ナプキン
ミキちゃんは男子の間では人気があるのかな?少し気になってきた。
そりゃそうだよね、好きな女の子のことだもん、気にならないほうがおかしい。
でも、男子に面と向かって聞くことはできない。
……と思ったのだが、作戦変更といこうじゃないか、ハニー。
男子に面と向かっては聞けないが、投票させて様子を見ればいいんだ!
俺は投票の中心になっている男子に話しかける。
男子の方も俺が話しかけてくるとは思っていなかったらしく、ちょっとひいていた。
が、俺が
「他の女子も混ぜて投票してほしいんだが」
というと、納得してくれて、その方向でいくことになった。
そのことが女子に知れわたったのはその日の昼休みだ。
「ええっ!私たちも?」
「うん、ユウちゃんが発案してきてね」
「どうしよう、あたし自信ない……」
自信がないないと言うのは自信がある証拠だ。その通り、投票には自分達は関係ないと思っている女子にはびくとも効かなかった。
俺はミキちゃんに何票はいるかさえ見れればそれでよかった。
ところが、一部の女子が
「ユウは自分に票がはいると思ってんじゃないの?」
「生意気ー」
とか言い出して、少し場の空気が乱れたりしたが、気にしない。
ただ、ミキちゃんに票が入っても、それが男子からのものなのか女子からのものなのかわからない、というところを見落としていた。
まぁ、いいか。ミキちゃんに票が入らなければ、俺の付け入る隙もある?かなとか思ってしまったり。
あぁ、俺はなんという男なんだ!女だけどさ。肝っ玉が小さいよね、やることがさぁ。
ミキちゃんと帰りにクレープ屋に寄った。
そのクレープは甘い甘い、ほんの少し酸っぱい青春の味がした。ストロベリー生クリームだからだけど。
◇
俺が男だったらミキちゃんをおかずにして、妄想の世界で戯れあってあんなことやこんなこともしちゃうのに、女である俺の身体は無反応だった。
やっぱり同性相手じゃ、オナれない。というか、男のときにあった、当たり前な性欲というものが皆無だ。まだ大人の女じゃないからかもしれないが……
そんなとき異変はやってきた。
トイレに行ってパンツをおろすと、茶色いシミがついている。なんか病気……?不安になる俺。
でも、パンツにシミなんて誰にも相談できない!
しかも、なんだかお腹が痛い。腰も痛い。
なんか変な病気とかじゃないのかな……
思い悩んでいると、ミキちゃんがやって来た。
「ユウ、顔色悪いけど、大丈夫?」
「あぁ……うん……ちょっとね……」
「なんかあるんだったら、相談に乗るよ?」
あぁ、ミキちゃん! 君が女神に見えるよ……!!
「実は……」
相談し始めるとしばらく聞いていたミキちゃんが、笑い飛ばした。
「それ、生理だよ!生理!」
とひそひそ声でささやいた。
「ナプキン、持ってきてるの?」
「いや、持ってない」
「じゃあ、私ので良ければ使う?」
うんうん、と俺は頷く。
バッグからポーチを取り出すミキちゃん。
それを持つと、
「行こっか」
と言って歩き出した。
後ろからあわててついていく俺。
トイレに入ってから、はい、とミキちゃんに白ピンクのそれを受けとる。
そのまま出ていこうとするミキちゃんを呼び止め、俺はこう言った。
「付け方、教えて?」
俺は必死だった。ナプキンって、CMでは見たことがあるものの、いざつけるとなると、どうしたもんかわからなかった。
ミキちゃんは
「仕方がないなぁ、じゃあ教えるね」
と言い、説明し始めた。
「これはこうやって、ショーツにつけて、わかる?」
「う、うん、なんとか」
「それで、この羽をこうして折ってショーツからずれないように貼り合わせるとできあがり。」
おぉー、そういう仕組みなのか!画期的だな!
俺が個室に入っている間、ミキちゃんは待っていてくれた。
女子としての第二歩目を歩んだ気がした。




