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脳神経外科

 翌日。

 俺は時計のアラームで目を覚ました。というか、時計と携帯両方鳴らして目覚めたんだけど、今日は母に朝から怒られずに済んだ。

 制服に着替える。そして、思い出してまた上着を脱ぐ。

 ブラに再挑戦だ。昨日ぐぐって正しいブラの装着方法を見ておいたので、今日は違和感なくつけれた。それにしても気持ちいいよね、おっ○い。柔らかくて溶けかけのマシュマロみたいだ。その感触をブラ越しに何度も味わうと、俺は上着を着た。

 おっ○いって触られてると気持ちよくなるってエロ本には書いてあったけど、そんなこと全然ない。むしろ、触っている手の感触だけが気持ちいい。

もしかして男子に触られないとだめなのかな?


 変なことを考えながら食卓についた。


 今日は食パンにサラダ、コンソメスープだ。

 独り暮らしのころにこんな豪勢な朝ごはんを食べることはなかったので、貪り食う。

 その様子を母と妹が怪訝な顔で見ている。

「このスープ、美味しいね!」

というと妹が

「いつものクナールのコンソメスープだよ……」

と呟いた。

 やはり、家では黙っていたほうがいいらしい。

「ごちそうさま!」

と言って席を立つと、そのままカバンを取りに自分の部屋へ行こうとした。すると、母がそれを制止した。

「ご飯の茶碗はいつもさげていってるでしょ?」

母が更に怪訝な顔になる。

「あ、ごめん、忘れてた」

と俺は言い訳すると、茶碗をさげた。

「おねーちゃん昨日から変だよ」

と妹が地雷を踏む。

「そうね。どうかあるの?ユウ」

仕方がないので開き直って

「一昨日体育の時に頭をぶつけてから、記憶が混乱しちゃって」

と言った。

 すると母が顔色を変えて言い出した。

「そんなに強くぶつけたの?!お医者様に診ていただきましょ!今日はお母さんも休み取るから!」


 結局病院に行くことになってしまった。


 脳神経外科へ連れて行かれる。医者からどの辺をぶつけたかと聞かれて、思わず後頭部を指差す。

「とくに外傷はないようなんだけどな……念のためCT撮りましょう」

ああ、母よすまない、俺がこの身体に転生してきたばかりに、こんな手間までかけさせて。


 ――というか、俺がこの身体に転生してきちゃったけど、それ以前のこの子の魂ってどこに行ったの?謎は深まるばかりだった。


 ウィーン、ウィーン、と機械が音を立てて俺の頭を撮影していく。

これで俺がバカな証拠もみつかるかも?


「CTを撮った結果、異常は特にありませんでした。後は心因性によるものも考えられますが……紹介文を書きましょうか?」

母は「はい」と言おうとしたようだったが、俺が

「数日経ったら思い出すかもしれないんで、結構です」

と返事を遮った。

 医者は

「それは大いにありうることですね。なにかあったらまた来てください」

と言った。


 帰りがけ、母とうどんを食べた。うどんを食べながら、恐る恐る母が聞いてきた。

「ユウ、ユウの記憶はどのくらいあるの? 何か思い出せない?」

俺は頭を抱えた。だって俺には俺の記憶しかないからだ。

「ごめん、なにも覚えてない……」

すると母は、

「そっかぁ。じゃあ一からやり直すつもりで頑張ろうかね!」

と言った。

 母のその言葉に安心した俺は、ちょこっとだけ、泣いた。



 家に帰ると母が家の中を案内し始めた。さすがに2日過ごしていれば俺だってわかるのだが、今は母の思いに合わせることにした。


 お風呂場に来ると、

「これがパパとママのシャンプー、これがユウの。こっちはユキノの」

「ユキノって?」

「あなたの妹よ」

するとふいに母が泣き出した。

「ユウ……そんなことも忘れてしまったのね……」

俺は居心地が悪くてへらへらするばかりだった。

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