お風呂であんなこと
母に手伝えと言われたが、まずなにからしていいかわからない。
キョドキョドしていたら、母から野菜を切れと怒られた。言われた通り野菜を切ろうとするが、手元がおぼつかない。
「遅い!なにしてるの!」
母が怒る。
「ちょ。ちょっと待ってよ……」
俺の言い訳も言い訳にならないうちに、また怒られる。
「そうじゃないでしょ!切り方おかしいわよ?!」
仕方ないじゃん、料理なんて調理実習以外にやったことないんだから……
母が、
「今日はあんた朝からもおかしかったわよね?どうかあるの?」
「い、いや、別に……それよりこれ、どうやって切るの?」
とニンジンを差し出した。
夕食時。
妹が変な目で睨んでくる。俺は無視しておかわりを頼んだ。
「めずらしいのね、ユウがおかわりなんて」
母は言いながらご飯をついでくる。
「俺は基本ご飯党だからな」
思わず言った一言に、周りが止まった。
「俺……?」
「あ、ごめん、あたし」
言い直したけれど遅かった。母は
「俺なんていう子に育てた覚えはないけど?」
妹もこちらを凝視してくる。
「ごめん、ごめん、今、友達の間で『俺』って言うの流行ってて……」
なんとかごまかしたけど、母の顔は笑っていなかった。
部屋に戻ると退屈で、いつもなにして過ごしていたのかな、と思う。
とりあえず勉強はしないとね……
始めて20分で根をあげる。こんなに難しいのなんて一人じゃ無理だぁ。
「ただいま」
親父が帰って来たらしい。
何か階下から揉めてる声がする。ドアを開けて聞き耳を立ててみると、どうやらビールが冷えてないことに親父がブーブー言っているらしい。
俺のせいか……
妹が階下からのぼってくる。
「おねーちゃんが飲んだから、パパ怒ってるんだよ! 知らないからね!」
そう言って部屋へ入っていった。
知らないからね!って言われても俺も知らんがな!!
俺は部屋に戻って何かないかな、と物色する。
あ、漫画だ。少女漫画だけど、この際どーでもいいか、と思い読み始める。
意外と面白い。それは、とある有名校に入った主人公がいじめにあい、やがていじめていた男の子と恋におちる話だ。なかなかどうして、息を飲む展開。夢中になって読んでいたら、10時をとっくに過ぎていた。
「早くお風呂に入りなさい!」
母が言う。
「はーい」
と返事して、俺は階下に降りた。
そして、母に
「お風呂場どこ?」
と聞いた。
母は面食らったような顔をすると、
「そっちの左の方だけど」
と言う。
「あー、ありがと」
俺はそういうと、パジャマと下着を持って風呂場へ入った。
そして、改めて自分の身体をまじまじと見た。
エロい……ものすごくエロいよ!
ものは試しで、いつもしてみたかったことをしてみる。よくエロ本なんかで見る、あれだ、あれ。
気持ちよくなるのかなーと期待したが、全くそんなこともなく、残念な結果に……
まあ、そんなもんなのかな。やっぱりエロ本の世界なんて所詮は男子の妄想でしかないのさ。
俺は風呂に入り、丁寧に身体を洗う。
そして気づいたのだが、シャンプーが3つある。なぜシャンプーが三種類もあるの?
とりあえず適当に使ってみる。
髪が長いから、コンディショナーもしなきゃな。あ、トリートメントもある。やっとくか。
女子の風呂が長い理由がわかった気がする。
ま、最も、俺は女子の風呂の時間など実際に見たことはないけどね!
ゆっくり湯船につかると、今日1日の疲れがとれていく感じがする。
風呂からあがってパジャマを着ると髪を乾かす。
乾かしている途中で妹がやってきた。
「私、入ろうっと」
そしておもむろに服を脱ぎ出す。俺は鏡越しにその姿を見つめていた。
いや、エロすぎるだろ、中学生相手でも、充分。
妹はふと気づいたように俺の髪を匂うと、
「おねーちゃん、私のシャンプー使ったでしょ!」
と怒り出した。
シャンプーなんてどれでも一緒だろ?と思う俺に天誅が下ったのはいうまでもなかった。