初体験
独り暮らしを始めて、最初のお客様はミキちゃんだった。
買ったばかりのカップにコーヒーを注ぐとミキちゃんの前に置いた。
「いい部屋だね」
とミキちゃんは言った。
「うん、大学まで電車で一本だって」
「ふうん、いいね!私の部屋は大学まで自転車で十五分くらいのところなんだ」
そう言って微笑むミキちゃんに俺はなんだか寂しい気分になり、また少し泣いた。
「でも、ユウよかったよね」
「何が?」
「ここなら坂井くんも近いし、すぐ会えるじゃん?」
そう言ってまた微笑むミキちゃん。そんなミキちゃんに悪い気がしてまた少し泣いた。
「よしよし、ユウは泣き虫だね。そんなにすぐに泣いていたら、私、ほっとくことができなくなって困っちゃうよ……」
「ごめ……今だけ……」
「うんうん」
ミキちゃんはその豊満な胸に俺を抱き寄せ、しばらくそのまま泣いていた。ミキちゃんも泣きたかっただろうに、我慢しているようだった。
◇
二番目のお客様は、やっぱり坂井だった。
コーヒーを淹れると、ふわりと香りがこぼれた。
坂井は
「ありがと」
と言ってすっかりくつろいでいた。
コーヒーを持って正面に座ると、坂井がくいくいっと俺を自分側に呼んだ。何も考えずに横に座る俺。
坂井は待ちきれなかったかのように激しいキスをしてきた。
それは今までにない激しさで、俺は圧倒されてつい拒否してしまった。それでも坂井の勢いは止まらず、ついにブラに手がかかった。
俺は思いっきり拒否ると、
「きょ、今日は勝負下着じゃないから……」
と言った。
「そんなの関係ないよ!今まで我慢してたんだから、今日、シよう!」
「それじゃ、シャワー浴びる時間をちょうだい」
俺は汗をかいていたので、そのままスルのはいやだった。
ただ、そこに坂井が
「俺も一緒にシャワー浴びる」
と言い出すとは思いもしなかった。
「狭いから一人ずつ!」
と言っても
「いや、一緒に入る」
と言って聞かない坂井。
「私は恥ずかしいからいやなのッ」
そう言うまで入ると言って聞かなかった。
「恥ずかしいなら……仕方ないな」
落ち着きなく座る坂井を見届けたあと、俺はシャワーを浴びた。
いよいよだ……
胸は張り裂けそうに高鳴り、俺の火照る身体にシャワーが心地よい。
いよいよだ……
俺はまたそう思い気合いを入れ直した。
「よしッ」
俺はシャワーをあがると、坂井に入ってどうぞ、と案内した。
坂井はすごい勢いでシャワーに入っていった。
俺はここぞというときの紫の勝負下着を身に付け、髪を乾かし始めた。
坂井はすごい勢いでシャワーを出てきた。
そんなに急がなくてもいいのに……
背中がびしょ濡れのまま出てきた坂井を静止させると、タオルで背中を拭いた。
坂井は興奮状態で、もはや静止が効かなかった。
まさに襲われる、と言った表現がぴったりだった。
俺のTシャツを破くかのごとく勢いで突進してきた。
されるがままになる俺。
胸にむしゃぶりつかれて、ほんの少し吐息が漏れる。
全身坂井にされるがままに任せた。
マグロと言われてもいい、最初はわからないんだから。
坂井の舌が徐々に下がっていき、やがて俺の密林へと入っていく。
そこはもう充分に濡れていた。坂井はソレを啜るように飲み干すと、息子さんにカバーをかけた。
「痛かったら言ってね」
と何度も繰り返して言いつつ、俺の中に入ってきた。
意外と痛くない……と思ったのは最初だけだった。
奥へ奥へと進むほどに鈍い痛みが走る。
「い、痛い……」
そう呟く俺の声が聞こえないかのようにさらに坂井は激しくなっていく。
あまりの痛みに気が遠くなった俺。
目を開くとそこは見慣れぬ天井だった。