同じ人を好きになっただけ
好きな人がいる、同じクラスの如月司君。
私は陰キャなので用事以外で話したことは勿論ない。
司君は誰にでも好かれるタイプだ、明るくて、ちょっとした事でも気遣いができて、自分がモテるなんて思ってない。
最高じゃん。
だからいつ司君に彼女が出来てもおかしくないと思っていた。
よく帰りに立ち寄るレンタルショップ、私の目当てはゲーム販売コーナー、特に最近は乙女ゲームにどはまりしている。
今日も一通りゲームコーナーを覗いていると、司君にそっくりなキャラが登場する乙女ゲームを発見した。
私は後ろの紹介文を興奮しながら見る、司君似の彼の名前はなんと司!
メイン攻略キャラの一人だ、しかも中古だから値段も安い。
即レジへ持って行って購入した。
家に帰って着替えもそこそこに、ゲームをプレイする。
の司君似の彼が動く姿を見て釘付けになった、思っていた以上に司君みがある。
ドキドキしながらチュートリアルの後、司君を選択する。
最初は対立している二人という設定のようだ、少しやんちゃな司君は委員長の私を煙たがっている。
私は構わずぐいぐいと司君に真面目になるよう説得する。
少しずつ、本当に少しづつ、距離が縮まるという設定のようだ。
いつの間にか没頭していて、ママがドアを開けて「さっきから晩御飯って言ってるでしょう!」
と怒られた。
ご飯を食べてお風呂に入ったら続きをプレイする。
気の所為かさっきより、更に司君に似ている気がする、微妙にだけど。
画面上にあるハートが%になると攻略成功らしい、今は%まだまだだ。
結局その日は夜遅くまでプレイした。
翌日は欠伸が止まらなかった、とにかく眠たい、でも司くんを攻略するために頑張らなきゃ。
昨日は%まで好感度が上がった、我ながら頑張った。
欠伸を噛み殺していると、司君が登校してきた、何故かこちらに近づいてくる。
まあ気のせいだろうけど、と思っていると司君が「白石おはよう」
と私の目を見て挨拶してくれたんだ、嘘みたい!なんで?なんで?
と焦りながらも「おはよう」とできるだけの笑顔で挨拶した、あくまでできる限りだけど、陰キャだし。
それにしても嬉しかった、一生の思い出になるかも。
今日は全然授業が身に入らなかった、ゲームの司くんも現実の司君もかっこよすぎる。
家に帰ったら早速ゲームをする。
どうもこのゲームは%を超えると攻略が難しくなっていくようだ。
スマホで調べると人を攻略しながら、他のキャラの攻略をする人も多いようだ。
起動するとなんだか昨日よりもさらに、司君に似ている気がする、アニメ風の絵なのに、私の願望のせいかもだけど。
今日は%までしかあげれなかった、また夜中までプレイしていたのに、突然難しくなるんだもん。
次の日も寝不足で学校に行った、司君はもう来ていた私が教室に入ったのを確認したように、司君がこっちに来る。
「白石今日昼飯誰かと食う?」
と聞いてきたので、きょどきょどしながら「え?ううん、人だけど」
と言うと、白石くんは右の瞼をピクピク痙攣させながら「じゃあ一緒に昼飯食わねえ?屋上で」と言った。
私は戸惑って「え?あの、えっと」
などと言っていると、白石君が「決まりな、昼休み屋上で待ち合わせ」
と言って自分の席に戻って行った。
どうやら周りには聞こえていなかったようで、私はほっとした。
昼休み相変わらず右の瞼を痙攣させた司君が屋上で待っていた。
「こっちこっち」と言われて誰もいない屋上でお弁当を開ける。
司君はパンを買ってきたようだ。
「いつもお弁当なの?」
「いつもパンなの?」
人の声が重なって思わず笑い合う。
「どうして今日は誘ってくれたの?」
と聞くと。
「白石とあんまり話したことないから、仲良くなりたいなと思って」
ずきゅううん
胸がばくばくどきどきしている。
「私あんまり話すの得意じゃないから」
「何となく見ててわかるよ、あ!その玉子焼きくれ」
司君に言われてお弁当箱を渡す。
「うまい!俺の好きなだし巻き玉子だ」
その後も人でぽつぽつと話しながら、昼休みが終わるまで一緒にいた。
今日のことは、本当に一生の宝物になりそうだ。
帰宅後今日もゲームをする。
課題は学校でやればいい。
の司君の動きが、現実の司君に重なって見える。
顔も確実に昨日より更に似ている。
私がいつも司君ばっかり見てるからかな?
今日は昼のこともあって、いつもより張り切った。
好感度%
ほぼ朝までゲームをしていたかいがあって%も好感度が上がった。
今日は学校で課題をしたら、寝よう。
そう思って教室に着くと、司君はまだ来ていなかった。
予鈴ぎりぎり前に司君が教室に入った、慌てて私の席に来ると「し、白石き、今日も昼は昨日のとこで」
と妙に吃りながら誘われた、え
私の頭の中はパニックだった。
昼休み屋上に行くと、また司君が先にいた。
近づくとここ座って、と隣を指さされる。
私は静かに隣に座った。
「し、白石、これからはで、できるだけ一緒に昼飯食わないか?」
言いながら司君は何故かびっくりした顔をしていた。
「え、はいお願いします」
「今日もた、卵焼きくれ」
私はこくこくと頷きながら、「勿論!」と言った、すると司君が「ああん」と言って口を開いた。
私はどぎまぎしながら、司君の口に卵焼きをそっと入れた。
「ひょうもうまいな」
司君がもぐもぐしながら言う。
なんだかとっても可愛い。
その日もぽつぽつと話す私の言葉を待ってくれるような司君を、素敵だなあ。
と思いながら昼休憩終わりまで、一緒に過ごした。
今日はもう眠気が限界だ、私は帰ってすぐ眠りについた。
次の日の昼休み、何故か司君は屋上に来なかった。
教室でも目も合わさなかった。
悲しかったけど、それが自然なことだよね。
と私は無理やり納得した。
今日は%台まで好感度を上げてやる!
と決心して帰宅する。
早速プレイ開始、司くんがさらに似てきている、この頃司くんのことばっかり考えていたからかな。
朝までプレイして好感度%と言う奇跡の記録を叩き出す。
翌日の学校で私は昼休みに屋上に行かなかった、
すると司君がばたばたと私の席まで走ってきて、なんで屋上に来ないの?
右腕が微かにぴくぴくするのを抑えるように反対の手で押し付ける
「右腕どうしたの?」と聞くと
「わからない、さっきからずっとこうだ、でも気にしないで、屋上に行くぞ」
と私の手を繋いで屋上まで連れてきてくれた。
私は耳まで真っ赤になって、顔が熱くて仕方なかった。
卵焼きをああんする。
司君が「ちょっと寝てもいい?」
と言うので、いいよと応えると
司くんは私の膝枕ですやすや眠ってしまった。
右腕は相変わらずぴくぴくしたままだ。
予鈴が鳴る、もう少し寝させてあげたかったけど、司君の方を揺すって起こす。
司君は「ごめん爆睡した!足痺れただろ?」
「全然大丈夫だよ?」と答えながらも立ち上がる時ふらついてしまう
「わああ!ごめん」
慌てる司君を見て笑ってしまう。
帰り道今日起こったことを反芻してみる。
幸せでたまらん!
くうううってなる。
でもそれはそれこれはこれ
家に帰るなりゲームだ、%程度なら上げるこつを掴んできた。
今日は%を狙うぞ!
と思っていたら%だった。
でも大丈夫、明日は土曜日、土日はゲームに夢中になれる。
土曜日朝からゲーム開始好感度%
日曜日好感度%
後%で攻略だ、画面の中の司君も今や完全に甘い言葉を囁いてくれるようになっていた。
月曜日、眠たい目を擦りながら学校に行く。
昼休み屋上に行くと、今日も司くんが待っていてくれた。
司君の形がなんだか薄くなって見える。
司君が「そういえば交換してなかったよな、交換しよう」
と言ってくれたので、どきどきしながら交換した。
交換する時微かに手が触れた、司君の手の温度がないような気がした。
お弁当を食べ終わると、司君の両膝ががくがくとなりはじめた、「どうしたの?」
と聞くと「分からない」
私は肩を貸し司君を保健室に連れていった。
保健の先生はとりあえず、病院に行くことを司くんに進めた。
司君のことを心配しながらも授業にもどるように言われ、教室に戻った。
その日司君は教室に戻ってこなかった。
帰宅途中司君にを送る
大丈夫?
あれから嘘みたいに治まって、今家でゲームしてた
ほんとに?よかった!
心配かけてごめんな
司君の足は治まったようで安心した。
家に帰っていよいよ最終局面だ!と好感度%を達成した。
もう司君本人にしか見えない司君が、私に告白してくれる。
「ずっと好きだったんだ、だから距離を縮めたくて色々してみたんだ、付き合ってください」
司君とそっくりな声で告白される、クッションに顔を押さえつけ「ああああああ」
と叫びながら選択肢はいを選ぶ。
ボーナスイベントの、水族館デートも堪能して幸せすぎた。
次の日学校に行くといきなり司君に呼び出された、
屋上に来て欲しいと。
まぶたが痙攣している。右腕がぴくぴくしている、そんな司君に
「あ、あの実はず、ずっと好きだったんだ。だから距離をち、縮めたくてい、色々してみたんだ、つ、付き合ってください」
「はい」
私はぎゃあああああ!と叫びたい気持ちを抑えて返事をした。
「じゃあき、今日から一緒にか、帰ってもいい?」
「もちろん」
その日は帰り道手を繋いで、色んなことを話しながら帰った。
例の乙女ゲームを起動する、完全に司君そっくりな司君。
画面な中の司君は、もう攻略したので、クリア済みになっている、もう一度スタートしても同じことしか起きない。
と思っていると画面の中の司君が「出してくれ」と言い出した
こんなシーン前はなかった。
不思議に思うと、助けてと言う。
私はなんだか怖くなって、ゲームを終わらせた。
翌日。
司君が消えていた。
教室からも司君の机すらない。
ロッカーもない。
靴箱もない。
司君の存在そのものが綺麗さっぱり消えている。
私は早退をした、ゲームを確かめるためだ。
起動すると、既に写真のような姿の司君がそこにいた。
「助けてくれ」
「出られない」
「ここはどこ?」
「助けてくれ」
「出られない」
「ここはどこ?」
私はそっと画面に触れる
「どうしてこんなことに?」
「分からない」
私はついに司君を独り占めできるようになったんだ、これで司君には私しか見えない。
私は喜色満面で画面の中の司君の輪郭をなぞった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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