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【短編独立集】闇鍋  作者: トネリコ
文学?
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ひとり言

 




「早く死ねばいいのにな。お前に生きる価値なんてねーのに」


『自分に大それた価値なんてないのは知ってるけど、だからってはい今死にますって気も起きないよね』


「なんでまだ生きてんの? なんかやりたいことでもあんの?」


『やらなきゃいけないこともない。やりたいと言えるものもない』


「だったらさっさと死ねばいーじゃん。嫌なこともめんどいことも無くなるし」


『それもいいとは思えるね。漫画の続き読めなくなるなーってさっき思ったけれど』


「それすらも取って付けたもので、どうせどっちでもいいんだろ」


『まーね、心底悲しむ人もない』


「ほとほと薄っぺらい人生だな」


『仕方ない。そーやって生きてきたんだし』


「自分はこうだからってか? 悪いのは自分を作った周りであって、自分は悪くないとする。反吐が出る程自分に甘い」


『じゃあ聞くけどどーやって死ぬの? 自殺でもする? 家族は一応悲しむだろね、そして周りから自殺させた家族として奇異の目で見られる。自分が不甲斐ないせいなのに、一応よくしてくれた家族に、そこまで後を押し付ける気概なんてないんでしょ。

 だからあんたは祈ってる。だれか事故で殺してくれませんかー?って。あんたは他人任せでとことん自分の手を汚したくない臆病者』


「だが結局は自己中心。お前は本当に追い詰められたら、簡単に自殺を選ぶだろうよ。後始末やら残す人やら考えた上で、それよりも目の前の辛さから逃げたくてな。例え死に物狂いで泥を引っ被れば生き残れる道があっても、高慢な自尊心可愛さに死を選ぶ。いや、その辛いことを言い訳にして、お前は望んでた甘い誘惑の死に手を伸ばすんだ。死なせたのは辛いことを押し付けたもののせい。最期まで我が身可愛いずる賢い奴。お前のような奴は昔なら早くに淘汰してくれていただろうにな。

 人間自然と年を取る。まあ順調に行けばだんだん任されるものが増える。苦しくなって逃げて迷惑掛ける人を増やすくらいなら、傷浅い今此処で死んじまうのも手だろうよ。世の為人の為ってもんだ」


『今が本当に辛かったら、それこそあんたの誘惑に乗ってただろうけど。今は辛いけどまだいけそうだし、今余裕がある分死んだ後に残したのまで頭が回っちゃうからね。一応そこんとこにも罪悪感持つ、普通に居るそこらの一般人なんですよ。それにね、はっきり言っちゃうと、衝動という押してくれるのがなけりゃあ死ぬということが面倒臭い』


「ああ、図星を指されて怒らないのは、貶めてるのが自分だから?」


『正解。これが他人だったなら、私を知らないお前が言うなって殺したくなる』


「これだから外面いい子ちゃんは。小さい内に怒られないよう、他人との衝突も回避して、内に篭もる浅い付き合いばかりだから耐性がない。耐性がないから傷付くのを恐れ、過剰に我が身を守ってる。他人には浅い付き合いしかさせない癖に、私を知らない癖にってお前が言うのはお門違い」


『お生憎様、誰も批評してくれと頼んでない。自分で十分貶してるのに、これ以上貰う謂れもない。勝手に批評してくる奴程、自分の考えを聞かせたいだけ。私の一面だけを見て、お前はこうだと全てを評価』


「いいや、お前は貶していない。十分どころかこれっぽっちもな。何故ならこうやって貶してる俺の言葉が、全くお前に届いてない。だからお前は怒りもしなけりゃ、返答してへらへら自分を鼓舞する余裕がある。お前にとってはこの問答も、どうせ浸って気を慰めるか、時間潰しの一つでしかない」


『はいはい、分かった今日はもうおしまい。流石に疲れたから大人しく寝る』


「我儘だが確かに夜も遅い」


『それじゃおやすみ』


「はいはいおやすみ」



 






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