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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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60話 巫山戯合える


“民主主義”というのは、一体何なのだろうか。

社会の中で生活をする、あらゆる面で民衆の自由と平等を尊重し、広く人民全体の利益・幸福の為に、人民の手によって自由・平等な社会を築かんとする意志や精神、及び制度を指す──とされるのだが。

果たして、本当にそうなのだろうか。

政治というのは状況により舵取りが変わる物。

その際、民主主義が蔑ろにされる事は多々有る。


勿論、それが時には必要な場合は否めない。

民主主義に拘り過ぎて政策が破綻する事になれば、結果的に国自体に影響するのだから。

そういう意味では、時には仕方の無い判断である。

しかし、民主主義を掲げならがら民主主義を忘れ、経済状況や国家権利に傾倒し易いのが現実。

それに国民が異議を唱える事は──難しい。


そう為ってしまう原因は政治形態。

“民主政治”は民主主義に基づく政治である。

国民一般に広く参政権が認められている政治だ。

だが、その参政権は実際は直接的な権利ではなく、議員を選ぶ際の投票権でしかない。

現実的には民意が政治の場に届く事は無い。

何故なら議会等に取り上げられている意見等とは、複数の段階を経て編集された物なのだから。


ただ、そう政治家に言えば「そのままでは可決され承認される可能性が低い為」等と言うだろう。

しかし、そうではない。

勿論、現実的に民意が反映されるならば、それより素晴らしい事は無いのだろう。

けれど、本当に大切なのは民意を知る事。

有りの侭の民の声を公の場で政治家が聞き、それに何と答えるのか、どう考え応えるのか。

「其処にこそ民主主義の価値が有るのでは?」と。

そう言いたくなってしまうのは間違いだろうか。


結局、民主主義とは民を第一とする主義の事なのか政治家の常套句でしかないのか。

それを決めるのは、やはり民である。

故に時には抗う事も必要なのだろう。

その遣り方には配慮が必要不可欠ではあるが。



「──で、二人を妻に娶ったと…忍らしいなぁ…」


「何がどう俺らしい(・・・・)のかな?、かな?」


「ちょっ!?、くっ、擽るのは無しだろっ?!」


「そんな事誰が言ったんだ?、ん?」


「っんぅんっ!!、わ、解った!、解ったからっ!」



白蓮が白旗を上げた事で擽る手を止め、解放する。

安心しろ、我が子よ、父と母の仲は睦まじいぞ。

そう大きく膨らんだ白蓮の御腹を撫でながら思う。

掌に伝わる、小さな衝撃。

それが返事であるかの様に感じるのは親馬鹿か。

否、それは親子の絆!、親子の愛であろうっ!。


──と、夫婦&親子の語らいを楽しむ一時。

その様子を見ている梨芹達妊娠組に華琳・周姉妹。

華琳が羨ましそうにしていますが、華麗にスルー。

だって、トラップしたらオウンゴール一直線。

そう、正に巧妙な罠な訳です。


まあ、そんな事は兎も角として。

楽浪郡を手にし、周姉妹を妻として娶る事になった報告等で一旦、啄郡の居城に帰宅しています。

各地の留守は愛紗や咲夜達に任せて有りますから。

その辺りは心配要りませんし、していません。

我が奥様方は優秀・有能で居らっしゃいますから。



「…何と言うか、不思議な夫だな」


「ふふっ、そうかもしれませんね

でも、こういう方ですから私達は救われた訳ですし惹かれてしまうのでしょうけどね」


「………まあ、確かに…それはそうだな」


「…ぁぅぁぅ~……」



新妻二人と紫苑がしている会話は聞こえているが、決して乱入する真似はしない。

別に嫌ではないし、困りもしないのだが。

…何と無く、恥ずかしいじゃないですか。


…ん?、「そう思うなら、これも止めろって」とか言ってるのは誰なのかな?、かな?。

感じているか、我が子よ?。

父は母に男としての、夫としての威厳を示すぞ。

さあ、行くぞ白馬長史、感度は十分か?。



「戯れ合うなら他に行って遣ったらどうじゃ?

そう見せ付けられては儂等も我慢が出来ぬぞ?」


「そうです、忍、白蓮ばかり構うのは贔屓です

私達の事も平等に構って下さい

…寂しかったのは私達も同じなんですから…」



──なんて恥ずかしそうに頬を染めて、潤んだ瞳で上目遣いで言われては──応える他有りません。

此処で退けば男としての、夫としての沽券に関わる大問題だと言えるでしょう。

ええ、そうです、そうなんです。

男には絶対に退けない戦いが有るんですよ。


──とか思いながら白蓮を解放し、梨芹と祭を抱き寄せて慈しむ様に優しく触れ合う。

…え?、「戯れ合うんじゃないのか?」って?。

いやいや、人各々キャラやイメージって有るしね。

何でかんでも同じ対応をする事が平等ではなくて、きちんと一人一人を見て、合わせないとね。


…まあ、「白蓮だから構わない」って事じゃなくて基本的に日常的に戯れ合ってるから、だから。

梨芹や祭とでも二人きりでなら遣りますしね。

ただね、二人の性格的に他者の居る場で遣ったら、後で色々と仕返しをされますので。

ええ、色々とね。

だから、こういう時には自重するんです。

俺だって本当は遣りたいんですよ?。

それだけは御理解下さい。

理解されなくても別に困りませんけどね。



「──っ!?……ぁぅぅ~…

あの…ね、姉様…祭殿の言う我慢というのは…」


「…っ……まあ、何だ、夫婦の営みの事だろうな」


「ぁぅっ!……や、やっぱり、そうなんですね…」



そんな俺達の様子を見ながら周姉妹は顔を赤くし、しかし、羨望と好奇心から視線と意識を向ける。

まあ、二人共に“明日は我が身”ですからね。

そういう意味でも気にはなりますよね。


──と思っていたら白蓮が俺から距離を取り紫苑を楯代わりにする様に俺との間に挟む。

…白蓮はん、そないな反応は逆効果ですがな。

餓獣()の狩猟本能を刺激し、猛らせるだけですわ。

クックックッ…今宵の愚息は餓えて候う。



「────っ!?」


「あらあら…忍様?、あまり白蓮様を苛められては支障が出ても大変ですから、程々で御願いします」



俺の秘めたる猛る野性を察したのか身体を震わせ、瞬間的に硬直した白蓮。

それに対し紫苑が柔らかく「めっ」と叱る様にして俺に注意をしてくる。

その態度に俺の中の自覚無きMが疼く。

いや、俺って基本的にMっ気は無いんですよ?。

寧ろ、Sっ気全開の攻め攻めですからね。

ただ、陰陽思想に基づき、全ては表裏一体です。

裏返る事も有れば、少なからず内包もしています。

だから、Mっ気が有っても可笑しくは有りません。

そう、認めたくはないものですけどね。



「…それより、こうして直に啄郡の街を見られて、私としては色々と学ぶ事が多かったな

治安維持の為には民が武器を所持するべきか否か、それは非常に難しい問題ではあるからな…」


「それはそうだろうな

民にしても武器を所持するという事は日常的に命の危険が有る状況で生活している訳だ

だから“自己防衛”の意識が強くなり、結果として武器を所持している場合が多いからな

逆に、賊徒等の日常生活を脅かす害悪が少なければ民は武器を所持しようという意識は低くなる

それは一律ではなく、街毎に違ってくる事だ

だから統治者・施政者として正しく見極めなければ如何に画期的・効果的な政策も実らないからな」


「ああ、全く以て、その通りだな」



俺の言葉に何度も頷く一堂。


いえね、前世で有ったんだけどね。

所謂、“銃刀法”っていう規制法が。

銃火器に関しては規制する理由は判りますよ。

その効果も遵守されれば確かですから。

でも、刀剣の規制って…意味有ります?。

それはまあ、刀剣類は危ないとは思いますけど…。

包丁やナイフ、鎌や鉈が普通に売られてますよ?。

金槌や鋸、チェーンソーだって誰でも買えます。

一部は百均に並んでるんですよ?。

それは規制しないんですか?。

十分に殺傷可能な凶器になる物ですよ?。

それを子供ですら手軽に安価に手に入れられる。

そんな社会の在り方を貴方は、どう思いますか?。

私は危ういと思うんですけどね。

良く言えば「人々のモラルを信じている」訳で。

穿った言い方をすれば“無根拠な性善説”です。


「私は人間を信じています」と高らかに宣おうとも言った者は責任を負いますか?。

いいえ、一切負いませんし、直ぐに言い訳します。

綺麗事は人々の心に響き易いでしょう。

しかし、綺麗事は絵空事でも有ります。

机上の空論、寝言は寝て言え。

そう言いたくなるのが、実態だったりします。


そんな社会を「便利な世の中だ」と捉えるのか。

或いは「危険って何ぞ?」と疑問視するのか。

それだけで世の中の見え方が少し変わります。

其処から始める位でなければ。

染み付いた社会性を変える事は出来ませんからね。



「まあ、一通りは楽浪郡の掃除も済んだんだ

後は焦らず、浸透させながら変えて行けばいい

急な変化や強引過ぎる遣り方は反発・反感し易く、嫌悪感・抵抗感が強く出るからな

其処は民の様子を見ながら臨機応変にだ」


「…貴方が民に慕われている理由が解る言葉だな」


「慕われているかは解らないだろ?」


「そんな事は有りません

御兄様以上に民に寄り添える主君は居ません

その事を民は理解し、それ故に信頼しているのです

だからこそ、御兄様の血を残す為──ぁきゅっ!?」



この兄を誉め称えると見せ掛けてからの布教。

振れないな、我が愛妹よ。

まさか、こんなにも堂々と布教を行うとはな。

呆れを通り越し、最早天晴れよ!。

だがな、我が愛妹よ、我も成長はするのだぞ?。

今までは突っ込み一辺倒だったが、此度は違う。

決して、お前の好きにはさせん!。



「ふふっ…それでこそ、御兄様です

ですが、私とて以前のままでは有りません!

深淵の先、万物の原点に触れた事で更なる深理へと私は至る事が出来ました…

それを御覧に入れましょう!」


「──なっ!?、ま、まさか、お前…禁断の業を!」


「フフッ…フフフッ、ええ、そうです、御兄様…

遂に私は手に入れたのです!、あの力をっ!!」



──と、いつも通りに華琳と巫山戯て遊ぶ。

これは幼少期の創作物語の名残と言うべきなのか。

その場のノリと勢いだけで始まる即興劇。

その為、厨二病っぽく為り易いのは御愛嬌。

だって、そういう展開や言動って舞台演劇っぽくて目立つんですもん。

だから厨二病っぽく為るのは仕方が無いんです。


…まあ、そういう方向で考えると華琳の俺ネタ艶本だって、ある意味では俺の昔話の影響が少なからず有るんでしょうね。

書いてる内容は個人の趣味が反映されているにしろ物語を書く事自体は俺の影響っぽいので。

勿論、母さんの影響も有るのは確かでしょうけど。

母さんは原作や史実の曹操っぽいですからね。

今の華琳の様に腐女子寄りでは有りません。

…まあ、華琳も一般的な腐女子ではないですけど。

俺が鉄板ネタでも、相手は必ず女性ですから。

そういう意味では腐ってはいません。

寧ろ、其方に関しては些細な情報からでも探索し、笑わない笑顔で潰してくれますので。

ええ、その点は助かっています。

……だから強く言えなくなってもいますけどね。


──って、そんな事は兎も角として。

俺も華琳も遣り始めてから、その事に気付く。

咲夜が、愛紗が居ない今。

ツッコミ不在の今、オチは…オチは何処ぞーっ?!。


いつもだったら、「馬鹿な事してないで」的な形で話にオチを付けてくれていたツッコミの二大巨頭が今現在は傍に居ません。

…え?、真桜?、いやいや、格が違いますよ。

愛紗を飛車、咲夜を角行とすれば真桜は香車。

ええ、使い方次第では、という力量って所です。

そんな真桜でさえ居ません。

将来性・潜在能力で言えば、三大巨頭となれる程の才器を持つ公瑾が居ますが…まだまだです。

ええ、まだ俺達には届きません。


それを理解しているからか。

華琳は「…どうしますか、御兄様?」と不安そうな眼差しを俺に向けながらも演技を続ける。

その健気な姿勢に俺も本気で応えようではないか。

さあ、行くぞ、我が愛妹よ!。

本家の底力、篤と味わうがよいっ!。


──って言うか、誰か助けてえぇーーっ!!。




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