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太陽の盗人プロメテウス!!

 《アクア・シェル》


 シェルとか聞くと水の膜で身を守る魔法をイメージしそうだが実際は地面を滑って回避する魔法である。

 地面に水の膜を張る魔法なので、この膜がシェルなのだとしたら貝殻の上を滑っているということになるのかね。


 エーデルヴォルフさんが真正面で肉壁ってる間にアクア・シェルによる将棋の桂馬みたいな回避行動を転用してスカラベダイスの側面に回り込んだ。そのまま水魔法で削っていく。


「ははは!出鼻から良い調子だ。まるで私たちを祝福しているようではないか!」


 ああヴォルフさん、ゲーム時代の気品は影も形もない。何か気迫は目に見えるぐらいビシバシと感じるのだけども。

 まあ、良いか。ボスのHPバーはガンガン削っているし。


「ぱっぱ、ぱーぱーぱー」


「むっ。気を付けるんだエミリオ!私たちのご先祖さまの言い伝えがたしかなら・・・」


 このボスはスキル《エチュード》の効果で、被ダメージのリアクションとしてソロパートが始まったりする。

 そしてダメージがある程度蓄積するとそれに連動してスキル《オーケストラ》が発動し、曲がガラリと変わり、曲に合わせて戦い方も変わるのだ。

 そしてヴォルフさん。私たちの先祖って。まさかそれエミリオきゅん含んでないよね?


「何をしているエミリオ!お姉ちゃんのスカートを掴みなさい!」


 言われた通りヴォルフさんの後ろにまわって煌蝙蝠で出来たバトルスカートをつかむ。火耐性が上がった。便利なスキルが付いてるな。


「ふふ、こうしていると、去年の舞踏会を思い出すなエミリオ」


 エミリオきゅんのために血統書の改竄とかやりかねないな。すでに自分の記憶は改竄しちゃってるもんな。溺愛していた弟さんと重ねてしまっていると思っていたが、良く思い返すと弟さんは3年前に亡くなっているはず。つまり一昨昨年である。さきおととしである。何が言いたいかおわかりいただけるだろうか。ジャンルがMMORPGからサウンドノベルホラーに変わるわ!しかもおそらくは心霊ホラーでなく心理ホラー。


「あらあらまあまあ」


 流石アクアリウス。絶対零度のアルカイックスマイル。冷や汗で胴体の濡れ透け度が増しているが。


 さて、さっきまでひとりで駆け抜けてきたスカラベダイスの金管楽器のような体は、打って変わって美しく燃え上がり、鮮やかな蝶型モブの取り巻きを召喚し、こちらに飛ばしてきた。炎で出来た蝶は次々と周囲に火柱をつくり、こちらの移動を制限する。まるで火で出来た森に迷い込んだみたいだ。


 《アクア・シェル》


 お腰ごとスカートを掴んだまま半弧を描いて森を抜ける。


「ぱぱらぱらぱらぱー」


 気門からトランペットのような音を奏でて突っ込んできた。


 厄介だな。離れれば蝶々を飛ばし、近づけば曲調を変え駆け抜けてくる。


 ここは、脳内設定スキルの出番か。


 《猫除け》


 ―どごぉん―


 発動と共に、スカラベダイスが丸々入りそうな歪で巨大な柱が現れた。2リットル入りのペットボトルの形をしている。まさに猫除け!いいぞ!突進を止めた。


 ―どごぉん―


 ―どごぉん―


 ―どごぉん―


 調子に乗って乱立させる。ふふん、これで加速できまい。一瞬焦らせやがって。じわじわなぶり殺しにしてくれる。


「もう、昆虫さん。脅かして。メッ、ですよ?」


「エミリオ!何だあの柱!?無性に緑茶が飲みたくなってきたぞ!」


 うるせーぞブラコンが。大人しく腰を抱かれてなさい!


「ぱーぱぱらっぱーらっぱーらっ」

「しゅっしゅっしゅっ」


 ゴスゴス削っていったらまた曲が変わった。

 機関車の様に気門から蒸気を吹き出し、火属性よろしく赤熱した甲殻を広げる姿はまるで皮がめくれあがったオレンジのようである。


 ーじゃばあー


 うわぁマジか。猫除け溶かしやがった。てかプラスチックだったのな。


 《アクア・シェル》


 滑車を回し過ぎたハムスターのように回避した。なるほど、この球形は確かに殻だな。諸々の事情でボツになった、とゲーム雑誌のインタビューで製作者が言ってた気がする。ゲーム時代仕様の平面滑りはおそらく、技名だけ残してモーションを削った結果だろう。猫の本能か、ゲームでは出来なかった動きも楽勝である。シッポというバランサーが無いせいで女の子座りで着地したのはご愛嬌。


 さて、猫除けも効かないならばしかたない。


「ふぃじかるちぇーんじ」


 目の前に大量の衣装が浮かび上がる。ここは女王様たるアイスに変身・・・っと思ったがスクロールしている途中、その衣装を見つけて気が変わった。果たしてボス相手に通用するのか。いや、ここは俺の脳内設定が活きる世界。公式のボツ案も採用されてるのだ。通るはずだ。


 どこからともなく銃声の音が聞こえる。そして、スカラベダイスのスカ・オーケストラに負けない、カッコいいジャズのメロディー。


 アクアリウスのアルカイックスマイルがべりりっと破れ、中から不敵な笑顔の美少年が現れる。


「ぬふぅーふーふー。天下御免の大泥棒。エマリウス・プロメテウスたあ、あっ、俺様がぁーことぉーだぁー」


 敵に負けじと黄金に輝く悪さ(アンラッキー)パンチ3重・∞(トリプル・ダブルオー)を構え、大見得を切った。もう泥棒とか紳士とかいろいろ混沌としている。ちゃんとスキル通るかな。

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