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〈03〉

「記録を開始しますわ」


チクタクチクタクと、時計の音が響く一室から映像は始まる。四方の壁には幾つもの時計が掛けられたり置かれたりしている


その時計の全てが、別の時間を刻んでいた。秒針の動くタイミングもバラバラで、チクタクという音も重なって聞こえる


「この部屋は、住民の方が知らないうちに出来ていた一室のようですわ。家の設計図などを見せてもらいましたが、この部屋がある位置に部屋は無いはずですの」


ぐるりと見渡すようにカメラを向ける撮影者。一周した時点でピタリと止まる


「…あら…?私が入ってきた扉は…?」


窓一つ無い壁には、確かに扉のようなものは映って無かった。チクタクという音に紛れて、段々と息が荒くなる撮影者


慌てた様子で壁に駆け寄り、時計を外して壁を叩く


時計の音は一層大きくなった気がする


「だ、誰か!誰か居ますか!」


強く壁を叩く。途中でカメラを床に置いて、必死になって壁を叩く


その全ての音が、声が、時計の針の音で掻き消える


「煩い煩い煩い!不揃いなのも!鳴り続けてるのも!気持ち悪いんですのよ!」


半狂乱になって、掛けてあるものは剥がして床に叩き付ける。置いてあるものは蹴ったり殴ったりして倒していく


それでもチクタクチクタク


撮影者が何かを叫んでいる。もう時計の音しか聞こえない


撮影者が叩き付けた時計がカメラに直撃して映像が消える


記録はここで終わっている


ーーー


調査依頼

依頼者:牧野夫妻

場所:新潟県某所

内容:設計時に無かった一室の調査

派遣人数:女性職員一名

総評

終始煩い映像だったと思う。いくら一定のリズムで刻む音だとしても、不揃いであったり、数が多すぎると、人は簡単に狂ってしまうのではないかと思った

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