頭痛
今日は水泳の授業の補習である。
夏休み直前に生理がきて休んでしまった俺。
そんな俺へのサプラーイズ!!
水泳が苦手なのは前世から受け継いだこのDNAのせいだろう。って、DNAなんて受け継いでいないが。
補習は男女共に行われる。今日は松永はいたが、坂井は補習の必要がないらしく、坂井の姿は見当たらなかった。
夏休みに入ってからというもの、授業の都合から一緒に登校することもなくなっていた。頼みの綱である昼御飯だけはかろうじて一緒にとれていたけど、それ以外はほとんど会うこともままならなかった。
土日は土日で塾はあったし、午後はバイトに勤しんでいたので本当に会うこともままならなかったのだ。
少し寂しいけど、俺の側にはユウスケがいてくれた。おかげでバイトも熱心にできたし、帰りも寂しくはなかった。
ズルいことはわかっていた。だが、寂しさを紛らすには他に方法を思い付かなかったのである。
宮崎さんを始めとするバイトのみんなは彼氏が変わったんだ、と思われているようだった。
変わってませんから!!
さて、今日の水泳の補習は50メートルを五本という、水泳が苦手な俺にはもってこいなカリキュラムだった。
50メートルを二本泳いだところで俺は朽ち果てていた。しかし、鬼の体育教師はそれだけで許すはずもなかった。
「加藤、あと三本な」
「ふぁ〜い」
俺は飛び込み台を目指してノタノタと歩きだしていた。
その時。
「あぶなーいっっ!!」
最後に聞こえたのは教師の雄叫びだった。
俺は頭に鈍い痛みをかんじながら、青空を見上げていた。
そう、俺は滑って転んだのである。
◇
目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。
ピッ、ピッと何かが鳴っていた。
横を見やると、心電図のような機械が置かれて動いている。
俺は重たい手を持ち上げてみた。すごく重たい。
そして手を見て異変に気がつく。
俺の手は女の子のそれではなかった。
勢いよく起き上がろうとすると、身体が重たくて思うように起き上がれなかった。
すると、隣にいたある人物が嬉しそうな悲鳴をあげた。
母だ。
それも、男の時の。
「先生、先生!」
嬉しそうな悲鳴をあげて母は看護師を呼ぶ。
「起きたんですよ、先生!!」
起きたとはどうやら俺のことらしい。
全身包帯だらけの俺は、ひどい頭痛に見舞われた。
先生が来る前に、俺は頭痛でまた倒れてしまった。
◇
目を開けるとそこは見知らぬ天井だった。
ピッピッ、と心電図のような音がする。無理矢理目をそちらに向けると、心電図のような機械が動いていた。
あぁ、さっきの続きなんだな……と俺は思った。
とりあえず重たい手を持ち上げてみた。
さっきと違う細い腕。
俺は起き上がろうとした。
頭に鈍痛が走って起き上がれなかった。
だが、横にいる人物が嬉しそうな悲鳴をあげた。
母だ。
ユウの。
俺は一瞬どちらが夢なのかわからなくなった。
でも、さっきも手は重たかったし、痛みも感じた。それは今も同じである。
「先生、先生!」
母が言うのを聞きながら俺は再び眠りについたのだった。
目が覚めると、そこはさっき見た天井だった。
どうやら俺は戻ってこれたらしい。
え? どっちにって?
決まってるじゃないか。
ユウの方にだ。
俺の腕は細く、包帯ぐるぐる巻きでもなかった。
そのことで、少し安堵する。
やっぱりさっきのは夢だったんだ……
まだ痛みが続いていたが、それは俺が生きているということを教えてくれた。
医者らしき人物が来て母にう言った。
「あとしばらくは頭痛が続くでしょうから、鎮痛剤を点滴します。先ほど説明した通り、頭の中はなんともないですから、ゆっくりですが、元気になるでしょう。あとは軽いムチウチの心配があるだけです」
では、と医者は去っていった。
俺は無言で母の方を見ると、母は泣いていた。




