〈05〉
床に置かれた状態の場面から映像は始まる。画面に写るのは何処かの駐車場のような場所。それと、カメラの前でゆっくりと左右に揺れる浮いた人の両足
ギシ…ギシ…と音が聞こえる。浮いている人の足元には、見慣れた社員証入れが落ちている。どうやら、この人物はこの事務所の職員らしい
二十分程この画が続いた
カツカツと歩み寄る足音が聞こえる。そして足音の主はカメラを拾ったらしく、映像は持ち上げられるところを映す
撮影者は浮いている人をはっきりと撮る。男性の首に巻かれた麻縄、スーツ姿、口からは何かを吐き出したのだろう痕跡が残っていた。ズームしたり、回り込んで顔を写したりする撮影者。顔には涙の跡も見てとれた
五分程撮った後、撮影者はくるりと真後ろを向いて歩き出した
「…♪」
鼻唄が聞こえる。声からして女性のようだ。何処か楽しそうに口ずさんでいる
二分後、スキップを始めたようだ。映像はかなりぶれて揺らされる。鼻唄ははっきりとした歌声に変わっている
更に五分後、ピタリと歩みを止める
「…キャァァァァ!」
突然、音割れする程の声量で叫び出す撮影者。半狂乱になりながら走り出す。再び映像は激しく乱れる
三分程走った後、またピタリと止まる
撮影者はカメラを床に置いた
そして撮影を止めたらしい
記録はここで終わっている
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調査依頼
依頼者:小渕友之助(52)
場所:埼玉県某所
内容:解体予定の立体駐車場での怪奇音の調査
派遣人数:男性職員一名
総評
理解が出来なかった。男性職員がカメラを起動したのだと思うが、起動から首を吊るまでの間が完全に消失していた。再生時間を確認したところ、映像は二時間四十六分からのスタートだった




