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第7話「礼節、勇気の発動」

ロゼールは再度、


「ベアトリス様! 修道院長様の件、ご再考をお願い致します!」


と、ベアトリスへ向かい、ひざまずいたまま、頭を深く下げ、きっぱりと言い放っていた。


びっくりしていたのは、教育係のジスレーヌだけではない。


かばって貰った当の修道院長も驚愕。


花嫁修業、行儀見習いの女子達の為に、良かれと思って厳しくして来た。

しかし、数多の女子達から、自分へ苦情が出ていた……事実が発覚した。

しまったと思い、後悔もした。


そして、ロゼールへも厳しくシビアに叱責するのが日常だったのに……


自分を憎んでいると思ったロゼールがまさか、かばってくれるとは……

全くといって良いほど思っていなかった。

なので、目をぱちくりしていたのだ。


そんなロゼールを、まっすぐ射るように「びしっ!」と見つめ、

ベアトリスは、シニカルな笑いを浮かべながら数回頷く。


「ふ~ん……ロゼール、修道院長同様、貴女も私に逆らうの?」


ベアトリスの問いかけに対し、ロゼールは小さく首を横に振る。


「いいえ!」


「では、私の決定に従いなさい。修道院長は失職させます」


「ですが、ご再考をお願い致します」


「へえ、私がこれだけ言っても……まだ逆らうの?」


「ご再考をお願い致します」


「私は言ったはずよ。3度目の反抗は私のマイルールで、NG決定だって……私の決定を4度も否定した貴女を、更に厳罰の『追放』にするわ」


「追放……ですか?」


「ええ、追放。……ロゼール、貴女がこの修道院へ来た経緯を私は知っている」


「そうですか」


「このトラブルで貴女は実家から勘当される。私にも逆らったから、この国にも居られなくなるわ。つまり完全に国外追放よ!」 


「構いません! 元々、1か月前、ここへ来た時にすぐ脱走して、遠くへ旅に出るつもりでしたから」


「あははは! 来てすぐ修道院を脱走して遠くへ旅立つの? 貴女、やっぱり面白いわね」


「けして面白くはありませんが……私、旅に出て、他国へ行くつもりでしたから」


「あはははは、それが何故、思い(とど)まったの?」


「はい、武道ひとすじ、全く世間知らずの私は、まずシスター、ジスレーヌ……騎士隊OGのジスレーヌ・オーブリー先輩に慰められ、様々な事項のご教授を頂きました。そして、修道院長様には、くじけそうになる度、厳しくも温かく叱咤激励されたのです」


「成る程。それで思い留まり、1か月間、修道院で、花嫁修業、行儀見習いが出来たって事ね」


「はいっ! 私がくじけず、あきらめずにやって来れたのは、シスター、ジスレーヌと修道院長様のお陰なのです」


「そうなの?」


「はい! 修道院長様は、誤解されやすい方なのだと私は思います。あまりにも私達の教育に熱心なあまり、つい言葉がきつくなり、やりすぎてしまうのです」


「うふふ、私達の教育に熱心なあまり、つい言葉がきつくなり、やりすぎてしまう……か。……確かにそうかもね」


「もしも今回の件で反省なされば、修道院長様は、充分やり直せると私は思います。どうか、ベアトリス様! 今一度再考され、修道院長様へチャンスをお与えください!」


「うふふ、ロゼール。貴女の言いたい事は良~く分かったわ」


「はい! というわけで。私ロゼール・ブランシュは、修道院長様には大きな恩義があります。騎士隊を除隊しましたが、私は今でも騎士です。忠誠、公正、勇気、武芸、慈愛、寛容、礼節、奉仕の8つの徳目は私の心のいしづえです」


「成る程。ロゼールの礼節―目上を敬い、目下を侮らない謙虚さ、勇気―いかなる場合でも強者へ立ち向かう胆力……が、今、発動したという事ね」


「はい! そうとって頂いて構いません。ですから、ベアトリス様が、もしも修道院長様を失職させるというのでしたら、修道院長様の大恩に報い、私は反対致します。そして反対が通らぬ場合、ベアトリス様のご命令通り、追放され、遠くの他国へ旅に出ようと思います!」


はきはきと言い放ったロゼール。

対して、ベアトリスはシニカルに笑ったままだ。

表情を全く変えない。


「うふふ、抜きん出た女傑の貴女が、遠くの他国へ旅に出るなんて、我が王国の貴重な人材の流出……それは困るわ、ロゼール」


「ベアトリス様にそこまでお褒め頂き、誠に恐縮ですが……では、旅に出さないと申されるのなら、私を牢獄に幽閉でもするおつもりですか? ご命令とあらば従いますが……」


「あはは、何よ、その(いさぎよ)さ。ふふふ、負けたわ」


「負けた……とは?」


「『前』修道院長殿!」


「は、はい!? ベアトリスお嬢様!!」


「『前』を取ってあげる! 貴女の失職は、ロゼールの心意気に免じて、取り消しよ!」


「え?」


「まさに、情けは人の為ならずね。すんでのところでロゼールがかばってくれたのよ、感謝しなさい」


「は、はいっ! ありがとうございます!」


「うふふ、私へではなく、修道院長殿、貴女がお礼を言うのはロゼールよ。……今後はもう少し相手を(いた)わって、物言いをなさる事ね」


「は、はい! そ、それはもう!」


修道院長は、すぐロゼールに向き直り……深く頭を下げた。


「ロゼール殿! いえ、シスター・ロゼール、本当にありがとうございます! 貴女と創世神様に多大な感謝を致します。充分に反省しますから、今後とも宜しくお願い致します」


対して、ロゼールもうやうやしく礼をした。


「こちらこそ! 宜しくお願い致します。修道院長様!」


ふたりの様子を満足そうに眺めていたベアトリス。


「うんうん! よしよし! それと修道院長殿、こういう落としどころはどうかしら?」


「お、落としどころ?」


「ええ、修道院長殿のおっしゃる事も一理ある。確かに、経験不足のロゼールに私の教育係をやって貰うのは負担が大きすぎるわね」


「と、申しますと?」


「私も旧知のオーブリー元子爵夫人、シスター・ジスレーヌに教育係としてついて貰い、花嫁修業、行儀見習いの教授をして頂くわ。ロゼールと一緒に仲良く修行するのよ。で、あれば全てが丸く収まるでしょ?」


何と!

ベアトリスは、ロゼールとともに、花嫁修業をする提案をして来たのである。

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