わたし断捨離姫。いま、断捨離しているの。
わたし断捨離姫。いま、断捨離しているの。
断捨離、あなた知ってるの?
不要な物を減らし、生活に調和をもたらすってこと……だそうよ。
あら、捨ててすっきりだけじゃなかったのね。……仕方ないじゃない、漢字だけ見たら断って捨てて離すだけなんだもの。何だか詐欺だわ。
あれも、これも、それも、どれも、もう、いらないわね。
――――断捨離よ。
わたし断捨離姫。ええ?あなた知らないの?そう……、わたしも今初めて名乗ったところよ。
わたし、今から断捨離するの。
断捨離、あなた知ってるの?
不要な物を減らし、生活に調和をもたらすってこと……だそうよ。
あら、捨ててすっきりだけじゃなかったのね。……仕方ないじゃない、漢字だけ見たら断って捨てて離すだけなんだもの。何だか詐欺だわ。
まあいいわ、あなたは見ているだけでいいからわたしちょっと断捨離してくるわね。
これは――服ね。
はぁ、いきなり大物かしらね。
夏服と冬服とに昔はわけていたけれど、途中から面倒でごちゃまぜになってしまっているのよね。
この服も学生の時に気に入っていたけれど今はもう趣味じゃないし――断捨離ね
この服は汚れが落ちなかったしクリーニング出すのも手間だものね――断捨離ね
このスカートは見栄を張って買ったけれどお腹周りがきついのよね――断捨離ね
このシャツはまだ着れるけれど、よれと皺と色落ちが激しいのよね――断捨離ね
この靴下、五足千円で買ったけど結局柄が好みじゃなかったのよね――断捨離ね
このコート、福袋にオマケで入っていたけれど使わなかったのよね――断捨離ね
これは……――
「ああ、もう面倒ね、全て入れてしまいましょうか」
ふう、やっと服が終わったわ。わたし、こんなに服を持っていたのね。
ふふ、おかしい。あんなに外へ行くときはいつも足りない合わないと思っていたのに。
カラフルでぎゅうぎゅう詰めの燃えるゴミ袋が6つできた。
さあ、どんどんいくわよ。だってわたし、いま断捨離姫ですもの。
次は靴ね、はぁ……これまた大物ね。
このパンプス、気に入ってたのだけれど飾りが外れて以来履いてないのよね――断捨離ね
このブーツ、そういえば初めての贈り物だわ。え?野暮ねぇ――断捨離ね
このスニーカーは試着せず急いで買って靴擦れが凄かったのよねぇ――断捨離ね
この黒いシューズ、私の就活の時のお供だったのよ――もう、断捨離ね
このつっかけ、ずっと愛用し過ぎてもう底が擦り切れてるのよねぇ――断捨離ね
このピンヒール、可愛くて買ったけど中々使う機会ないのよねぇ――断捨離ね
この……――
「もういいわ、一足あれば十分だもの」
ふう、やっと靴が終わったわ。わたし、こんなに靴も持っていたのね。
ふふ、おかしい。あんなに外へ行くときはいつも足りない合わないと思っていたのに。
あら、服の時と同じことを思っているわね。
ふふ、もう断捨離のコツを掴んだのかしら。
……そうね、わたし、いま断捨離姫ですものね。
カラフルでゴツゴツした袋が1つできた。
さあ、まだまだあるわよ。
お次は本棚ね。ここは……とても強敵ね。心苦し過ぎるわ。
でも、やらないといけないものね。
この漫画も本も雑誌達もとてもとても好きだったわ。出来るならば新しい人にでもお譲りしたいけれど……そんな時間もないものね――ごめんなさい、断捨離ね
このマニュアルも、退職してからも持っていたけれど、もう復職しないものね――断捨離ね
このタウンワークもバイト雑誌も、よく見たら去年のままだったのね――ふふ、断捨離ね
この絵柄を集めてたご当地の色々なはがきも、もう送り主もいないものね――断捨離ね
鞄も――断捨離ね
食器も――断捨離ね
テレビも――断捨離ね
机も――断捨離ね
ゴミ箱も――断捨離ね
文房具も――断捨離ね
衣装ケースも――断捨離ね
タオルも――断捨離ね
布団も――断捨離ね
ふう、あら、何だか楽しくなってきたわ。
まあ、わたし、いま断捨離姫ですものね。
これぐらいいかないとダメですわよね。
帽子も――断捨離ね
トイレットペーパーも――断捨離ね
ティッシュケースも――断捨離ね
炊飯器も――断捨離ね
冷蔵庫も――断捨離ね
電子レンジも――断捨離ね
ソファも――断捨離ね
あとはあとは――
周囲を見渡せば、角に埃の溜まった床以外めぼしいものは見当たらない。
いや、と白い壁に四月のカレンダーが掛けられたまま残っていた。
「もう、明日にはいないものね」
これも―――断捨離ね
さあ、これで全部終わったわ。
やり残したことは――
あとは……、あら、あなたを忘れていたわね。
ぽんぽんと先程の断捨離で頭に積もってしまった埃を払う。
なによ、わたしがあなたまで断捨離すると怯えていたの?
呆れたわ。私の唯一のお供にしてあげようと思ったのに、お姫様の騎士がその調子でどうするのかしら。
いいわ、罰としてあなたはこの鞄の底でおやすみの刑よ。
「全部やりきったわ。だってわたし、断捨離姫だったもの」
唯一残していた靴を履いて、唯一残していた服を着て、唯一残していた鞄を持って玄関口に立つ。
そうして我が家だった家へと振り向き綺麗に、丁寧にお辞儀した。
お姫様の最後の一礼だもの。美しく綺麗にいかなくちゃね。
「ありがとうございました」
「おーい、荷物は詰め込んだぞー。後は業者がやってくれるから出発するぞー」
「わかったわ」
お姫様は王子様と一緒に空を飛んで海を越えるのよ。
ほら、あなたも一緒に行くんだから、これからもよろしくね。
断捨離して新生活……ってことで文字数は2020年にちなんで2020字でっす(笑)
え?みなさんお部屋が片付かない?もう、しょうがないな~
「わたし、断捨離姫。いま、あなたのお部屋の前にいるの」
はい、これからもよろしくね☆
(ネタの貰いものというか、実はお礼のプレゼント用だったので企画の方へ(笑)




