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兄弟子との再開まで、あと3日

「……」


「……いや、だからさ、俺が目撃者なワケよ。ドラゴンのね」


「……」


オリバーは眉間に皺を寄せたまま、近衛騎士団が陣取っている宿の、それも一等上等な部屋のベッドの上でくつろいでいるノアを見下ろした。ドラゴンの目撃者がいると言われ急ぎ戻った先に、王都にいるはずの兄弟子が何故かいるのだ。意味がわからない。しかもちょっと偉そうだ。深く刻まれた眉間の皺を伸ばすように手を当てて、よし、とオリバーは顔を上げた。


「おい、誰かこいつをつまみ出」

「ストップストーーーップ!!! 冗談キツイぜオリバーちゃ〜ん」


「……ハァ…」


「あ? 今ため息ついた!? ため息ついたよね!? 傷ついたなぁ〜。ニンゲンってほんと他種族にドライっていうかさ〜」


心底嫌そうな顔のオリバーを見て、ノアはますます調子づいて軽口を続けている。リアムと違ってお調子者のノアの性格は長年の付き合いで熟知している。寡黙なオリバーにとって、勝手にお喋りしてくれる彼に救われることもある。しかし今はそれどころではない。いつまでも続きそうなノアの独壇場。それを遮ってオリバーは尋ねた。


「ところで、ドラゴンを目撃したというのは本当か」


「……ああ、見たよ」


「いつどこに現れた? どうやって消滅したかも見たのか?」


「それはそうとさ、オリバーが来てるってことはフェリクスも来てんの?」


話を逸らされたことにほんの少し苛立ちを覚えながらも、オリバーは頷いた。


「ドラゴンが出現してすぐ消えるということが立て続けに起きているらしいからな。メイサが関係しているかもしれないと考えているようだ」


「あ〜、やっぱりねぇ」


「やっぱりとは何だ?」


あっとノアは慌てて口を噤んだ。怪しい。そもそもこんな辺境に突然ノアが現れるのも怪しい。その上、今問題になっているドラゴンを目撃したという。そんな偶然がある訳がない。誰が見ても、ノアが何か関わっていることは明らかだった。


「いやっ、フェリクスもオリバーも、メイサのことになると見境いないよなって意味だよ。普通こんな辺境までよ?近衛騎士団まで率いて王太子が来るかっつー話。メイサがいなくなってからお前たち2人とも余裕なさ過ぎだし」


指摘されて、オリバーは思わず赤面した。確かに、ドラゴンの目撃情報が相次いだだけでいきなり王太子やその側近である近衛騎士団が動くことはまずない。先んじて先遣隊を出すのが通常だ。メイサの影を追ってここまで来たと思われても仕方がなかった。オリバーが反論しようと身構えた瞬間、部屋の扉が開いた。


「ノア、なんで君がここにいるんだ。理由を聞かせてもらおうか」


フェリクスが怪訝な顔をして入って来た。あまり寝ていないのか、眼の下にはクマができている。


「やぁ、フィン。ちょっと出かけたくてね。たまたま寄ったんだよ。ここは良い所だね。世界樹のエネルギーを強く感じる気がするなぁ」


芝居がかった調子でノアが答えた。エルフ族であるノアは、人間より世界樹とのリンクが強い。あながち嘘とは思えないその返答に、2人は顔を見合わせた。そしてはた、とオリバーは昼間のことを思い出した。


「世界樹、といえば、村の商店で高品質の祝福石を見ました。しかも大量に」


「こんな辺境の地で? 腕の立つギルドでもあるのか? 聞いたことはないが……。どうせドラゴンの件で数日間はいる予定だからな。調べてみるか」


話し合っている2人の背中を見ながら、ノアは頭の後ろで腕を組み伸びをし、自分にしか聞こえない程の小声でひとりごちた。


「あ〜あ、時間の問題かな。これは」

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