ファースト
期末テスト。
それはどの学生にも平等に降りかかる呪いの時間。
俺も例外なく期末テストなう、だ。
俺は元々は成績はまあまあだったらしい。ところが、ある朝目覚めて俺になったとたんに成績は下がり始め、今やじり貧だ。
どこでどう間違えたんだ、俺は。仮にも三流だが大学入試も済ませたはずの俺。習っていることは昔と変わらないはずなのに、頭に入ってこない。
全然、わからない。
入試からもう二十年近く経っているからかな?逆に昔より頭が固くなってる気がする。
理解しようとしても理解できず、暗記しようとすると脳が拒否る感じだ。
だから、成績優秀な坂井兄弟は俺からすると神な存在だ。
双子だからなのか、成績はいつもトップクラスで競り合っている。
帰り道、送ってくれている坂井に俺は尋ねる。
「どうやったらそんなに頭がよくなれるの?」
坂井は答える。
「毎日帰ってから二時くらいまで勉強してるからじゃないのかな」
ひぇっ、二時くらいって、俺超ガン寝しちゃってるよ。
期末テストの週は塾は休みなので、こうして帰り道にゆっくり送ってもらえる。いつもは塾からの帰りだからドタバタして送ってもらうので、なんだか新鮮だ。
そんなことを考えていると、ふと坂井が足を止めた。
「?」
俺も足を止める。
「どしたの?」
と聞くと、
「いや、いい。なんでもない……」
と言ってまた足を進めて……止める。
「? なんなの?」
「いや、ちょっと……」
「なんなのかはっきり言ってくれないとわからないよ!」
と言うと、キョドりながら答えた。
「ユウって……その……経験はあるの?」
「なっ……!」
俺の顔はボフンと赤くなる。
「そ、そんなのあるわけないでしょ!……多分」
多分、の意味を理解している坂井は続ける。
「だったら、……き、キスとかも初めてなのかな? 俺で」
さらに赤くなった俺はボフンボフン持っていた体操着の袋で坂井を叩いた。
「あったり前でしょ!?」
しかも、ちゃっかり「俺で」と言ったのを俺は聞き逃さなかった。
「俺で、ってなんなんだよ!」
「いや、キス、したいなって思って」
「え……ちょ!!」
はっきり坂井はそう言い切った。
俺はますます動揺して、挙動不審になった。
「今……してもいい?」
艶めく声で坂井が言う。
俺は、
「だ、だ、ダメでしょー!人気がありすぎるし!」
「じゃあ、人気がないところならいいんだよな」
運よくか運が悪いのか、近くにちょうどビルとビルの隙間があった。
自転車を止め、ここならいいだろう、と言う坂井。
俺は半ば強引に、その場を退去した。
理由は、「外だと誰かが見てるかもしれないから嫌」だ。
うちまで来ると、坂井はそわそわして、
「家にあがってもいい?」
と聞いてくる。
そこまでキスがしたいか、坂井よ……
俺は、
「ちょっと待ってて」
と言うと、ドアを開けて「ただいまー!」と叫んだ。
なんの反応もない。ただの屍のようだ。
そして坂井を部屋へ誘った。
坂井はキョドりながらうちへ入ってくると、スニーカーを揃えて上がり込んだ。
俺、今日、部屋片付けたっけ……なんて思いつつ部屋のドアを開けた。
今日に限って部屋は散らかっていた。
慌てて部屋を片付け始める俺。
「お茶淹れてくる」
と逃げるようにその場を去ってしまった。
部屋に戻ると、ミニタンスの上に飾ってある写真を熱心に見ている坂井がいた。
「見ないで、見ないで!」
と言い、写真たてを伏せた瞬間。
唇と唇が重なった。
「んんー!!」
抵抗する俺の努力は虚しく、強い腕力で抱き締められた。
感想は、
「き、気持ちいい……///」
だった。
すごく長い時間にも感じたし、一瞬のような感じもした。
初めてのキスは歯みがき粉の味がした。




