国外予科練訓練
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――アメリカ合衆国 ハワイ ホノルル
日系人が多いハワイと聞いて英語は無意味だったのかもしれない。
ホノルル国際空港のタクシー前に来たけど、母さんが地図見て迷ってる・・?
「おーい!美貴お姉ちゃーん!」
おっ?
手を振っている女性が。
やけに銀髪で腰まである。それに顔は母さんと同じ美が浮ぶねえ。おまけに優しそうな垂れ目か・・。
「あ、美都ー」
母さんに手を引っ張られるまま美都とか言う女の人の所に・・。
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どうやら美都さんと言う人は母さんの妹のようだった。
勝手に抱きつかれた時「キャー!可愛い!この坊主頭最高!」と言ってずっと撫でられっぱなしで助手席座り。
屋根着きジープで疾走で窓から風が入り込んで汗を冷やしてくれた。
「1ヶ月、国外予科練で技術を身に着けるなんて、帝国軍もやるねー」
「ジャップって言われても日本人は英語わかんないから笑っちゃうだけなんだよ」
と適当に答えていくと「もー英語もしっかりやらないと駄目だよー?」と母さんにぽんぽんと頭を乗せられて
楽しそうに笑った。
「家は真珠湾の近くだから海水浴も楽しめるよ。あ、でも家に帰ったら私とお姉ちゃんでちょっと出かけるからさ。実弾射撃は
私のパパさんに頼めばいつでもいけるよ?」
おお・・実弾射撃は一回やってみたかった。
普段古いライフル銃の練習なんて飽き飽きしてたからこれは期待出来るかもしれないぞ!
と心の中でグッ!と腕を曲げた。
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――美都の豪邸
うわ、デカ・・。
椰子の木に囲まれていて回りは豪邸住宅?
道路を渡れば真珠湾はすぐそこ。
倉庫は二つ、庭は十分広く野外の食事も出来そうで、プールもあるとな・・。
白く清潔感ある壁に庭にパラソルか。
「はーい、適当に入ってって」
玄関から入って靴を脱いでしっかり整えて、荷物は・・、
「荷物は玄関においてね。私が全部やるから」
と玄関にバッグを置くと俺と同じ坊主頭で特に怖くない、若い男と目があった。
「君が翔一君?僕はブカって呼んで」
「は、はぁ」
日本語ぺらぺらなんですね。
そのまま隣の部屋に入ると、孤独に取り残された俺がここにいた。
仕方ないから庭を借りて自主訓練しようかな。
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庭を借りて銃剣訓練。
コンパクトで所謂、置き傘を参考にして作られたものでボタン一つでプラスチック製の銃剣が出来上がる。
頭で人間を仮想して突く様に・・。
右手で銃把を握り、左手で被筒を握る。
「せいや!」
腰と腕と一緒に前に突き出した。
普通に突くより腰、腕を一緒に出した方がより良く届くからだ。
次は腹をイメージし・・、
「てぇ!」
と、これを何回もやり銃剣技術を重ね重ねやっていく。白兵戦は帝国軍がトップだからだ。
刀にしろ銃剣やナイフ、槍や近接技等。
その変わり武器は質が悪い良いの差が激しく、世界には輝かない。
しかしハワイは暑い・・。沖縄みたいだ。
ジリジリと焼ける様に肌が暑い。
「翔一君、悪いけど娘のお迎え出来るかな?夕暮れになる前に・・、御願い出来るかな?」
到着して5分過ぎにまさかのお迎え任務。
だけど人の事を断るのは失礼だからここは受け入れよう。
「分かりました。場所はどこでしょうか?」
「その前にバイクとか乗れる?」
バイクか・・。
高等予科練1年生の時、陸軍の友人と海軍の友人数十人で夜間の道路ぶっ放しで爆走した時、事故った思いでが
あったなあ。
こっぴどく母さんに怒られ親父は腹抱えて笑ってたっけ。
「ええ乗れます」
「悪いね。急に言っちゃって。玄関にバイク置くからね」
そう言えば空も赤くなってきている。
プラスチック製の銃剣を収めて玄関に向かう事にした。
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サイドカー付きバイクか。ロマンを感じる。
ドイツ製のBMWで購入したものらしい。
バイク自体趣味なのだろうか。
「それじゃあよろしく。仕事があるから」
と言って私服姿のまま何処かへ行ってしまう。
どうやら娘と言う名の"美夜"って人は真珠湾近くのカジノで働いていてバニーガールの仕事をしているとか。
て言うかカジノって日本で言う、サイコロ転がす遊んで賭け合いをする場なのだろうか?
まあとりあえず行ってみよう。
ハンドルバーを前に回しバイクはゆっくり動く。
豪邸住宅を抜け、車が殆ど少ない道路の脇には、まだ遊んでいる人が沢山いて波乗りを楽しんでいる人もまだまだいた。
爆音を鳴らして風を感じ取りながら疾走する。