白蓮は逆に軍将側に居るだろ?

だから、必ずしも同じな訳でもない

色んな要因・素養が重なり、混ざり合った結果だ

結局、「こうだから!」という事は無い訳だ」


「つまり、この子達の適性も判らない、と?」


「ああ、育ってみないとな」



そう言うと梨芹は腕の中で眠っている義を見詰め、少しばかり不安そうな表情をする。

まあ、俺の妻となり、華家を興した訳だからな。

その跡取り息子の将来を心配するのは判る。

ただ、それは今、考えても仕方が無い事。

十歳になる位で、「向いてないな…」と思えたら、その時に考え直せばいいだけの話。

寧ろ、「貴男は跡取りなのだから…」的な事ばかり子供の頃から言わない様には気を付けないとな。

──とは言え、全く言わないのも問題。

自分の立場や、背負うものが如何なるものなのか。

それを理解させる為には必要な事でもある。

まあ、要するに匙加減(・・・)が大事だって事。



「考え過ぎも、考えなさ過ぎも駄目だ

だからまあ、難しいんだけどな

何も一人で背負い込む事じゃないんだ

俺は勿論、他家とは言え、同じ俺の妻なんだ

今みたいに御互いに相談し合い、支え合えばいい

時には、実子にだからこそ教え辛い事も出てくる

そういう時に御互いの存在は大きいだろうしな

気負い過ぎず、一人一人と向き合っていく

当たり前の事だけど、結局はそれが一番大事だ」


「…ふふっ、そうでしたね」


「子供等が寝ておれば始める所なんじゃがのぅ…」


「楽しみは夜に取って置きましょう」


「……何だかんだで、私も慣れてるんだよなぁ…」



──とまあ、そんな感じで、話が纏まる訳で。

ええ、俺の了承や返事や意見や意思は無視です。

拒む理由も断る予定も有りませんけどね!。

ただね?、誠と久は起きてますから。

その辺りは少しは気にしましょうよ。

まだ理解が出来無いにしてもね。




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[良い点] とと様呼びはめっっっっっっっっっっっっちゃ効く。 幼い子供(意味深ではない)は大好き(´⌒ω⌒`)ニチャア [気になる点] いじめ…うっ、頭が……orz [一言] ク○ラ! クラ○が立った…
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