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メイサ大捜査線2

「おはよ〜! ノア君が来たよ〜ん」


 メイサが昨日拾ったばかりの祝福石を磨いていると、家の扉を開けて、いかにもいたずら好きそうな、大きな目を輝かせた美しい少年ーーノアが入ってきた。

 ここ異世界においてもその存在が稀有なエルフ族の彼は、私の兄弟子の一人だ。朝日に透けて飴色に輝く髪が眩しい。しかもこの美しいお顔が双子としてこの世界にあるという奇跡。ノアはリアムというもう一人の兄弟子と双子なのだ。信じられない。ノア、リアム、この世界の神様、眼福をありがとう……!


「ノア、おはよう。お茶淹れるね」


「ありがとう! 俺たち、新婚さんみたいだね♡」


 ノアの変わらない軽口に笑いながら、カップにハーブティを注いで渡す。


 大賢者様と大げんか後、この西の湖水地方に流れ着いた私は、祝福石と呼ばれるこの世界の万能エネルギー源の石を集めて商店に卸すことで生計を立てていた。

 祝福石は普通の人間が見つけることは困難らしい。草原などの自然がいっぱいある所にたくさん落ちているのだが、魔力の強い者でないと気付けない不思議な石だ。精霊と契約を結んでいる召喚士だからこその生存戦略だった。はぐれ召喚士としてモンスター退治に明け暮れても良かったが、悪さをしないモンスターまでやっつけるのは気分が乗らないし、ギルド同士の縄張り争いに巻き込まれたくない。何より目立つ活躍をすることで大賢者様や兄弟子たちに見つかりたくなかった。


 それに、王都から離れるほど、祝福石は手に入らない。人の役に立てて儲けられて最高! ここが私のブルーオーシャン! と思っていたら、やり過ぎたらしい。あっさりノアに見つかってしまった。


ノア曰く、

「この辺でやたらと祝福石が出回ってるって聞いてピンときた」

とのことで、庶民間の噂が王城に住むエリートの耳まで届くの? と驚いたものだ。さすがエルフ族。


 エルフという種族は真実を見抜くための能力に長けている。具体的には、視覚や嗅覚、聴覚などの五感がかなり鋭い。エルフから見ると、変身魔法がかかっていても真実の姿が見えるらしい。大賢者様たちに見つかるまいと、家には保護魔法を、自分自身には黒髪が目立たないよう、明るい茶髪に見える変身魔法をかけているのだが、ノア相手には意味がなかったようだ。


「メイサ、どうして急にいなくなったのさ? みんな心配してるよ。特にフェリクスとオリバーがやばいよ」


「え? 殿下とオリバー様が? なんで?」


 ノアの言うフェリクス殿下とは、この王国の第一王子だ。エルフのノアやリアムにも負けず劣らずの美形で、武芸にも政治手腕にも長けたパーフェクト人間。ついたあだ名が「光の王太子」。人望も厚く、いわゆるチートキャラというやつだろう。


 そんな殿下の側近である近衛騎士団長のオリバー様も、短髪長身で整った顔立ちと物腰の柔らかなお人柄、殿下の乳母兄弟という確かな家柄から、数多の女性を虜にする人物だ。


 ふたりとも大賢者様に幼少期から弟子入りしていて、いきなりこの世界に来た私にも優しくしてくれた。


 いや……オリバー様はお優しかったけれど、殿下は違うかも。私が生意気だから、あんまりよく思われていなさそうだった。いつも睨んでくるし……。


「メイサ、まじで言ってる? あれは睨んでるんじゃなくて見つめてたんだよ、ストーカーばりに。怖いよね。まあ、俺としてはかわいいメイサが病み王太子とかむっつり騎士に取られるよりいいから、そのままの認識でいてくれた方が好都合だよ♪ この場所も二人だけのヒミツにしておこうね♡」


 にんまりと笑みを浮かべつつ、ノアが言った。


 かわいいのはあなたです……! 美形なのにかわいいってどういうこと?! と脳内で美形神輿をワッショイワッショイ担ぎつつ、ノアがこの場所を伏せてくれている事にお礼を言った。なんだかんだ大賢者様や兄弟子たちには合わせる顔がないので、ぜひ秘密でお願いしたいのだ。


「でも」


 ふと、私は昨日の光景を思い出していた。


「ここ数日、ドラゴンがよく現れるの。こんな田舎に珍しいよね」


 ノアが、形の良い眉を少しひそめた。


「それは王城にも報告が上がってる。近々騎士団辺りが調査に来るだろうね。不思議なのが、ドラゴンは現れるだけで、毎回すぐに消えてるってことなんだよね」


「あ、それ私」


 ノアがぶふっとお茶を吹き出した。


「お世話になってるこの街の人たちが怖がらないように、見つけたらすぐ転移魔法かけて追い払ってるんだけど……。だめだった?」


「いやぁ……居場所絶対バレるじゃん……。あーあ、せっかくの新婚生活だったのになぁ」


 タオルタオル、と動揺している私に、ノアのこの言葉は届かなかった。

「光の王太子」……絶妙にあれですよね……もっとカッコいいあだ名をつけてあげたかったのですが、どうしても思いつけず、これが限界でした(笑)

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