お泊まり
夏休みも残すところあとわずか。
今年は海にもいけなかったなぁ、と俺はため息をつく。
確かに、前世の俺はいつもわりとひとりぼっちだったから、海に行くこともそうそうあったわけではないが、中学の頃一度だけ、友達と海に行ったことがあった。
海に行っても女の子と仲良くするわけでもなく、友達とふざけあうでもなく、ただただ波間に立っていただけだったが、あのときは何か起きるんじゃないかって、いい意味でドキドキした。結局何も起こらずに終わったんだけど、いい思い出になっている。
今年は課外、課外、課外、で終わりそうだな、と思っていた。
しかし、今年は違った。
ミキちゃんが家に泊まりに来ないかと誘ってくれたのだ。
またしても、俺は有頂天になった。
ミキちゃんと一夜を共にする……それだけで大興奮だ。
あまり喜びすぎてミキちゃんからなだめすかされたが……
お泊まりは今週の土曜から日曜にかけて。課外のない日をチョイスした。
ミキちゃんに、お泊まりには何を持っていけばいいかとしつこく何度も尋ねる。ミキちゃんはその度に着替え以外は何もいらないよ、と返事をくれた。
お泊まり当日。
朝から気持ちいい晴れ空。ミキちゃんの家へ荷物を置きに行き、そのまま街をぶらぶらする。プリクラも何枚か撮った。俺はプリクラなんて初めての経験だったので、なんとなく堅い笑顔になってしまったのは仕方がない。
三枚目くらいになると余裕がでてきて、いろいろなポーズを決めれるようになった。
落書きコーナーで落書きする。永遠に友達、とか書いたりする。俺としては友達から発展したかったりするので、『永遠に』はいらなかったりするのだが、隣で楽しく落書きをしているミキちゃんを見ると、ふと温かい気持ちになって、それでもいいかな……と思ったりもした。
そのあとはカラオケに行った。
困ったのはこの時だ。カラオケ自体初体験な上に、俺はアニソンか電波な歌しかわからない。
それをミキちゃんに言うと、楽しければ何でも大丈夫だよと返事がくる。
よかった……俺は惜し気もなくアニソンを大熱唱した。
あんまりアニソンばっかりじゃ悪いので、ラークアンシエルのよく知っている曲も歌った。これももちろんアニソンではあったけど。
ミキちゃんはかわいい系で、キャリーパムパムとかYUKIIとかを歌っていた。なんてかわゆすな歌声なんだろう!俺はまた感動した。
カラオケってなにが楽しいんだろうと思っていた。
会社の先輩たちに誘われたことはあったけど、今までのらりくらりとかわしてきた。しかし、こんなに楽しいものなら行っておけばよかったかな?と思うほどミキちゃんとのカラオケは楽しかった。
帰る前におしゃれな喫茶店でお茶して帰った。今はカフェって言うんだっけ?
こんなおしゃれなところは、一生俺には縁がないところだと思っていただけに、感激もひとしおだった。
カフェでは恋愛論になった。
俺は微妙に話をそらしたが、ガールズトークにはつきものらしく、好みのタイプを聞かれた。
「うーん、可愛い感じの人かな」
と答えた。間違いではない。正直な気持ちだ。ミキちゃんの好みは、優しい人。俺はその点はクリアかな?
その夜帰ってからもそのトークは続き、あーでもない、こうでもない、と話が尽きることがなさそうだった。
ミキちゃんにお風呂一緒に入ろう、と誘うと、
「いいね!」
と乗ってきた。
「でも、うちのお風呂狭いからな……」
と言うミキちゃんに
「交代で洗えばいいじゃない」
と言ってねじ伏せた。
ミキちゃんの胸は生で見るとかなりでかかった。俺の三倍は軽くあるね、あれは。
あんまり身体を見つめるから、ミキちゃんに叱られた。うわぁん。でも、生で見れたからいいんだ!
俺は少し興奮気味だった。