初
俺は考えていた。
もうシてもいい頃かもしれない。でも、どうやって坂井をその気にさせたらいいんだろう? 前に強く拒否ってしまっているので、生半可なことじゃ坂井は動かないはずだ。
直接的に言った方が良いのかもしれない。でも、それじゃあんまりにもムードがなさすぎる。
わざとひっつく。嫌だな、あからさまだ。
キスをせがむ。お、これならいいんじゃ? これならその流れのまま持っていけるかもしれない。よし、これにしよう。
思い立ったが吉日、今日の夕方に決行することに決めた。
坂井は塾を休んでくれるかな? そこがちょっと引っ掛かったけど、まあ、大丈夫だろう。
俺は休み時間に坂井の元へ行き、
「今日の放課後、話したいことがある」
と言った。
「できれば塾も休んで欲しい」
と付け加えた。
坂井は
「おぅ、わかった」
とだけ返事した。
そして放課後。
「今日はうちに来て欲しいんだ」
と言うと、? となりながらも
「わかった」
と坂井は従ってくれた。
ユキノにはメールで彼氏を連れてくるから帰りは遅くしてね、とメールしてある。
察しのいい妹のことだ、どういうことかすぐにわかっただろう。
母はパートで7時にしか帰らない。
チャンスは逃さない。
うちにつくとすぐ、俺はリビングに坂井を待たせて勝負下着に着替えた。
そのあと坂井を二階に通して、俺は麦茶をいれて部屋で持っていった。
「…………。」
無言の空間が広がる。
そんな中で俺はキスをねだる顔をして見せる。
だが、坂井はいっこうに手を出してこない。
「んー!」
と言って急かしてみても、いっこうに手を出してこない。
俺はしびれを切らして、
「キス、してよ!!」
と言った。
すると坂井は
「今日の用件ってなんなの?」
と聞いてきた。
「今日の用件って……キスしてくれたら教える」
「何なの、それ……」
坂井は笑いながら軽くキスをした。
ここだ!!!
俺はここぞとばかりに激しいキスをした。
坂井は……嫌がらない。
そのまま、服の上から坂井の胸をまさぐる。
すると……
坂井はそれを拒否した。
なんで、どうして、なんでー?!!
唇が離れると坂井は言った。
「それ以上は俺が我慢できなくなるから駄目」
俺は
「今日は拒否らないから、シてよ」
と言う。
「ダメダメ、受験が終わってからじゃないと」
「受験とこれとは関係ないじゃない!」
「ホントは結婚するまで駄目だと思うんだけど、大学入ってからだったら、万が一のことがあってもなんとか責任が取れるから」
なんという貞操観念!!
「でも、私は今、シたい」
「駄目だよ……」
「今がいい」
「仕方ないな……」
と言うと坂井は俺の方に向き直り、
「いれないでならしてあげる」
と言った。
いれないで?いれないでってどういう意味?
少し考えてると、
「途中までってこと」
と言って俺を押し倒してきた。
頭に巡るは今までおかずにしてきた二次元美女たち。いや、美少女というほうがぴったりだろう。
あー、俺、とうとう童貞卒業するんだ――
◇
結局最後までは行き着かず、言われた通りに途中で終わった。
でも、坂井のソレはギンギンのままだったが、大丈夫か、坂井……
前世の俺だったら耐えられないことだった。
一度タったら二度三度! と言うくらいに俺の息子さんは元気がよかった。何度社内のトイレに駆け込んだかしれぬ。
そんな俺だったら坂井の今の状態を保持できない。理性だ。坂井は完全に理性の精だ。俺は涙が出るまでに坂井を尊敬の眼差しで見つめた。
途中までと言った通り、途中までになった俺はなんだか物足りなかった。