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〈06〉

「き…記録を…開始する…っ」


圧し殺すような声から映像は始まる。場所は廃工場らしく、既に停止しているコンベアや機器が埃を被っている


撮影者の男性は小声で報告をする


「今回の依頼は…野犬の捕獲と聞きました…なのに…なのに…っ…な、何ですか…あれは」


震える手でカメラを向ける。向けた先には数匹の犬が群れている。何かを食べているようで、何を食べているのかはわからない


「匂いから…わかりますよ…けど…なん…何で…あんなものを犬が…」


撮影者は、犬が何を食べているのかわかっているらしい。圧し殺すような声も、犬に気取られない為であると推測できる


「とにかく…この依頼は無理です…依頼人には…僕が直接詫びに」


ワンッ


撮影者の言葉を遮るように、可愛らしい声が聞こえた。撮影者が後ろを写す


そこには一匹のトイプードルが、何かを咥えていた。赤黒く細いものと、それに繋がっている球体


視神経と眼球だった


「うわぁぁぁぁ!」


撮影者は絶叫と共に駆け出す。映像は撮る余裕がないとわかる程にぶれている


撮影者を追うように、犬の鳴き声が接近するのがわかる。撮影者は声にならない叫びを発しながら走る


「あっ」


何かに躓いたらしく、カメラは宙を舞う。地面に落ちた衝撃で、半分ほど暗転した


「いだっ!いだい!やめっ!た、食べないでぇぁぁ!」


犬の鳴き声、ぐちゃぐちゃという音、液体が吹き出す音、声とも言えないような絶叫が十分程続いた


映像は途切れ途切れとなり、三分後に暗転した


記録はここで終わっている


ーーー


調査依頼

依頼者:江本勇太郎(37)

場所:大分県某所

内容:放逐された野犬の捕獲

派遣人数:男性職員一名

総評

ペットを飼いきれず、山や森に捨ててしまう人が最近増えているとニュースで聞きました。折角迎えた家族の筈なのに、何故捨てるのか理解に苦しみます。本当に、家族は、大切にしないといけません。本当に…本当に…

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