親友
結局、俺は坂井に電話をして聞くことにした。
塾が終わる時間を待って電話を入れた。
「もしもし? マサユキ、聞きたいことがあるんだけど……」
すると後ろでなんだか女の子の声がする。
「ちょっと待ってね」
と坂井が言うと、後ろの声が更に大きくなる。
「マサユキ、早く〜」
え……。何、今の……。
「先に帰っててー!」
坂井の叫ぶ声が聞こえる。
「もしもし?」
と坂井から言われて、ハッと我に返った。
「あ……何でもないっ、ごめんね!」
とだけ返すと、急いで電話を切った。
その後何回も電話が鳴ったが、出る勇気がなかった。
しばらくして、思い出したかのようにユウスケに電話をかけた。
深い意味はなかったのだが、ユウスケが電話に出たとたんに涙が出てきた。
俺は泣きながらさっきの出来事をユウスケに報告した。
ユウスケは
「まだ浮気と決まったわけじゃないんだから」
と俺をなだめる。でも、俺の中では浮気としか思えなくなっている。
ユウスケが
「僕、今からユウさんちに行きます」
と言われて、
「うん、そばに来て……」
と言ってしまう。甘えたらいけないとわかっていながら、つい甘えてしまう。
「すぐ行きますから」
ユウスケがそう言うのを聞きながら、俺は号泣し始めた。
ユウスケが来ると言ってから一時間が経った。
もう11時を回っている。さすがに心配になってきた。一時間以上かかる道のりだとは知っていたが、さすがにヤバいだろうと思って何回も電話を鳴らしたが、バッグの中にでも入れているのか、一向に出ない。
不安な時間を過ごす。
すると電話が鳴った。
坂井からだった。
俺は無視を決め込んだ。
すると、外から窓に向かって何かが当たる音がする。何かと思って見に行くと、そこには坂井が居た。
窓を開けると、坂井が
「さっきの! 電話! なんだったの?」
と言う。
俺は玄関先まで出ていった。
号泣していたので、ひどい顔をしていたのだろう、坂井が心配そうに
「何があったの?」
と聞いてきた。
「森永さん!!」
と一言言うと、坂井はハッとした顔をした。たまに
その顔を見て俺はまた泣き出した。
「森永さんとは何でもないよ!」
と言う坂井の前に立ち塞がった人物がいた。
ユウスケである。
「何でもないんだったら、なんで呼び捨てにされてるんですか!?」
ユウスケが俺の代わりに言ってくれる。
「それは!!」
坂井は誰だかも知らぬ少年に言い返す。
「それは、森永が勝手に言い出したんだ!!」
「へぇ、勝手に? だったら何で呼び捨てにされたままにしているんですか?」
「何回も言ったけど、森永が聞かなかったんだ!!」
「彼女とは本当に何も関係がないんですか?」
「そ、それは……」
坂井が言いよどんだ。
「それは?」
攻め口調のまま、ユウスケが聞く。
「それは……一回告白された」
ユウスケが頷く。
「告白された相手に呼び捨てを許してるというわけですね」
淡々と言うユウスケ。
「俺は振ったんだ! 本当に何もないんだ! 信じてくれ、ユウ!!」
もはや叫び声に近い坂井。
ユウスケが俺の方を向いた。
「ですってよ、ユウさん」
「ま……マサユキの馬鹿ぁぁあ」
俺はそう言うのが精一杯で。
なにやら騒々しい、と家から家族が顔を出した。
「じゃあ、僕はこれで」
ユウスケが自転車にまたがる。
「ユウスケ……ありがと」
俺は涙を拭きながらそう言った。
「友達だから」
とユウスケは言うと、さらりと家に戻っていってしまった。
「ところで、今の……誰?」
坂井が聞く。
俺は呟くように言った。
「親友……だよ」




