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迷宮は続くよどこまでも

迷宮というのは、危険な場所ではあるが。それ以上に、胸を躍らせることばかりであった。


「宝箱だー!」


アルビスが見つけた隠し通路。その先にあった

ご褒美に目を輝かせるネロ。そして、ファイン


宝箱を開ける。その中には、見慣れぬ装飾の陶器。多分、水差しだとは思うけど。


「この材質はなにかしら?見たことがないけど」

「俺もないな・・・。迷宮博士、何かわかる?」

「さぁな。まぁ、帰って鑑定士に見せたらいいと思う。それまでは、この袋に入れておこう」


アルビスは袋の中からまた袋を取り出した。


それは、無限に物を入れることができる。マジックアイテム、万能アイテムーーー!



なんてことはない。ただの袋。戦利品は別途

この中に入れておく。



「さっきの大盾のように、しまうことは?」

「申し訳ありません。僕の収納魔法では、大盾と剣だけで容量がいっぱいになってしまって・・・」


ならば、仕方ない。そこまで万能な物があってもつまらないだけだ。袋に詰めて、ネロは立ち上がる。


「さーてと、戻るか」



三人は、来た道を戻り。順路通りに進むのであった。



しばらく道を進み



「ファイン様!!」

「はいっ!」


<焔々のグラーヴェ>


荒々しい歌声が目の前の氷結蟷螂の群れを焼き尽くす。


「すげ」

「流石だな。ファイン様も、慣れてきたようだ」

「・・・よしっ」



道中、魔物を倒しながら。



「待ってくれ、この壁・・・土じゃない」

「本当だ。・・・退いてくれ」


鞘の収まった剣を構えて、色の違う土目掛けて振り抜く。


すると、ボロボロと壁が朽ちていく。


「凄い、また宝箱があるかも?」

「行ってみようか」


アルビスの慧眼でまたもや隠し通路を発見、浮き立つ心のまま、足を動かす。


「これは・・・」

「わぁーー!!!とても綺麗ね!」


宝箱を見つけることはなかったが、ファインとアルが目を奪われる程の・・・


「湖か?」


地底湖。緑溢れ、湖は魔力でも含んでいるのだろうか、光を放っている。


「凄い、凄いわ!とても幻想的ねっ」


カメラを持っていたら、すぐにでも構えそうな勢いで目の前の景色に喜ぶファインを尻目に

アルは、地底湖に近づく。


「・・・ふむ、恐らく。<癒しの泉>だな。本で見たことがある」

「初めて見たな、よし、少し休憩しよう」


アルの確認によって飲み水だと判明すると、ネロは水を掬い上げて口に含む。


「んぐ・・・ぶほぉ!」

「ネロ!?」

「どうした!!?」


咳き込むネロを心配し、二人は近づく。喉を抑えながら、ゲホゲホと咽せている。


「っつぅ・・・。わり、飲む時鼻に入っちゃって」

「驚かせるな・・・」

「本当に大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫大丈夫・・・けほ」


喉をさすりながら、大丈夫というネロの行動を

疑問に思いながら、アルは水に口をつける。


「・・・毒はない。けれど、ファイン様、飲むのは控えた方がいいかと」

「わかったわ」

「代わりといってはなんですが、道中魔物との戦いで魔力を消費したはず、魔力水があるのでこちらを」

「ありがとう、アルビスさん」


「アル、飲み水くれ」

「ああ、待っていろ」


喉を労わりながら、ネロは水をくれと言う。アルビスはそういって、袋を漁る。


「泉の水は、口に合わなかった?」

「え、あ、ああ。やっぱ学院受給の飲み水が至高だよな」

「結構、グルメなのね・・・」


ほら、と渡された水を受け取り。三人はしばしの休憩。かなり打ち解けてきたらしく、雑談に花を咲かせる。


「迷宮って、とっても楽しい場所なのねっ」

「おおっ!わかってくれますか、ファイン様」

「はい、歌姫としての人生では・・・知ることもなかったです」


今までの人生を振り返る。


歌姫として、人々に想いを届ける。これに不満があるわけではない、むしろ、凄く・・・凄く凄く。有意義だった。これが私の生きる道!と強く思えるぐらいに


「ファイン、今回の歌詞だ」

「・・・お父様、私、自分で歌詞を書きたい」

「ダメだ、俺の言う事を聞け」

「わかり・・・ました」



誰かの書いた歌詞。それに沿って、私は歌うだけ。同じような歌を、



何度も、何度も何度も何度も何度も。



「ファインさん!どうやったら、そんなに綺麗になれるの?」

「今回の歌も良かったですっ!」

「ファイン様の歌声は、唯一のものです!どうか、私達のレーベルで」



私の想いなんて、どうでもいい。


お金を稼ぐために使われる歌姫として、私は

歌い続けた。黄金の歌姫なんて、皮肉である。



「ファイン?」

「あ、ごめんなさい・・・」


ボーッとしていたファインに心配したネロが顔を覗き込む。



「もうすぐ発とうと思いましたが、もう少し休んでいきますか?」

「ううん、大丈夫です」

「体調が悪くなったらすぐに言ってくれよ」


休憩も終わり、三人の攻略再開。



「分かれ道ね」

「アル。どっちだ?」


ランタンを掲げたアルは、それを見つめる。


「右だ」


何かの確信を得て、アルビスは歩き出す。

それに疑問を持つファイン。


「こっちが正解なの?」

「どうでしょう、ただ。左は瘴気の流れが激しかったので」

「・・・?」

「ランタンだよ。<瘴気吸いのランタン>これがあると瘴気の流れが分かるんだ」

「便利ね〜」

「しかも!その瘴気がランタンの燃料になるんだ!」


便利グッズ。蒼の国さまさまである。ファインは感嘆の声を漏らす。


「でも、どうしてランタンが瘴気を・・・?」

「・・・ふむ、ネロ。ここを」

「あいよ」


先程の様に、壁を叩く。また隠し通路!!ではなく、砕けた壁から鉱石が現れた。


「鉱石?」

「ミアズマ鉱石。これが、ファイン様の求める答えです」


淡く光る、鉱石。


確かに、よく見てみると周りに

小さな粒子が見える。


「こちらは迷宮が作り出す鉱石でして。瘴気を含むと、光を放つ面白い性質があるんです」

「へぇー!これ、持って帰っても?」

「・・・構いません、地上では使い物にはなりませんが、魔法の研究に役立つかもしれませんし、売って・・・まぁ、多少のお金にもなります」

「やった!」


ツルハシを受け取り、ファインは楽しそうに鉱石を採掘する。綺麗に取れたそれを、大事そうに袋へとしまった。



「・・・ふぅ」

「やったな」

「うんっ!」

「ははは、ファイン様が気に入ってくれて嬉しい限りです」


しかし、採れたはいいけど。少し重たい。こんなことなら、本格的な筋トレをすれば良かったと後悔する。


「ファイン」

「あ、でも」

「これぐらい屁でもないって、ん」

「・・・ありがとう、ネロ」

「気にすんなよ」


軽々と持ち運ぶ彼は、なんと頼もしいことか。

ちゃんと、鍛えないとダメだなと。今後の日常の中に、筋トレを入れる事を決めるファイン。


「アルの言った通り、魔法の研究で使うのか?」

「えっと・・・ごめん。使い道は決めてなくて

ただ面白いから欲しいなって」

「そうなのか?でも、これって売ってもあんまりだろ?」

「ああ。・・・アクセサリーに加工するというのは、どうだろう?ミアズマの鉱石は、変化という石言葉がある」

「わぁ〜!!それがいいかも!帰ったら、この国の加工店を教えてください」

「もちろんです」


宝石の様な笑みを浮かべる歌姫。ネロはそれが面白くて、つい笑ってしまった。


「あっ、わ、笑う事ないでしょ?」

「悪い悪い。それより、二人とも、そろそろ敬語やめたら?ファインも、やりづらいだろ?」

「え?え〜っと・・・正直」


前を歩くアルビスは表情こそ見えないが、絶対苦虫を噛み潰した顔をしているのだろう。

礼節を弁える貴族らしい彼のことだし


「しかし・・・」

「ダメでしょうか?」

「ほらぁ〜、ファインがこう言ってるんだぞー」


ネロの追撃。二体一となれば、アルビスの意見が通る事はないのだろう。


「はぁ・・・。わかった、改めてよろしく頼む。ファイン」

「はいっ!アルビス」

「よ〜し!!んじゃ、さっさと迷宮を攻略して、加工店に行こう!」


この攻略を通して、三人の絆はかなり深まった。そんな気がした。



まだ、迷宮探索は続く・・・。





「このランタンは誰が開発したの?」

「蒼の国のエール・パラン・アウル様だ」

「え!?第一王女様が!?」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、この地図も?」

「そっちは白の国のシャル・ヴァイス・バクナ様が作ったんだ」

「こっちは白の国の!?」

「共同開発したらしいぞ、エール様とシャル様は仲が良いからな」

「へぇ〜・・・ネロ?」

「ん?どした」

「・・・ううん、なんでもない」

「?」

「気のせい・・・かな」



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