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想起

私の家族は比較的幸福な家庭を築いていた。決して裕福ではないけれど、普遍的で平々凡々とした並大抵の暮らしは出来ていた


優しい母、少し寡黙だが格好いい父、賢く面倒見の良い兄、そして私。毎日夜には家族全員揃って夕飯を食べて、その日あった出来事を語り合う。平均よりもよほど幸福であった自覚もある


変わってしまったのは、私が中学生の頃。兄が失踪した


「友人達と夏祭りに行ってくる。終わったら少し夜の散歩をするつもりだから、先に寝てていいよ」


そう言って出掛けた兄は帰ってこなかった。都会ではない地元の小さな夏祭り。出店の店主達は全員顔見知りと言えるから、何かあったら報せてくれるはずだった


しかし、出店の店主達は口を揃えてこう言った


「祭りには来てなかったよ。彼の友達は来てたけどね」


警察にも頼った。一日でも早く帰ってきてくれることを家族全員が願った。そして、案外早くその願いは叶った


兄が遺体で見つかった。近所の森で、沢すらないところで、溺死していたらしい。検死官は目を疑ったらしい。海無し県の森の中なのに、肺には海水が満ちていたらしい


そこから、私の家族は壊れていった


次におかしくなったのは母。兄の葬儀の三日後、近所のスーパーのトイレで焼死体として発見された。火災報知器があったにも関わらず、火元一つ無かったのに、個室一面が炭化する程の悲惨な状況だったらしい


私と父だけになり、私も気が触れそうになった。そんな時に、父が居なくなった。居間のテーブルに名刺を一つ残して忽然と姿を消した。名刺には、社名も社員名も書いてなかった。ただ一つ、写真が貼り付けられていた


〈!〉


これが、私がここで働く理由。初めて見た映像から解った。ここで働けば、兄の死も、母の死も、父の失踪も、手掛かりくらいは見付けられるんじゃないか?


私の家族は比較的幸福な家庭を築いていた。その幸福を壊した根元を、私はここで探している

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