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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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64話 親が馬鹿な方が


「子供は親を選べない」と。

そう言う人が世の中には少なからず存在する。


では、親は子供を選べるのか?。

それは当然ながら否であり、まだ産まれる以前から親の思い描く様な子供である訳が無い。


つまり、それは「御互い様です」という事。


子供を自分の理想通りに育て上げられるのなら。

世の中は、もっと素晴らしい社会、世界だろう。

しかし、現実には、そうは成ってはいない。


では、それは子供達の責任なのか?。

当然だが、全く無いとは言い切れない。

子供達が社会に対し、国に対し、世界に対し。

少しでも「これは可笑しい」と感じたなら。

行動を起こし、変える為に動かなくては。

世の中が変わる事は、先ず無いのだから。


ただ、それ以上に親達の責任は重く、大きい。

自分達の考え方ばかりを押し付ける遣り方。

或いは、それを当たり前(・・・・)だとする認識。

それ自体が既に大きな過ちだと言えるのだから。


“教育”という字は、教え、育てると書く訳だが。

では、大人が一方的に知識や方法を押し付ける事が子供達に“教える”事なのだろうか?。

否、そうではない。

それでは強要しているのも同じ。

洗脳、或いはコンピューターに同一のプログラムをインストールしているのと変わらない。

人は機械と同じなのだろうか?。

人が人を育むというのは、そういう事なのか?。

それなら、教育者は人間ではない方が良い。

全く同じプログラムを持つ教師を使い、全ての者に一切の差別や気遣いもしない真に平等公平な存在。

虐めや暴力、性的な問題等々。

そういった不祥事は起こさないのだから。


ただ、それなら学校も必要無くなるだろう。

皆、自宅で学び、育てばいいのだから。


では、そうした子供達が築く社会──世界とは?。

果たして、其処に“人”は要るのだろうか?。


子供は親を見て育つ。

子供は大人を見て育つ。

つまり、子供にとっては最も身近な者が御手本。

子供の歪み(・・)は親の責任であり。

広義には社会性の在り方の問題であるという事。


教育というのは一方通行では成り立たない。

“御互いに教え、教わり、己を育み合う”事。

それが、本来の教育の在るべき姿ではないのか。

親は子供と共に親として成長し。

子供は親と共に人として成長し。

人は繋がり、関わり、影響し合って成る。

大人に成っても、それは終わる事ではなく。

生きている限り延々と続き、続けなくては為らない人間社会に根幹的な必要な事ではないだろうか。


そして、その全てを称する言葉こそが。

“教育”ではないのだろうか。



「──見ろ、人が、世界が、この掌に収まる様だ」


「いやいや、何似合わない悪役面してんだよ」



「全てが我が手にっ!」的な感じで()っていたら、白蓮からツッコミを入れられました。

まあ、自分でも柄じゃないとは思いますよ?。

でも、こういうノリって有ると思いません?。

前世でなら、こんな馬鹿遣ってても可笑しくはない年齢で、大体が学生の身分な訳ですから。

その前世云々が伝わらない事な訳ですけどね。


まあ、そんな事は正直どうでもいいんです。

俺の三文芝居でも、喜んでくれる無垢な息子達(観客)

それだけで俺は戦える!、勝てる!、貫ける!。



「だが見ろ、白蓮、息子達にはウケている!」


「いや、だから止めろって

息子達だから変な方向に走ったら困るだろうが…」


「チッ、チッ、チッ…甘い、甘いな、公孫伯珪

この両腕の中で戯れ付く仔犬の様に甘えている時の御前の姿よりも甘いなっ!」


「ちょっ!?、ななナな何言ってんだよっ!!

誠達の前で変な事言うなっ!」


「御前にとっては俺と過ごす時間は変なのか?」


「そんな訳無いだろっ!!」



売り言葉に買い言葉、なんだけど。

うん、だからこそ、そういう風に即答されるとね。

言われた方としても、嬉しい以上に照れ臭い。



「…………っ!?、~~~~~~~~~~~~っっ」



そして、言った方は言われた方以上で。

白蓮が超瞬間沸騰&完熟しました。

うむ、素晴らしい、見事じゃ、褒美を取らせる。

──と、押し倒したい所なんですけどね。

今、俺の腕の中には息子達が居るんですよね~。

残念っ、無念っ、今夜は誠心誠意丹念にっ!。


さて、それは兎も角として。

現在、俺達が居るのは幽州最大の太行山脈。

その最高峰である五台山の山頂なんです。

太行山脈は幽州の西部と中部の境界に位置します。

ええ、要するに天然の壁な訳ですよ。

その為、此処は昔から「攻略し我が物にしたい」と思って挑む者が後を断たない場所なんですが。

当然、未だに攻略されてはいません。

…ん?、宅ですか?。

それはまあ、遣れば楽に獲れますけどね。

それは西部を獲ってからでも十分です。

急ぐ理由は有りませんので。


では、そんな太行山脈で何をしている。

判り易く言えば、登山&キャンプです。

尤も、登山と言っても整備・確立された山道なんて有りませんから、冒険その物ですし。

キャンプと言っても実質的には野営です。

寧ろ、サバイバルですね。

前世でテレビ番組の企画で芸能人が無人島?な所で遣ってる様な易しい訳が有りません。

腹を空かせた獣が普通に彷徨く様な場所ですよ?。

まあ、俺達にとっては(・・・・・・・)キャンプですが。


さて、そんな生まれて始めて経験する高所。

生後一年も経っていない赤ん坊を連れてくる場所か否かは判りませんが。

標高3000m超の山に連れて登る人は居ない筈。

少なくとも、俺は聞いた事が有りません。

そういう高地で生活する人々の様に、産まれ育ったという訳ではなくて、です。


俺達の場合は氣を扱える為、問題有りません。

息子達も元気一杯で、始めて眺める景色に感動中。

自分の足で登ってはいませんが、こういう経験から興味や好奇心、遣る気は生まれる訳でして。

大自然に触れる事でのみ感じられる事。

それは確かに存在していますからね。

つまり、既に教育は始まっている訳です。


教育とは知識や技術を身に付ける事ではない。

感性や道徳心といった本能・理性に直結する部分を養うという意味では幼少期から様々な存在に触れ、色んな事を実際に体験する事が大切になります。

こうしなさい、ああしなさい。

そんな教育を我が子達に遣ろうとは思いません。

勿論、常識──社会秩序(ルール)に関しては別ですが。

その意味を自然と理解出来る様になる。

その為の下地造りとして、こういった事が必要。

そう俺達は考えて、こうしている訳ですよ。


──と、維が空を飛ぶ山鳩達を見て手を伸ばす。

他の三人が地上の様子・景色を眺めているのに対し空を見上げ、鳥に興味を示している。

その様子に「血は争えないか…」と思う。

幼くとも既に備わる“狩人”としての本能を自然と刺激されているのだろう。

きっと将来は狙った獲物は逃がさないなっ!。



「何処の泥棒家業の三代目なのよ…」


「奇術師親子の方かもしれないぞ?」


「何方にしても犯罪者でしょう…

ほら、準備が出来たから誠達を渡して」



俺の心の犯行予告ならぬ未来予想を然り気無く察しツッコミを入れてくる咲夜。

熱暴走により機能停止中の白蓮は見事に無視(スルー)

俺の抱く息子達を問答無用に抱き抱えていく。


──と言うか、息子達も率先して抱かれる。

うむ、それでいい、それでいいのだ、息子達よ。

公的には女性が男を立ててくれるが、私的には男が女性を立てる事が望ましい。

男は見栄を張り、女は評判を得る。

そういう夫婦の方が、政治家には向いている。


勿論、それだけに執着しては意味が無い。

飽く迄も、政治的な手法の一つとして、だ。

抑、この見栄は虚言や虚栄心を指す訳ではない。

政治家としての魅力を際立たせる為の演出。

男が自分でプロデュースするより、そういう部分は女性──妻に任せた方が良いという話。

まあ、それも飽く迄も無数の中の一つだが。


──という話は兎も角として。

俺も息子達も空気は読める。

だから、別れは惜しいが素直に従う。

男は生まれて死ぬまで女性には頭が上がらない。

どんなに格好付けて見せようとも。

愛する女に笑顔で「ちょっと其処に座りなさい」と言われれば逆らい難く、抗う事は愚行であると。

本能に刻まれているのだから。


そんな訳で、両手が自由(フリーダム)な俺。

無防備な白蓮(獲物)確認(ロックオン)!。

悲鳴を上げる隙すら与えずに狩ります。

ええ、父も母も狩人ですからね。

維の才能は間違い無いでしょう。



「この鬼畜っ、野獣っ、絶倫っ、忍っ!」



顔を真っ赤にして怒る白蓮。

だが、迫力なんか微塵も無い。

混浴でイチャついた後の湯上がり姿みたいに。

ただただ可愛くて色っぽいだけです。

──あ、エロいんじゃないですよ?。

色っぽいのとエロいのは別物ですから。

似て非なる魅力ですから。

其処、次のテストに出ますからね。


それはそれとして。

此処で「ハッハッハッ、何だかんだ言ってるけど、結局“おかわり”を三回もしたのは何処の誰だ?」みたいな事は絶対に口にしては駄目です。

二人きりでなら揶揄うネタに為りますが。

今、俺達は二人きりでは有りません。

華琳達には二人で消えていた事はバレバレ。

──であればこそ、具体的な話は自爆行為。

自分から女郎蜘蛛の張る網に掛かる様なもの。

腹を空かせた淫魔の群れに裸で飛び込む様なもの。

そう例えれば、御解り頂けるのではないか。


まあ、慣れている華琳()達は動きません。

既に俺との駆け引きが始まっており、キャンプ後の予定の奪い合いが水面下で行われています。

彼方は結託しているので厄介ですが…俺も男。

絶対に負けられない戦いが其処に有るんです!。



「むぅ~…そないな事ならウチを構ってくれたってえぇんやないん?」


「ふむ…高所鍛練か…高所では平地よりも身体への負荷が大きくなるから効果的な鍛え方の一つだし、折角だし遣ってみるか?」


「何や面白そうやなっ!──ってちゃうわぁっ!」



だから、こういう場面では最近の絡み役は霞。

霞に比べて翠や思春は大人しい(・・・・)ですからね。

…ん?、真桜?、真桜は事実上の妻ですから。

日常生活の普通のボケツッコミには参加してても、こういう時には霞に譲ってる状態です。

──と言うかね、巻き込まれて後で霞に絡まれたり愚痴られるのが面倒だから逃げてるんですよ。



「霞、騒いでいないで手伝え、飯抜きだぞ?」


「くっ…此処で飯抜きは辛いわ…しゃあないなぁ」



そんな霞を一言で御し、支配下に置く冥琳。

最近、原作(・・)にも劣らない風格が出てます。

これは…もしかして、アレですか?。

「女は恋をし、愛を知り、強く成る」っていう。

あの伝説の超進化(クラスチェンジ)ですかっ?!。

いや、有り得ませんけどね、そんな馬鹿な事は。


ただまあ、実際に冥琳は俺と一緒に過ごす様になり雰囲気や意識が変わったのは間違い有りません。

その上、俺との子供を身籠った訳でして。

それは意識や雰囲気も少しは変わりますよね~。


寧ろ、其処まで劇的な変化の無い白蓮が凄いな。

いや、勿論、白蓮だって成長はしてるんだけどね。

誠達の世話をしてる姿とか、何気無い仕草や表情に母性が垣間見える時が有りますから。

ただ、他の面子と比べると優等生だった女子大生が社会人に為って直ぐに妊娠したから結婚した様な。

所謂、貫禄や風格というものを感じないタイプ。

だから、何と無く周囲も気に掛けるし、助ける。

ある意味では、人を惹き付ける人徳だと言える。

…まあ、白蓮の場合、本人が普通に優等生だから、周りに頼ったりするのが下手なんだけどね。

尤も、其処が男からしたら可愛いんだけどな。



「御兄様、此方等の準備が出来ました」


「了解、それじゃあ、始めるか」



華琳に声を掛けられ、其方へと向かう。

今日の俺の独壇場(ステージ)が其処に有る!。

──え?、「何をする気だ?」って?。

フッ、フッ、フッ…では、問おう。

キャンプと言えば?。


──レッツ!、バーベキュー・パァーリィーッ!。




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