人気投票
投票日は日に日に近づいてくる。
ビビらなくても、俺に票が入るわけでもないんだから平気だ。
百合子と瑞季はやる気満々。百合子なんて最近いつもつけていたつけまを、わざわざ他の種類に変えたという話だ。瑞季も最近余計なほど面倒見がいい。
ほとんどの票がこの二人に入るとして、ミキちゃんにいれてくれる子は俺以外に何人くらいいるだろうか。
ミキちゃんの人気があってほしい、けれども人気が出ると不安。
そんなアンバランスなバランスで俺は日々をすごしている。
ナプキンの使い方も覚えたし、あとはこの腹痛と腰痛さえなんとかなれば、俺も元気か出るんだが、腹の奥から響くようなこの鈍痛には慣れそうにもなかった。
ほかにタンポンというものもあるらしいが、上級者向けのようなので、手出しはしないことにした。
体育の水泳は見学。
日焼け止めも塗って、すっかり女子力がアップした気分だ。
だが、体育を見学していると、いかにも『私は生理ですよー』と言っているみたいで恥ずかしかった。
俺は高校のとき、そんなの気にしたことなんてなかったんだから、男子もそんなこと気にしてないはず。と思ったら、同じクラスの坂井という男子と目が合った。って、思い切りガン見かよ!?
目をそらしたいけど、そらすことができない。坂井も同じ様子だ。
だ、だ、誰か来てくれ……
そんなとき、ふいに同じ見学だった瑞季に声をかけられた。
「ユウ」
「ふぇいっ?」
あ、今、完全に変な返事になってた。
口を手でふさぎながら、瑞季の方を見た。
「坂井さ、絶対ユウのこと見てるよね」
「ええっ! わかんなかったけど」
思わず誤魔化してしまった。
けど、坂井は絶対俺を見てた。やっぱり生理なんだとか思われてたのかな?あー、ヤダヤダ。女子ってめんどくせえ。
そんな風にして一週間はあっという間もなくすぎていった。
投票日。
女子の手作りの投票ボックスに、みんなが一票ずつ札を入れていく。俺はもちろん、ダントツでミキちゃんに入れた。
開票――
百合子と瑞季がやはり大本命のようだ。
ちらほら他の女子の名前もあがる。
そしてミキちゃんに一票。これは俺の分だろう。
ところが、そのあと続いてきた名前が、
ユウ
だった。
誰が票をいれたのかわからないが、俺に投票するとは、なかなかいい趣味をしている。
続く票にもユウ。
結果、ミキちゃんに二票、俺に五票も入ってしまった。
「ユウ自信があったんでしょ?かーわいそっ」
「五票が男子とは限らないしねっ」
一部の女子が嫌味を言ってきたが、気にしない。
問題はミキちゃんに入ったあと一票だ。
誰だ、入れた奴ぁ!
女子である可能性も否めなかったが、投票後、票を見せてもらえることになった。
文字で男子か女子がある程度判別がつくはずだ。
見せてもらった結果、男子だろうということがわかった。
ライバル出現か!
俺の心は一気に嫉妬の方向へ傾いた。なぜなら、男子であれば付き合うことも可能だからだ。
女子同士仲良くしても、彼氏には勝てないと言うじゃないか!もちろんこのまま、仲良しの関係ではいたい。だが、一歩踏み出したいのも事実だ。男子であれば軽く踏み越えてしまうであろうその壁に、まさに俺はぶち当たることになった。
女子同士……エロい本でそういうの見たことはあるけど、実際に想像するとえげつない。
ならば、このまま、親友の座に収まっておくべきなのかな。
俺は焦っていた。
夏休みが、もう、すぐそこまでやって来ていた――