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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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    予めを


今生の身となり、その人生を通して思う事が有る。

それは──「世の中、“フラグ”って有るよね」と言いたくなる様な連鎖的な出来事である。


うん、賊徒十連発(・・・)って何?。

時代錯誤なアダルト作品のタイトルじゃないよ?。

いや、別に巫山戯てなんかないからね?。

本当に、有った事を言ってるだけですから。


それはまあ?、少しは掃除が出来た訳ですから?。

後々の作業が減ったと思えば良いんですけど。

でもほら、それは結果論な訳じゃないですか?。

そんな事が続いてると嫌な気分に為ります。

ええ、俺達は神ではなく、普通の人間なんです。

気分次第でパフォーマンスは変わります。


そういう意味ではプロの方々は凄いですよね。

特に、スポーツ選手のメンタリティーを考えれば、そのコントロール技術には尊敬しか有りません。

勿論、出来ている方々(・・・・・・・)には、ですけど。

何ちゃって(・・・・・)プロ選手の事では有りませんので。


──とは言え、一般人でもメンタル・コントロールが上手な人は少なからず居る訳で。

特段、注目されたりしないというだけで。

そういう人達は意外と身近に居たりします。

“マイペースな人”に心当たりが有れば尚更です。

そういった人から学ぶ事は少なからず有る筈です。

自分に合う・合わないは別としてもね。

知る事で解る事、見える可能性が有ります。

大切なのは、そういった意識を持つ事。

“学習”とは、何も勉学に限らない事ですからの。



「まあ、学ばない奴は死ぬまで変わらないけどな」


「そうですね、御兄様、愚かな限りです」



華琳と一緒に積み上げられた竹簡の山を捌きながら愚痴る様に同じ様な内容の案件に目を通す。

うん、今、俺達が居るのは天幕なんですけどね。

行軍中の、野営の陣中の、天幕の中なんですよ?。

そ・れ・な・の・にっ!。

何故っ、書き仕事を遣らなくてはならないっ?!。

「お・も・て・な・し」の精神は何処に行った?!。

──え?、「其処は中国だから最初から無い」?。

いやいや、中国だろうが、人の心は同じっ!。

────筈っ!。

だから、“御持て成し”の概念は有る筈だっ!。


──って、世界()の中心で不満を叫ぶ。

口に出すと、事態が動き出してしまう可能性が有る以上は自分の立場上、弁え、自重します。

“口は災いの元”ですからね。


まあ、それは兎も角として。

この手の仕事は領地が増えれば付いてきます。

ええ、それはもう応募者全員プレゼントと同じ様に漏れ無く、手元に届きます。


…あ、そう言えば、小さい疑問が一つ。

最近の事情は知りませんが。

昔の雑誌の応募者全員プレゼントって有料でした。

ええ、判り易く言えば、“通販限定商品”の先駆けだったというのが実態です。

つまり、全然プレゼント(・・・・・)じゃ有りません。

だって、有料なんですからね。

アレって詐欺に為らないんですかね?。

まあ、殆んどが時効なんでしょうけど。


当時は「限定品!、手に入れないと!」と。

コレクター魂を刺激され、気にしてませんけど。

時が経ち、ふと、思い出して、考えてみると。

気に為ったりする事の一つだったりします。

別に雑誌社に悪気は無いんでしょうけどね。

“プレゼント”って、見出しは微妙です。

“雑誌購入者限定商品の御案内”が正しいかと。

まあ、そんな事を気にしない位、昔は緩かったと。

ちょっとした懐かしさを感じた訳です。

ええ、本当に深い意味は有りませんから。


そんな事より、目の前の竹簡の山です。

出来れば、桂花を参戦させたいんですけどね。

そうもいかないのが悩ましき現実です。

桂花の能力は途上とは言え、確かなものです。

しかし、桂花は宅の政務に携わってはいません。

つまり、他の(・・)政務・施策の事を知らない訳で。

その状態で連動(・・)させる処理は不可能。

勿論、教えれば出来るでしょうけど。

その時間が勿体無い訳です。

それよりも俺達が遣った方が早い訳で。

こういった状況下では迅速さが重要なんですよね。

だから、こうして俺達が頑張っているんです。


普段なら、時間的に余裕が有るなら、別ですが。

その場合には、桂花育成計画が発動致します。

「サービス!、サービスッ!」の精神で、桂花には沢山経験を積んで頂きますとも。



「御兄様、此方等の此処なのですが…」


「んー?……ああ、成る程、遣ってる(・・・・)

咲夜に言って──いや、桂花に任せてみるか」


「あの娘も御兄様の御役に立てて喜びますね」



華琳に見せられた帳簿と竹簡の一部。

それを見て直ぐに不正が行われていると確信。

咲夜に処理して貰おうと考え──方向転換。

これを利用し、桂花の力を見る事に。


桂花の腕試し(・・・)ではないんだけど。

単純に俺の御手付き(・・・・)で贔屓されてる、とか。

そんな風に見られない様にする為にです。

面倒臭い話ですが、男社会な分、必要な配慮です。

これを怠ると桂花は勿論、俺達にも飛び火してくる可能性を否定出来ませんからね。

風向き(・・・)には常に注意を払っている訳です。



「おーい、入るぞー…って、ぅげっ…嫌な状況だな

──って、一人だけ逃がすかっ!」


「──チッ…隙を見せなんだか…」


「見せたら、その分、私の仕事量が増えるからな」



そう言いながら、天幕に入り掛けた瞬間、此方等の状況を察し、即座に気配を殺して逃亡し掛けた祭を見事に捕まえて引き摺り込んだ白蓮。

昔の事を思うと、逞しく成長しなさった事よのぉ。


尚、白蓮の言葉通りに、祭を逃がしてたら仕事量は二倍に為っていた事は言うまでも有りません。

宅は日常的に連帯責任・自己責任に厳しいので。

そして、それを狙っているから俺も華琳も静か。

何方等に転んでも俺達の仕事量は減りますので。


そんなこんなで白蓮と祭が着席し積まれている山の一部を切り崩しに掛かってくれます。

あーだこーだと言ってるより、遣る方が確実。

文句を言っても逃げられないのなら、その無意味な時間を処理に当てた方が建設的ですからね。

ええ、よく教育されているでしょう?。

俺…本当に頑張ったんだから。



「何かしら動きが有ったか?」


「いや、動く気配すら感じない位に何にも無いな」


「逆に動かぬから不気味な位じゃな」



愚痴る様に言う白蓮と祭。

だが、その気持ちも判らない訳ではない。

少しばかり鬱陶しい出来事は遭ったが。

本隊との合流までは順調そのもの。

これと言った問題も起きてはいない。


此処、遼西郡は五つの県から為っているんだけど。

東西でも分け易い配置で。

西側には劉備達の居た海陽県、その北に臨渝県。

東側は南から陽楽県・肥如県・令支県と並ぶ。


桂花の提案した南北とは南側の海陽・陽楽の二つ、北側の臨渝・令支の二つ。

これらは確定であり、後は肥如を獲るか否か。

その辺りは状況次第、というのが本音で。

遼西軍と袁紹軍、何方が獲ろうが大差は無い。

個人的な事を言えば、袁紹が勝つ方が有難いが。

だからと言って袁紹が有利になる様には動かない。

そうまでする利が無いからね。


所が、此処に来て両軍睨み合い状態に突入。

陣取り的には肥如と令支を三分の二ずつ獲っている袁紹の方が優勢ではあるんだけど。

実は臨渝は地形に籠城向きだったりします。

二県を獲り切れていない事が袁紹には足枷で。

今、板挟み状態になっています。

勿論、兵数的にも袁紹が優勢なんですが。

如何せん、両面を捌きつつ、後方(・・)にも注意。

それが出来るだけの将師の数が居ません。

居たとしても、今の袁紹には全投入は不可能。

袁術の身の安全(・・・・・・・)の為に、割かないといけない。


だから膠着してしまうと打開し難い。

まあ、袁硅の意図(・・)も絡んでるしな。

今の袁紹は柵で動けなくなっている訳だ。

うん、柵って怖いよね~。


──とまあ、他所様の事は置いといて。

宅の状況なんですが。

既に陽楽を抑え、海陽も半落ち(・・・)状態。

もう、後は時間の問題。

だから、こうして書き仕事に精を出しています。



「なあ、遼東の方は何か動きが有ったのか?」


「彼方も特に動きは無いらしいな

翠達の悲鳴だけが(・・・・・・・・)上がってる様だ」


「紫苑め、はしゃぎおってからに…」


「そう言う割りには羨ましそうよ、祭?」


「むっ……まあ、否定は出来ぬな…

此方等は此方等で面白さを期待していたが…

こうまで当たり(・・・)が渋くなるとは…」


「まあ、苛立たず静かに待つのが肝要(・・)

動きが無い時に下手に動くと悪影響が出易い

それが想定した計算の範疇(・・・・・)なら良いが…」


「外れると面倒、だもんなぁ…」



そう言って溜め息を吐く白蓮に頷いて同意する。

普段は軍部寄りの仕事が多い祭でも、元々は璃々を護り、支えていた身だからな。

その意味を理解出来無い訳が無い。

静かに苦笑しながら頷いているからな。


ただ、笑い事ではなく、面倒な話で。

予想通りに物事を運ぶには“余計な事をしない”。

そういう選択も時には必要になる訳ですが。

目の前に可能性(チャンス)が見えたら。

ついつい、欲を出してしまうのが人間の性です。


勿論、それが結果に繋がれば良いんですが。

その結果が予想外(・・・)だったなら。

少なくとも、それまでの予想は全て無意味な物に。

今一度、一から組み立て直さなくて為りません。

そのまま行ってしまっては予想という幻想の地図を千鳥足で歩いている様なものですからね。

もう何が起きるかも判らなくなっています。


そんな状態に自らを置かない為にも。

自重というのは大事な事だと言えます。



「──で?、本音は何方なんだよ?

肥如を獲りに行くのか?」


「袁紹が勝つなら獲らないな

それで調子に乗って(・・・・・・)攻めてくれば喰らう(・・・)

獲り切れずに退くなら、手土産(・・・)に譲る

要するに基本的には袁紹次第って事だな」


「袁紹かぁ…まあ、話を聞く限りは良い奴だよな

…まあ、ちょっと…単純な印象は拭えないけど…」


「見方によれば、それだけ人が好い訳だしのぅ」


「それを利用されなければ、ね

結局、袁紹は袁硅の掌の上で踊っているだけよ

それを打開出来無くても理解出来ていれば、ね…」


「いやいや、それは結構な無茶振りだろ?

──と言うか、私は出来る気がしないからな?」


「貴女だけでなく、私達には重要ではないわよ

勿論、出来て損は無いけれど」


「ふむ…して、その心意は?」


「御兄様を信じてさえ居れば良いのよ」


「「ああ、成る程、確かに」」


「いやいやいや!、それは違うからね?

少しは俺の事も疑おうね?、大事な事だよ?」


「御兄様がそう仰有るのでしたら…

今一度、御兄様の愛を確かめさせて下さい」


「そうだな、じっくりと確かめたいな」


「うむ、そうじゃのぅ…ああ、心配は要らぬ

人払い(・・・)はしてあるからのぅ

暫くは、不粋な邪魔は入りはせぬ」


「………………」



そう言いながら俺を取り囲む三人。

「いや、君達、仕事は?」と訊くのも無駄。

明らかに「全て終わっていますが?」と。

綺麗に片付けられた竹簡達が物語っています。

でもね?、まだ俺が終わっていませんよ?。

…え?、「そのまま御兄様は続けて下さい」?。

──って、何故簡易机の下に潜ってるのかな?。

………ああ、そういう方向から始めるんですね。


どうやら、見事に嵌められた様です。

──と言うか、通りで天幕周辺に人が来ない筈だ。

必要は無いし、遣る事も有るから人が来ない事自体特に可笑しくも無かったんですが。

よくよく考えると、それは華琳が仕切ってます。

白蓮も祭も立場上は一応、軍将ですからね。

軍師の方が、そういう指示の権限は強い訳で。

二人が別行動で仕事を片付けてから来たのも…か。


その才能の無駄遣いは止めませんか?。

いやまあ、何だかんだで俺も遣り返しますけど。

何だかんだで夫婦円満ですけど。

ちょっとは考えませんかね?。





 袁紹side──


私は名門、袁家に生まれ育った身です。

それも、かなり地力の有る家系・血筋の一人娘。

跡取りとなる婿養子を取る事は大前提で。

その相手選びに、私の意志は介在する事は無く。

ただ、言われるがままに従うだけ。

「それで良い」のだと。

「女は政治に関わるな」と。

そう言われ続けて育ってきました。


それが可笑しな(・・・・)話だと疑った事は無く。

私自身、嫁ぎ先が決まれば夫となる殿方に尽くし、御家の為に努める。

それが当然だと思っていました。


しかし、成長し、少しばかり自分自身の周囲の事が見える様になり、気付く事が有ります。

その教えは間違いではないのでしょう。

けれど、必ずしも正しいという訳ではない。


そう、世の中に示すかの様に。

自らが中心に立ちながら、妻達を活躍させる。

そんな、常識を覆す殿方が現れたのです。

それも一人二人ではなく、十人を越える妻を娶り。

けれど、妻同士が不仲という訳でもなく。

寧ろ、夫を中心として強固に纏まっている、と。

俄には信じられない様な話を聞く様になり。

その殿方──徐子瓏殿に強い興味を懐きます。


叶うならば、そういう殿方に嫁ぎたい、と。

そう思う様になるまでに時間は掛かりません。


ですが、それは飽く迄も私の個人的な願望。

叶う事の無い、一人の女の夢想です。

世の中は、そんなに優しくは有りませんから。


私に縁談の話が届き──それが転機と為ります。

私自身の縁談は昔から決まっていた様なものです。

ですから、それに対する他意は有りません。

しかし、私と同時に再従妹(・・・)である美羽(・・)にも。

縁談が組まれました。

珍しくは有りませんが、それは急ぐ場合の話です。

少なくとも、あの娘の家や立場では不要です。


それでは、一体何の為の(・・・・)縁談なのか。

その縁談の()は何なのか。

考えなければ解りませんが、考えれば解ります。

そう、私達の縁談は袁硅が自身の袁家内での立場や発言力を更に高め、確固たるものとする為。

私自身、政略結婚自体の必要性は理解出来ます。

非力で、非才な身で有ればこそ、尚更にです。


ですが、今回の縁談は享受する事が出来ず、拒否。

色々と(・・・)有りましたが、破談しました。


これで一安心──とは為らないのが、世の中です。

私は私達の未来の為に、袁家内での主導権争いへと参戦する事を決め、動きました。

それが今回の遼西郡への侵攻です。


不安も有りましたが短期決戦の為に三万という兵を動員した訳ですから、勢いが付けば圧倒的。

──その筈でしたが、此処に来て膠着状態に。

しかも、退くに退けない状況。


少なくとも此方等に援軍の可能性は有りません。

ですから、どうにかしなければ為らない訳ですが。

……その手段が見当たりません。


──と、外側騒がしくなり、駆け込んできた兵士の口から思い掛けない報せが。



「てっ、敵襲っ!、旗は──そっ、“孫”っ!

炎緋にっ、黒の孫一字ですっ!」




──side out



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