完全健康人間
完全健康人間
とある国に、たいそう健康に気を遣う王様が住んでいた。この王様、子供の頃はずいぶんと体が弱く、病床に伏せがちだった。成長に伴い体が頑丈になってきて、人並の生活を送れるようになったのだが、もう二度と病気に苦しみたくないので、徹底的に体に良い生活を心がけ、自身の健康を管理していた。
ある時王様は、自分の体が本当に健康なのか気がかりになり、国中の医者に命令を出して、自分の健康診断をさせることにした。あらゆる種類の医者に、自分の体を隅々まで調べさせ、後日その結果を報告させた。
内科医「王様の内臓は、健康です」
眼科医「王様の眼は、健康です」
耳鼻科医「王様の耳と鼻は、健康です」
整形外科医「王様の骨は、健康です」
整列した医者達は、王様の体に一切の異常が無いことを、次々に報告していった。王様は日頃の努力が報われているなと、ほっと胸を撫で下ろしたのだが、医者達の中から唯一、王様の不健康を告げる者が現れた。
「大変申し上げにくいのですが、王様は不健康でございます」
「なんだと、わたしのどこが不健康なのだ。お前以外の医者は、わたしのどこにも異常は無いと申しておるぞ」
その医者は、少し困った顔をしながらこう言った。
精神科医「王様は、健康依存症。ならびに不健康恐怖症でございます。もっと体に悪い生活をされた方がよろしいかと……」
おわり