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【短編独立集】闇鍋  作者: トネリコ
コメディー
36/39

とり入のクリスマス♪


「駅前でのイルミネーションが定番だそうだ。見える屋上は取ってあるぞ」


 夜、仕事終わりに帰って来て、リビングに入るなり俺様は言いやがった。あとイベントだからって花束復活とかやめましょーや、神様だけで充分ですって


「辰さんや、これまた定番な情報を入手してきましたね。クリスマスなるリア充がきゃっきゃうふふと世の王者たらん顔でのさばるイベントに繰り出して一体何を得ようというのですか」

「お前は前もそう言っていつも部屋に篭るがな…」


 呆れた顔で隣りに座る辰さん。ちょ、リモコン取らないで下さい

 ピッとニュース番組に変えられる。辰さんはニュースばかり見るから面白みがない。しかもたまにBSの謎語のやつを字幕なしで流してくるのが腹が立つ。何が間違ってる翻訳は気がそれるだ、爆ぜろ


「ほら見てみろ、実物を目にしたいとは思わんか? 何事にも欲を持つことが上にあがるコツだぞ」


 リモコンで指された先にはアナウンサーさんと飾られた駅前。目に痛い。そして如何にもなカップルに質問している。私はお笑いで笑いたいんだ、お前らの笑顔が見たいんじゃない、爆ーぜーろー

 辰さんからリモコンを奪いピッとチャンネルを変える。うん、この芸人のしょうもなさ好きだわー


「いやいやタイムイズマネーですよ。移動時間から始まり得られる0に近い感動。むだむだお金の無駄でっせ。それに小市民はこの虚像で満足なんですー、上にあがるよりも現状維持が安心するんですー」


 ピッと変えられる。


「それなら余計に行くべきだな。考えてもみろ、無駄に高いキャンセル料はどうなる。それに俺にとっては値千金だしな」

 ピッと変える。

「ぐっ、そもそもまた辰さんの勝手イベントじゃないですか。社会人のホウレンソウは何処に行ったんです」

 ピッ

「ほらほら、寒いからって外に出てないから最近丸くなってるぞ」

 ピッ

「ぐぐぅ、いいんです、興味ないんで早く寝てください」

 ピッ

「美味しいフレンチの食事も付くんだが、それもキャンセルだな」

 プチッと消す

「いいんです!」

「ん? おかしいな、ごはんとダイエットネタで食い付かないとは」

「辰さんが私をどういう目で見ているのかは分かりました。あーもう、その根気に免じて行ってあげるんで、さっさと車で待っててください」


 ジト目で見ていると、辰さんがとっくりと此方を眺めてきた。なんですか、早く行ってくださいな


「それはいいんだが、何故バラを受け取らない」

「いらないからですが」

「というより…、何故そんな不自然な態勢のまま動かない?」

「最近流行のヨガポーズです」

「そうか、俺には何かを隠してるポーズに見えるがな」

「気のせいでわっ、ちょっ」


 無理やり辰さんが後ろを覗こうとしてくるのを阻止せんと藻掻く。バラの花束で目隠しするんじゃないっ、って痛っ


「何ですか、イケメンならどんな横暴も許されると思ってるんですか。辰さんみたいな悪役顔がやれば床ドンなんて脅迫と同意義ですから。そもそも床ドン壁ドンドンドンコンプリートなんて目指してるんじゃ――」

「これは」

「そもそも今日は食事に行くとかも聞いてないですし、電話もメールも繋がらないですし、私も時間が余ってたので手慰みに作ってみただけですし――」

「分かった、分かったからそんな真っ赤になって否定するんじゃない」


 辰さんの手に取られしげしげと眺められるのはクリスマスケーキの残骸。もとい炭。じたばたと皿を取り返そうと手を伸ばせば、ひょいっと上にあげられる。くッ、ここにきてリーチの差が恨めしい


「で、これを作って待っててくれたと。リア充イベントなんてやらないと言いたげだったのにな」

「今日はケーキがどうしても食べたかったんです。もう早くフレンチとやらに行きましょう。お腹すきました」

「チキンじゃなかったか」

「爆ぜればいいのに」


 がりっと音がする。


「…お腹壊しますよ」

「不味いな。ちなみに本日のメニューは」

「…白ごはんとチキンとスープとケーキです」

「救いは白ごはんか」

「爆ぜればいいのに」


 がりぐしゃボキッ


「充分ですってば、早くフレンチ行きましょうや」

「顎も腹も痛いからもういい」

「値千金はどうしたんですか。今なら渋々ですが何処へでも行きますよ」

「あー、まぁお前となら何処でもよかったが、奥さんの手料理でおもてなしの方が万金じゃないか?」

「…青白い顔して何格好付けてるんですか」


 がりっと食べればやはり炭だが、1人で処理しようとしていた時よりも味がする気がする。


「…繰り返せば成功率上がるんで」

「卵焼きはまだ微妙だぞ」

「…爆ぜて爆ぜまくればいいのに」

「事実で逆ギレだと」


 来年以降も作りますよという意味の言葉に、やっぱりデリカシー無し男は気付かない。

 まぁ辰さんだから仕方ない。

 もそもそと炭をつつきながらテレビに再び電源を入れれば、また別カップルの映像と音楽が流れたが、今度は無理に変えようとは思わなかった。



 。・:*:・゜Merry Christmas 。・:*:・゜



 は~い、以上で~す♪

 相変わらず分かりづらいやつらめ!ヽ(*´∀`)ノ

 ちなみに辰さんは《どろどろしててあまりあかりちゃんを連れて行きたくなかった系の》クリパから脱出して早めに帰宅という裏話(笑)

 ではでは(´ー`)/~~

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