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歌姫との休日

初めての迷宮探索から、数日が経った。


幽狼の乱入。そんな問題が起きてしまえば、学院の迷宮は数ヶ月の閉鎖。


そして、ファイン、ネロ、アルビスの三人は数日間の事情聴取を受けたりと、大変であった。




「・・・よし」


そして、休日。ファインは身なりを整えて、彼が決めた待ち合わせ場所へと向かった。





「ほっ、よっ!」


木の剣と、鞘に収められた剣がぶつかり合う。


「てい!!」


よろよろと甘い剣筋。それを上手く弾く。


「はは、いいぞ。もっと腕を使うんだ、ロニー」

「わかった!」

「ロニー、変わってよ〜!次、俺の番!」

「コスタンはさっきやったじゃん!次!次俺!」


噴水の前、子供達とチャンバラをしている一人の青年。ネロ・フィーニス。軽い足取りのまま

三人の子供達に向き直る。


「なら、三人で来るか?」

「余裕ぶるなよ!」

「やってやろうぜっ」

「後で泣くなよ!」

「言うねぇ、ほら、来いっ!」



「ふふ・・・」


そんなネロを微笑ましいものを見るかのように見つめるファイン。


約束した場所に着いてみれば、ネロは子供たちと遊んでいた。


集合の時間は多分、過ぎてはいるだろうが・・・。ファインは何も言わない。


子供達に好かれてるのね。


なんて、呑気な事を考えていた。


「・・・あ、待って」

「おぉい!」

「良いとこじゃん」

「どしたの?」

「あぁ〜、今日はここまで!俺、そろそろ行くよ」


ファインに気づいたネロは、剣を腰に携えて

チャンバラの終わりを告げる。子供達は不満を

口に出しながら抗議するも、ネロは楽しげに笑った


「じゃあな〜、またやろうー!」


子供達に手を振りながら、ファインに駆け寄ってくる。今日も三つ編みは綺麗に編まれている。



「こんにちは、ファイン」

「ええ、こんにちは。ネロ」


ネロのパーカー姿。制服しか見た事がないから

少しだけ新鮮。それはネロもそうであり、いつもと違うファインの格好に驚いている。


「何でも似合うんだなぁ」

「ありがとう」


ネロは歩き出す。そして、ファインもそれについて行く。



「アルビスは残念ね・・・」

「忙しいからな、アルは」


アルビスは貴族であり、たまにだが仕事を任されることもある。


その内容をネロは知らないが、前に部屋に入った時、書類を処理している友人を思い浮かべ、お疲れ様と

心の中で合唱。


「ま、加工屋に行くだけだしな」


迷宮内で約束した、加工屋に行ってミアズマ鉱石をアクセサリーに加工する。今日はその約束を果たすために、二人は集まった。


「・・・え?」

「お?もしかして、行きたいところあった?」

「そう・・・ね〜」


特には・・・ないけれど、だからといって加工屋に行って、はい終わり解散。はちょっとだけ勿体無い気がする。



「もしあったら言ってくれ、とりあえず今は加工屋まで行くか」

「ええ、それまでに考えとくね」



どこに行こうか。足を動かし、行ってみたいところを考える。


白の国を象徴する、龍の像。


貴族達も絶賛するスイーツ屋さんとか・・・



「驚いたよ、最初ファインだってわかんなかった」

「え?あぁ、私、一応有名人だし・・・これくらいの変装はしないと」


サングラス、深々と被ったハット。風に飛ばされないよう抑えながら、ネロの前で一回転。今日はスカートではなく、パンツスタイルだから軽快な足取り。


「もし、バレちゃったら、どうしよう?」


悪戯に笑う。ちょっとした揶揄いのつもりの一言は、ネロの思考回路を奪うのに十分だった。


「あ〜、確かに。どうするか〜」


良い答え浮かばず、顎に手を当てて色々と考える。


「まぁ、逃げるよな」

「えぇ〜、余計に注目されない?」

「とは言っても・・・あ、ファイン」

「ん?」


指差す先、それは屋台であった。


「あの人の作るアイス美味しいんだ、行こう」

「わわっ」


どうやら、ネロお気に入りのアイス屋さんらしく、目をキラキラと輝かせたネロは優しく手を引っ張る。


手を繋いだまま、ネロは屋台のおじいさんに話しかけた。


「じいさん、バニラアイス一個」

「あいよ、そちらは?」

「ん〜、私は・・・」


豊富なラインナップを食い入るように見つめる。どれも捨てがたい。


メロン、ラムネ、パイナップル・・・。


数分の思考の末、ファインはイチゴのアイスに決めた。


「ほれ、毎度あり。また来なさいネロ」

「うん、いつもありがとな。ファイン、行こうか」

「わかった。おじいさん、ありがとう」


人の良いおじいさんに見送られ、ファインとネロは目的地に向かうべく、また足を動かした。




「美味しい・・・」

「だろ?いつもなら列ができるくらい人気なんだ」

「運が良かったね」


濃厚なイチゴの風味。さっぱりした酸味がまた甘さを引き立てる。確かに、これは人気が出る


「ネロ、そっちは・・・」

「ん?」


どんな感じ?そう聞こうとした時、彼の手元に

バニラアイスは存在しなかった。


「どした?」

「・・・なんでも」

「ん!?お、怒ってる?」

「ううん、別に」


食べるの速いよ・・・。


そう、心の中で悪態をつく歌姫であった。



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