松永
今日の下着はどれにしよっかなぁ〜なんて悩むことにも慣れて、日替わりで可愛い下着を身につける日々が続く。
あれから二回目の生理もこなして、もうすっかり女に慣れた感じがした。
まだエッチなこととかはピンとこないけど、いつかはそういう日も来るのだろう。それを考えると頭から湯気が出そうになるが、それはいたしかたないだろう。
俺は好きで童貞でいるつもりだった。それをあげるときは一世一代、漢の勝負をするときだと思っていたからだ。そして勝負の日はこないまま終了した俺の運命。
でもいいんだ。女の子になって、女の子だけの秘密も覗けたしね。今はまだ、彼氏とかもピンとこない。ミキちゃんとただ過ごせればいい。それ以外もそれ以上もなかった。
カラオケに一緒に行ったというのに、相変わらず坂井の反応は冷たい。なのに、やっぱりこっちを見てくる。なんなんだよ!!
ミキちゃんにそれを言ってもニヤニヤしてるだけで何も言ってくれなかった。
松永は俺に話しかけてくるようになった。
男同士、こうして話すのも悪くないな、なんて思えてくる。
男でいたときよりはるかに明るい未来が俺をまっているようだ。
夏休みに女子から女へ脱皮した子も少なくはない。必然的にそういう話になりやすい。
百合子はもう女だ。それは周りの人間もよく知っている。だから百合子サイドの人間はこの夏休みに急ぎ足でしちゃった子も多いようだった。
ミキちゃんもそういう話題を振られることが多くなり、少し居心地が悪いようだった。
瑞季サイドの人間は至ってそんなこともなく、みんなマイペースな感じだったから、ミキちゃんをできるだけ瑞季サイドにつけるようにフォローしていた。
そんな折り、ミキちゃんが話があると言ってきた。
何の話だろうかと思ったら、なんとミキちゃんは松永と付き合うことに決めたという。
あのカラオケはその前ふりだったのだ。
だから、帰りは一緒に帰れないと言う。それは仕方がないことだけど、何で事後報告なの?ミキちゃん……
松永だったら、ミキちゃんの横にいてもなんだか許せる気がした。クラスでの人気も高い方だし、なんといってもこの間のカラオケでの紳士的な態度が決まっていた。ミキちゃんを守る、騎士のようなイメージだ。俺も松永なら間違いはないだろうと、自分の恋心を抑える決心をした。
そういえば、前に似たような気持ちになったことがあったな……
小学二年生のころだったが、俺は担任の女教師に密かな恋心を抱いていた。たかが小学二年生で、と思わないでほしい。小学生にも恋する心はある。
その先生が、程なくして隣の教室の教師と結婚してしまったのだ。そして先生は教師を辞め、家庭に入ってしまったのだ。
俺は正直、悔しくてたまらなかった。しかし、隣の教室の教師は非の打ち所がないほどよく出来た人だった。体育も教えかたも上手く、ピアノも弾け、歌も上手かった。
俺は悔しいけど、先生の幸せを遠くから見守るしかなかった。
その時の感情によく似ていた。
俺はミキちゃんに一体何を求めていたんだろう?愛情?友情?
その二つともが欲しかった。
しかし、俺は今は女だ。愛情を求めても応えてくれる人のほうが少ないだろう。
ならば、この友情を死ぬまで全うしようではないか!!
俺は後ろからミキちゃんに近づくと、その巨乳をこの手で揉みしだいた。これからは松永のものになるであろう、巨乳との別れの儀式だった。
ミキちゃんにはしこたま怒られたが、マシュマロよりも柔らかく、弾力のあるおっ○いは、その瞬間だけはまさに俺のものだった。
俺だけの、ものだった。