表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/71

原因

 次の日。

シンナーで消した机はそのまま綺麗に残されていた。机に花もかざっていない。

 ぐちゃぐちゃに落書きされた上履きにも画ビョウが入っておらず、一見いじめは収まったかに見えた。


 しかし、それは表面上の話だった。

俺は休み時間、クラスの女子に連れられてトイレに行く。

すると、そこには主犯格と思われる女子が一人、俺が来るのを待ち続けていた。

 彼女の名前は飯田(いいだ)

呼び出しをかけてきた子が一人と、残り四人。

合計六人を相手に、俺はなすすべもなかった。

飯田が合図をして、俺は頭ごと便器に突っ込まれる。

「なんでこんなことするんだよ!?」

俺は頭を突っ込まれながら叫んだ。

「なんでって、ねえ?」

佐藤が言う。

「なんでって、あんたが悪いんでしょ」

飯田が言う。

「俺が何をしたって言うんだ!?」

顔をびしょ濡れにしながら更に俺が叫ぶ。

「他人のもの盗っておいて、いまさらぶりっ子もないでしょ」

飯田が言う。

「他人のものって?」

「まだしらばっくれるつもりなの?」

「俺は何も盗っちゃいない!」

「坂井くんに手ぇだしたんでしょ?あんた」

「はぁ?言いがかりも甚だしい!手なんて出してねえよっ!」

「あら。じゃあどうして坂井くんがあんたの写真なんて持っているのかしら?」

俺はびしょ濡れになったまま答える。

「そんなもん、知ったことか!」

「あんた、あたしと坂井くんが仲いいから嫉妬してたんじゃないの?」

くすくす笑い。

飯田は勘違いしているようだ……

「何勘違いしてんだよ?俺は何もしちゃいねぇよ!」

 そこで休み時間が終了となり、飯田たちは消えていった。俺は頭から水をかぶされた状態だったから、保健室へ行った。

 保健の先生が心配していろいろ聞いてきた。俺は素直にそれに対して答えた。

「飯田さんたちには事情を聞く必要がありそうね……」

「待ってください。先生が今動くと、チクったからって余計に酷いことされるかもしれません」

「じゃあ、今日のところは黙っておきますね。ただ、担任の先生には私から報告させていただきます」

「はい、よろしくお願いします」

俺はとりあえずあらいざらい吐き出したことで落ち着いた。


 問題点は坂井にある……

それだけははっきりした。



 次の休み時間、俺は坂井に食ってかかっていた。

「お前が写真持っているって言われたぞ!」

「言われたって、誰に?」

「それは……お前……言えないけど」

「俺が写真を持っていたら、何か悪いのか?」

「そういう訳じゃないけど……」

「じゃ、その話はもうおしまいな。」

坂井に言いくるめられて結局何もできなかった。


 次の休み時間、俺は飯田の席に行く。

「坂井が写真持っていると何が悪いのかって聞き返されたよ」

佐藤が庇うように言い出す。

「坂井くんと飯田さんはね、あと少しで付き合うところだったんだよ!それをあんたが横から盗んでいくから、こんなことになったんだよ!」


 俺は開いた口が塞がらなかった。

「――つまりはその嫉妬から俺を狙った、と?」

「嫉妬なんかじゃないわよ!」

飯田が赤い顔で反論してきたが、論述になっていない。

「だいたい、俺、俺、って何言ってんのよ」

「あぁ、これは私の癖で」

「とにかく、もう坂井くんにつきまとわないで!」

最後の方は雄叫びに近かった。クラスがしーんと静まり返る。


 最初にその沈黙を破ったのは、坂井だった。


「お前ら、何言ってんの? 俺は飯田と付き合うとか、全く思ってねーし」

俺の頭をぽん、と叩いて、

「そんな理由でこいついじめたん?」

まだ髪は濡れていた。


「いじめてなんか……っ」

「お前ら、やることが陰険なんだよ!俺に用があるなら、正々堂々と俺にかかってこいよ!」

 普段大人しい坂井とは全く違っていた。

 俺は頭に置かれた手にポッとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ