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ユウスケ

 ユウスケは黙ってこちらを見ている。

「そもそも、なんで付き合ってくださいだなんて……」

「祖母に言われたんです。お前にぴったりな彼女がいるよって」

「おばあちゃんに言われたから? それでも話飛躍しすぎじゃない?」

「毎日祖母からユウさんのことは聞いていました。だから、僕はユウさんを好きになりました」

「ちょーーっと待てぇ! おばあちゃんから話を聞いたから好きになったって、なんかおかしくない?」

「別におかしくはないでしょう。僕は現にユウさんのことを見る前からあなたに恋をしていました」

「ちょーーっと待てぃ!!」

「なんですか、さっきから」

「私にはれっきとした彼氏がいるんだが!!」

 ユウスケは悲しい顔をした。

「僕は諦めきれません」

「だから、なんでそう、頑固なの?!」

「仕方ありません。僕は僕でしかないし……」

「とにかく、彼氏がいるんだから、諦めてよね!!」

「彼氏に振られるまで待ちます」

 なぜだーーー!! と、大声で叫びそうになるのを飲み込む。

「とりあえず、今日は送りますよ」

「いやぁ、ここで結構」

 ついて来られたら末代まで祟られそう。

「いえ、送りますよ」

 しばらく押し問答していたが、あまりの頑固さに折れる俺。

「じゃあ、歩きでいいから」

 と言うと、自転車から降りた。

 が、ハンドルを渡してくれない。ハンドルを渡されたらそのまま突っ切るつもりだったのだけど……

 甘いか。



 道中、ユウスケは自分のことを俺に話して聞かせる。

 早くにお母さんを亡くし、お父さんとおばあちゃんに育てられたこと、自分の学校のこと、自分のこと。

 話を聞いていて思ったのは、この子、素直過ぎる、ということだった。

 なんでも真っ正面から受け止めてしまうような感じだ。

 今回のことも、大好きなおばあちゃんの言うことをそのまま受け止めていった結果、俺を好きになったようだ。


 俺からすれば、それは恋に恋してるようなもんだったが、本人は至って真面目であるからたちが悪い。

「どうして私のことを好きだと思うの?」

「アルバイトで嫌なことや嫌なお客様もいるだろうに、そんな素振りは一切見せない優しさとか」

 それはあんたのおばあちゃんがいたときたまたま嫌なお客様がこなかっただけじゃないの?

「毎日アルバイトを頑張っているところとか」

 そういや、おばあちゃんも毎日来てたもんな。

「優しさと強さを併せ持ったところとか」

「それはさすがに根拠がないんじゃ……?」

「そんなことはないです。僕の勘は当たるんです」

 ほら、勘だって言ってるじゃないか!!


 俺が疑わしい目で見ていると、もう一度言い直した。

「僕の勘は外れたことがないんです」

「それは思い込みの力じゃ……」

 むーっと膨れていくユウスケ

 一瞬、可愛いとか思ったり。


 改めてユウスケを見ると、なかなかのイケメンである。イケメンでも可愛いに分類される感じだ。天使って言う言葉がぴったりな感じ。

 全体的に色素が薄めで、儚い感じすら漂わせている。会心高校の制服がよく似合っている。


 会心高校は県内でもトップクラスの学校で、俺の通っている高校より一歩上のランクだ。

 俺の通っている高校も決して悪くはないのだが、会心高校のほうが残念ながらレベルが高かった。


 俺の前世からすると、こいつは敵だと思える。頭がいい上顔もいい。身長だって低くない。

 前世の俺は身長が低く、女子の横に並ぶことは恐怖でもあった。

 それをこの男は難なくこなしている。ちょっと頑固なのを差し引いてもお釣りがくるくらいだ。


 俺としては坂井くらいドライなほうがちょうどいいのだが、悠祐は暑苦しいまでに自分を推してきた。


 厄介なものを抱え込んでしまった……

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