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精霊ノ世紀 『奉星の大祭』  作者: 青山 樹
第一章 「始祖の民」
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第七話 「託されたもの」

 シトリは幼いころから強大な霊力を持っていた。

 その力はユヅルハにおける歴代神官の中でも群を抜いており、五歳の頃になると霊力の総量においては両親を超えていた。ユヅルハの民は、シトリなら両親と同じく優れた神官になるだろうと期待した。シトリ自身も両親のような立派な神官になることを志していた。ユヅルハと、そこで生きる人々を守るために働き、時には危険な霊獣や精霊を討伐するために戦う両親の姿は、シトリにとって憧れだった。そのため彼女は幼いころから両親の仕事を手伝い、修行に励んだ。少しでも両親の姿に近づきたかったからだ。


 両親もシトリを心から愛していた。

 当然といえば当然だろう。自分たちの子どもなのだから。

 たとえ神官にならなくてもかまわない。幸せに生きてくれればそれでいい。

 そんなありふれた思いをシトリに対して強く、そして切実に抱いていた。


 転機が訪れたのは、今から五年前のことだった。この頃、皇国全土では恐るべき病魔が蔓延し、多くの命を奪っていた。シトリと両親も病魔に脅かされ、両親は命を落とした。シトリは生死の境をさまよった後、かろうじて一命は取り留めたが、病魔による後遺症のためか以前のように霊力を発揮することができなくなってしまった。


 ユヅルハも危機に瀕した。シトリの両親が死んだことで、本家の血筋の神官が不在となってしまったからだ。分家の神官はユヅルハの各地にいるが、コロンは誰一人として後継の神官に認めなかった。コロンは神官と認めた者にあわせて姿を変えるのだが、その姿はシトリの両親が健在だった時のものと何も変わらなかった。

 正式な神官が不在のまま、封官長であるミハラと分家の神官たちは当面の危機に対処しなければならなかった。神官の職務は分家の神官たちが担当することとなり、シトリは血縁関係が最も近い分家で養育されることになった。


 両親を失い、力も以前のように使えなくなったシトリだが、神官になることはあきらめなかった。以前にもまして修行に取り組み、神官の職務にも心血を注いで取り組んだ。

 両親の遺志を継ぎ、両親のようにユヅルハを守る。

 それがシトリの生きる意味だった。


 シトリが十歳になり、社で成人の儀が行われた時、コロンの姿が変化した。

それは、シトリがユヅルハの神官として選ばれたことを示していた。

 これはユヅルハの民にとって朗報だった。しかし同時に、ある重大な決断を迫る報せでもあった。この時シトリは、皇都の学府への入学が決まっていた。皇都より正式な神官としての承認を得るためには、学府を卒業しなければならない。しかしコロンはシトリを神官として認めている。このままシトリが学府へ入学したら、またしても神官は不在となる。

 ミハラと分家の神官たちは連日にわたり協議を重ねた。

 神官として認められたシトリが何年もユヅルハから離れることは、深刻な危機を招く恐れがある。一方で、皇都の承認を得ないまま神官を自称すれば、反逆の罪に問われる恐れがある。こうした混乱に乗じて、近隣の封国によるユヅルハへの介入も始まった。目的は、創世の神器だ。傲慢な態度の使者が次々と訪れ、人知れず諜報員が暗躍し、あからさまな武力をちらつかせる封国も現れた。


 こうした混乱の最中に、例の異形の精霊は現れた。


 異形の精霊はユヅルハの民に危害を加えることはなかったが、ユヅルハに悪意を抱く者には容赦なく襲いかかった。分家の神官たちも対処したが、浄化することはできなかった。


 唯一、シトリだけが、異形の精霊を浄化できた。


 こうしてシトリは、ユヅルハにとって必要不可欠な存在となった。




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