表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

その7

続きです

そんな変わらない私の生活にちょっとした変化が起こったのは、次の日の昼過ぎだった。私は施設長のデスクの前に居た。


「レクリエーション係?」


 絶句してしまった。数日前の杉山さんの『変わった人』というフレーズが頭の中で何回もリフレインされている。変わった人…変わった人…変わった私…


「この業界もね、競争なんだよ。よその施設に勝つためには何かウリが必要なんだよ。悪いが頼むよ。」


「あの…なんで私が選ばれたんでしょうか?」


 私は一番の疑問を聞いた。ずっと考えていたが、全く理由が思い当たらなかったからだ。


「うん、まあ、なんだ。」施設長は少し言いよどんだ。


「もしかして…適当ですか?」


 私は施設長を睨みつける。いくら上司でも今は感情の抑制が効かなかった。


「違う。そんなんじゃない。」


 私の眼力に一瞬ひるんだ施設長は体勢を立て直したのか、言葉に落ち着きが戻っている。


「君がストイックに仕事に接しているのはよく聞いているよ。入居者様に好かれているのもね。だからこそ、だ。君ならリクリエーションに対して真剣に取り組んでくれると思ったんだ。良いレクリエーションはそれだけたくさんの入居者様を喜ばせるからね。適任だろう。」


 私は黙っていた。納得はしていなかったが、そのように見られていることに少し嬉しさを感じたことは確かだ。


「何でも協力するから、」施設長は続けた。「うちの施設のこれからの発展に関わるからね。何か心配事があるなら言いなさい。」


 ひとついいですか、私は聞いた。


「レクリエーション係は私一人ですか?」


「それは任せよう。必要な人員は確保するから。誰か思い当たる人はいるかい。」


 私は少し考えてから、神月さんに頼んでいいかと答えた。


「ああ、いいとも、私の方から言っておくよ。他には?」


「いえ、とりあえず二人で。まだどうなるか分かりませんから。では失礼します。」


 私が出て行こうとすると、ちょっと待ってと施設長が止めた。


「何ですか?」


「人員のことなんだが…」と施設長が言い淀んだ。何か言いにくいことらしい。


「何でしょう?」


 その態度にイラッとしながら、私はもう一度話を促した。


「…荒木君を加えるというのはどうかな?」


「荒木…さんですか?」


「ああ、そうだ。彼もこの係に向いていると思うのだが。」


 一瞬だが、彼の姿が頭に浮かんだ。しかし、それとともに浮かんだ感情は私の心を決定づけた。


「それは施設長の命令と受け取っていいですか?」


「い、いや違う」施設長は私の視線に少し慌てたように訂正した。


「あくまでも僕個人の意見だよ。」


「では、お断りします。失礼します。」


 私は部屋から出た。そんなことはあり得ない。私は怒っていた。

まだ続きます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ