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失恋

 ミキちゃんは相変わらず朝迎えに来てくれる。

ただ、帰りは今まで通りとはいかず、佐々木と帰るようだ。うーん、佐々木め。俺だってミキちゃんと一緒に帰りたい……


 ミキちゃんに毎日朝から佐々木とどうなったか尋ねるのが日常になってしまった。


 ミキちゃんは最初のころは照れて何も話さなかったのだが、最近は手を繋いで帰っただの、キス寸前までいっただの、俺が諦めるのを待っているかのように傷をえぐってくる。もちろんミキちゃんは俺が本気でミキちゃんを好きだろうとは思っていない。だから、ほんのガールズトークの一環として俺に話をしてくる。聞きたいのか、聞きたくないのかわからなくなる俺。


 さすがにキス寸前までいったと言ったときは止めたが。


 ミキちゃんは佐々木とはまだ付き合ってはいないことになっている。

まずは佐々木くんを知ってから、ミキちゃんはそう言っていた。

だが、キス寸前までいったというのは、付き合ってもいない男女にあるまじき行為だと俺は思う。だから止めたのだけれど、それからミキちゃんとの間になんだか溝ができてしまった。

朝は一緒に行くけれど、微妙な距離感で会話がない。


 俺はとうとう耐えられずに、

「朝も一緒に行かなくてもいい」

と言ってしまった。俺の中では、ミキちゃんが「そんなこと言わないで」と言って丸く収まるはずだったのだが、ミキちゃんは意外な態度を見せた。

「そう、ユウが言うなら」

たったそれだけしか言わず、朝も別行動になってしまった。当然、教室でも別行動。

 いつしか俺は瑞季たちと一緒にいるようになった。


 瑞季といると気を使わずにすんだ。瑞季自身がさばさばとした性格で自己主張があまり強くないからだろう。課外のあと、みんなであんみつというのも定番化してくる。


 そんなある日のことだった。


 珍しくミキちゃんが俺の席までやって来た。

そして、こう言った。

「私、佐々木くんとは付き合わないことに決めたよ」

それだけ言うとミキちゃんは席に戻っていって、課外の授業が始まった。

授業中、俺はずっとそわそわしていた。


 ミキちゃんが佐々木と付き合わないとして、俺に報告してきたってことは、また以前のように仲良くできるのかな?と期待する。


 休み時間になって、ミキちゃんの席へ行くと、聞いた。

「ミキちゃん、付き合わないって、どういうこと?」

「それは帰りに話すわ」


 今日は一緒に帰れる!!


 俺は有頂天になった。





 帰り道、何があったのかとミキちゃんに問う。

すると、ミキちゃんはため息をついてこう言った。

「二股をかけられてたみたいで」

「ふ、二股?!」

「うん、どっちかが落ちれば振るつもりだったみたい」

「相手は?」

「信愛女子高校の生徒みたい」

「なんでそれがわかったの?」

「……百合子がね、見たんだって」

「百合子が?」

「その女子高生とキスしてるところをね」

「き、キスぅ?!」

「それで問い詰めて聞いてくれたんだって」

「それでわかったんだ」

「私、いっとき男はもうこりごり。ユウといつもみたいに過ごしてるほうが何倍も楽しいよ」

 それと比較されても……と思ったが、ミキちゃんがまた戻ってきてくれたことに、ただただ感謝するばかりだった。


 俺は再びミキちゃんにべったりな生活に戻った。

瑞季たちともそこそこ仲良くしていたが、ミキちゃんが百合子を恩人だと称えるので、百合子たちとも仲良くしなきゃならなくて少し大変だった。


 そうそう、人気投票は、結局二人同票で、どちらが勝ちという結果にはならなかった。

 二人ともすっかり以前のように落ち着いた様子でなによりだった。

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