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第13話「地獄から来た魔獣女子ふたり」

「はいっ! 了解致しましたっ!」


背筋をピンと伸ばし、直立不動となったロゼールは、

ベアトリスに対し、「びしっ!」と敬礼していた。


と同時に、ロゼールは、ぱぱぱぱぱ!と思考を働かせる。


敵はオーク100体!

自分が盾となり、先頭に立って戦い、後衛をベアトリスにフォローして貰う!


作戦は決まった!


「ベアトリス様!」


「おう!」


「私が先頭に立ち、後衛をベアトリス様で、手あたり次第、オークどもを各個ガンガン撃破し、襲われているシスター達を助けます!」


ロゼールが言い放つと、ベアトリスはニッ笑う。


「おう! 了解! ロゼとなら、オーク100体如き、楽勝だわ!」


次にロゼールはジスレーヌへ、


「はい! そしてジスレーヌ姉!」


びしっと通る妹分の声を聞き、元騎士のジスレーヌは気合が入った。


「は、はいっ!」


「私達が助けたシスター達を順次回収し、5人で戦いながら、本館へ撤退してください! ……以上!」


「りょ、了解!」


「では! 全員武器を取り、出撃!」


ロゼールは全員へ号令をかけた瞬間、すぐメイスを取り、外へ飛び出した。

ベアトリスもメイスをひっつかみ、ロゼールの後を追った。


ジスレーヌ達5人もメイスを持って続いた。


ロゼール達7人が外に出ると、農場は『地獄絵図』と化していた。


あちこちで、逃げ惑うシスター達をオークどもが襲っているのだ。

捕まえたシスターの服をちぎっているオークも居た。

オークどもは人間の女子を乱暴! ……するのだ!


ぎゅ!と唇をかみしめたロゼールは、更に速度をあげ、

捕まえたシスターに馬乗りになっていたオークの頭を!

メイスで思い切り()ぎ払った。


どごおおっ!!


凄まじい音がして、あっさりオークの首が折れ、真横になった。

当然オークは絶命し、崩れ落ちた。


さあ! まず1体!

次っ!


すぐそばでも、シスターがオークに羽交い絞めにされていた。

背を向けたオークは捕まえたシスターに夢中で、ロゼールが仲間を倒した事に全く気付かない。


卑怯もへったくれもない!


ロゼールは背後から、オークの脳天に思い切りメイスを振り落とす!


どごお!!


オークの頭がぺしゃんこになり、あっさり崩れ落ちた……絶命!


よし!

1か月のブランクは関係ない!

行けるっ!


後続に、ジスレーヌがついて来ているか、分からない。

しかし、構わず、ロゼールは大声で叫ぶ。


「ジズレーヌ姉、ふたり、助けたっ! 回収宜しくっ!!!」


「了解!」

という声が聞こえたような気もしたが、ロゼールは後ろを振り向いている余裕がない。

助けたシスターを、大丈夫かと労わる余裕もない。


次から次へと、襲われているシスターを助けるしかない。

ぐずぐずしていたら、「アウト!」になってしまうから。


そして!

ベアトリスの安否を気遣う余裕もない!


ただただ『ひとりの戦鬼』となり、群がるオークをひたすら倒すのみ。


その時!


「おらおらおらおらあ!!!」


聞き覚えのある声が辺りに響き、


どご! ばご! がん! どかっ!


と、重く肉を打つ音も響いた。


あ!

ベアトリス様だ!


一度に!?

よ、4体も!?

や、やっつけた!?


うっわ!

さっすがあ!

やっるう!!

私も負けていられないっ!


瞬間!

大きな気配を感じた。


ハッとしたロゼールが見やれば……

リーダーらしき筋骨隆々の上位種――

3m近くある突然変異種の大型オークがひとりのシスターを襲っていた。


「おおおおおおおおおっっっ!!!」


自然と気合が入った声が出ていた。


リーダーの大型オークもロゼールに気付き、捕またシスターを放すと、


ごっはあああああああああああ!!!


大きな口を開け、牙をむきだし、凄まじい声で咆哮した。


しかし!

ロゼールは猛ダッシュ!!

全く臆さず、正面から飛び込みジャ~ンプ!!


リーダーオークが手を伸ばし捕まえようとする、遥か上空を飛び、脳天へメイスを、


どっごおおおおおおおおおおおおおんんんんんんんんん!!!!!


と、思い切り振り下ろし、頭を粉砕していた。


リーダーオークを倒したロゼールは、


「おおおおおおおおおっっっ!!!」


と再び(とき)の声をあげた。


リーダーが死んだ事実は、暴れていたオークどもへあっという間に伝わった。


頭を潰された群れは(もろ)い……


そしてロゼールに呼応するように、ベアトリスも吠えた。


「おおおおおおおおおっっっ!!!」


「おおおおおおおおおっっっ!!!」


ロゼールも応じて吠え、農場には猛獣女子ふたりの咆哮が満ちた。


自分達を遥かに凌駕する猛獣……否!

地獄から来た魔獣女子!!

それが2体も居る!


逃げ腰となったオーク達の心が完全に恐怖で染まった。


ひええええおおおおっっ!!

ひいいいいいおおおっっ!!

ぎゃっぴいいいいいっっ!!


悲鳴をあげ、逃げ惑うオークどもを、

ふたりの猛獣女子は次々に倒して行く……


勝負は決まった!


結局ロゼールとベアトリスは、たったふたりで、

襲って来た約100体ものオークをあっさりと倒したのであった。

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