朝
薄白いレースのカーテンの隙間から、目を刺す様な光が部屋の中を照らす。紺の短パン型のジャージと、休暇中の木のハンガーが、照らされて少し眩しそう。
真っ白な入道雲が、窓越しにもくもくと綿菓子の様に顔を覗かせている。後ろには子供が水たまりを塗る様な可愛らしい水色が一面に。
隣から、メトロノームみたいに穏やかな寝息が聞こえている。
床暖房の暖かさに釣られて敷布団の下に潜り込んだからか、小山のような形で枕のお仕事をしている敷布団はふてくされ気味。
喉が少しひりっとする。乾燥注意報が出ているのだろうか。
息が少しあたたかい。けれど布団の外はまだまだ寒い。空とお揃いの水色の中で、白猫灰猫斑の黒猫達が、一列に並んで泳いでる布団。ごそりと肩まで押し上げて、体を押し付けている床暖房の温度を上げた。
キーボードを叩く指先だけがひんやり。タタタと響く音とその度に少しだけ動く画面、起きてるよと小さく震えて呼吸するパソコンの音が、この部屋で一番大きな音楽。
目覚まし代わりに歌う名も知らぬ鳥は、今日はまだやってきていない。
立ち上がると少しふらつく。
床暖房から一歩出ると、フローリングが足裏の熱を連れて行く。
窓から見える朝景色に誘われて、真っ黒な冷たい鉄に手を伸ばした。半回転すれば、透明なガラスが道を譲る。
途端、ひゅうっと顔中を小さな氷の針が通り抜けた。遮るものなく視界いっぱいに入った山々と家々、そして肺に入る無色の塊は、まだ冬に包まれているようだ。
それでも、くりーむに橙を一滴混ぜたほの明るい朝日の照らす家々が、眠りから目覚めの間の揺蕩う様な落ち着かない様な隙間を破ってそおっと瞼を震わせようとするので、私はくるりと振り向いて、両こぶしを腰に当てて言うのだ。
「さあ朝だよ! みんな起きて!」




