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メイサ大捜査線3

ドカッドカッ


 時が止まったような田舎町の昼下りの静寂を、土埃と数多の蹄の音が引き裂いた。


 路地裏からそれを見ていたメイサは、昨日のノアの言葉を否応なしに思い出していた。


ーーー近々騎士団が調査に来るだろうね。ーー


 ドラゴンが出現し始めたのはほんの数日前だ。こんなに早いなんて……と、もう一度喧騒のする方を窺い見る。


 えんじ色の軍服に映える金色の飾緒、マントには王太子紋である双頭の鷲の姿が刺繍されている。彼らは王太子直属の近衛騎士団だ。ということは、フェリクス殿下の指示なのだろう。さすがチート。光の王太子、仕事が早いなぁ。


 まさか本人が来ていることはないだろうけれど、王城に居た頃は何故かフェリクス殿下と毎日顔を合わせていたため、近衛騎士の中にも何人か顔見知りがいる。変身魔法で様相を変えているとはいえ、念のために目深にフードを被り、目的の商店へと急いだ。


「やあ、いらっしゃい。ああ、ウルスラちゃんかい」


 いかにもお人好しそうな店主さんが笑顔で迎えてくれた。


 もちろん、ウルスラというのは偽名だ。良くしていただいているのに、偽名を使っている罪悪感で胸がちくんとする。

「こんにちは、店主さん。これ今週分の祝福石です」カウンターに麻布を置くと、収まり切らなかった祝福石がゴロゴロと転がり出た。


 これまた多いね、と人好きのする笑顔の店主さんと、転がり出た石を集めていると、お店のドアが開いた。


「オヤジ、外、大変なことになってるぜ……ってウルスラ、ここにいたんだ!」


「ゲイリー、この馬鹿息子!店番サボってどこをほっつき歩いてたんだ」


「いや、美味しそうなお菓子が手に入ったからウルスラの家に届けに行ってたんだよ。すれ違っちゃったみたいだけど」


 そう言いながらゲイリーは手ごろな椅子を引き寄せ、ちゃっかりメイサの隣に陣取った。


「ごめんゲイリー、今日はなんだか騒々しいから早めに出てきてたの。いつも美味しいお菓子ありがとう。外にはまだ騎士様がいるの?」


 それとなくゲイリーに探りを入れる。うう、ゲイリーごめん。


「うん、ますます増えてきてる。噂だけど、騎士団長まで来てるって……」


「オリバー様が!?」

驚き過ぎて、思わず大声を出してしまった。


「知ってんのか?」

ゲイリーが怪訝な顔をした。店主さんも不思議そうに顔を上げた。しまった、私は他国から最近引っ越して来たことになってるんだった。


「あ……一度王都でお見かけした事があって……かっこいいからファンなんです」


 ゲイリーがショックを受けた顔をしているが、うまく取り繕えたらしい。店主さんはなるほどと苦笑していた。実際、女性たちの間には、殿下やオリバー様、大賢者ヴァン様といった、高位貴族の皆様のファンクラブが存在している。さながらアイドルだ。たしかに皆さん顔面が良い。修行がつらすぎて私にはそんな余裕はなかったけれど……。


 一瞬、ご挨拶もなく逃亡してしまった事をオリバー様にお詫びしたいと言う気持ちが芽生えた。だが、忠誠心が一際強い彼は、私を見つけた途端、大賢者様や殿下に真っ先に報告するだろう。それはまずい。大賢者様のことだから私の居場所を掴んでいるだろうけれど、ラッキーなことに今はとりあえず放置されている。公に報告されてしまえば、その意思に反して動かざるを得なくなるだろう。考えただけで恐ろしい。


「店主さん、ゲイリー、もう少しここにいてもいいですか?」


 逡巡の末、私はお店に居座る事に決めた。




▷逃げる

▶居座る


メイサちゃん居座っちゃいましたね〜。う〜ん、吉と出るか凶と出るか。

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