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森永

 一週間はあっという間に過ぎ、頭痛もさほどではなくなった頃、俺は学校へ行った。

 みんなも心配してくれていたらしく、代わる代わる誰かに声をかけられた。


 職員室へ行き、担任にもう大丈夫です、と伝える。

 すると反対側のドアから坂井が入ってきた。どうやら質問らしい。


 せっかくなので、ドアの外で待ってみる。

 しばらくして坂井が出てくる。俺は驚かそうとロッカーの陰に隠れていた。

「マサユキ! どうして一人で行っちゃうのー?」

 坂井と同じクラスの森永が言った。

 ま……マサユキ……

 俺はミユキちゃん以外の人で初めてそう呼んでいる人物に出会った。

 ただそれだけのことなのに、膝から下の力が抜け、へなへなと座り込んでしまった。

 もちろん坂井は気づいていない。

 森永は坂井の腕に絡みつくようにしながら歩いていった。


「な……なにあれ……」

 調子づいて彼女面しやがって!!

 あとで坂井に質問攻めせねばなるまい。


 と、そこで気づいた。自分だってユウスケと似たような行動とってるじゃないか、と。


 質問攻めにしたいのは山々だけど、ただ名前を呼んでいただけで質問攻めってのもどーなの?

 とも思った。


 結局その日は一日坂井に会わずにバイトへ行った。



 バイト先で、店長以下、みなが心配してくれていた。宮崎さんもホッとした様子だ。佐藤から聞いていたのだろう、

「頭痛、もういいの?」

「外側はまだ痛いし腫れてますけど、なんとか」

 と言うと宮崎さんが

「困ったことがあったらすぐに相談しなね」

 と言ってくれた。

 やっぱり優しい〜宮崎さん。

 パートのおばちゃんたちに差し入れを持って行く。

「あら、ユウちゃん、もういいの?」

「頭をぶつけたんですって?」

 代わる代わる聞いてくる。差し入れをさっと置くとすぐさま退去した。

 おばちゃんたちの長話に巻き込まれるとやっかいだからね!


 おばあちゃんとユウスケは今日もいつも通りやって来た。そしてお好み焼きセットを二つ頼む。


 ユウスケが待ち時間に何をしているのか気になって、見ようとするが角度が悪い。

 おばあちゃんは食器を下げてきて、じゃあまた明日、と帰って行ったが、ユウスケはまだそこにいた。


 俺は冷水器の調子を見るふりをしてユウスケに近づいた。

 ユウスケは勉強をしていた。俺が近くに来たのに気がつかないほど熱中していた。

 やはり最高峰な学校はそうしないとついていけないか……

 と、ちょっと感心してみたりした。


 ユウスケは一時間毎にジュースを買いに来る。携帯のアラームをつけているようだ。



 やがてバイトも終わり、いつものごとく鍵を渡す。

 そして歩きながら、今日あった坂井の件を相談した。

 こんな関係でよく相談できるよな、と自分でも思う。

 ミキちゃんやミユキちゃんに相談すべきだろう。だが、俺はユウスケを信頼できる友人として見始めていた。

「うーん、難しいね……やっぱり直接彼氏に聞いてみた方がいいと思うよ」

 天使はそう答えた。

「……ですよねー」

 天使の返答に俺もそう答えた。

「だいたい、名前で呼ぶだけでも超親しいのに、その人は呼び捨てにしたんでしょ?」

「うん……」

「それって余程親しくないとできないことだもん。あ、でも彼氏が怪しいとか、そういうんじゃないからね」

 ナイスフォロー。

「女の方に聞いた方が確実……ってことだよね」

「まあ、それが出来るなら今ここで相談しないでしょ」

 ユウスケはわかってる。

 ユウスケは頼りになる。

 ユウスケは友達として俺に意見をくれている。そんな当たり前が嬉しくて俺は泣き出してしまった。

「――っ、ごめ――」

 ユウスケが肩に手を置いた。そしてゆっくり擦ってくれた。それがあまりに気持ちよくって、俺は更に泣いたのだった。

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