無色の忌子
セブンのささみ揚げが好き。
意識が覚醒するのと同時に起き上がる。
ただ、天井に頭をぶつけないよう完全には身体を起こさない。
いつも通りの朝。
俺は出かける支度をする。
素早く。かつ、慎重に。
3段ベッドの下段にはまだ寝ているやつがいる。
(相変わらずうるさい。)
2段目に寝ていたやつは、こいつのいびきがうるさい所為で寝られず、別部屋に移った。
これもいつも通りだ。
そいつを起こさないよう物音1つ立てずに3段目から飛び降り着地、そのまま部屋を出る。
いつもど──
「どうしたの、嫌な夢でも見た?」
ドアノブを握ったまま視線だけを左に向ける。
紫の髪に黄色い瞳、何より特徴的なのが手をかっぴらき、肘も伸ばしてぶんぶんと手を振る女がいた。
「……なぜ?」
「だって泣いてるじゃない」
普段の妖美な雰囲気はどこへ行ったのか、女は無邪気にころころと笑う。
──ルーナ指揮官兼養護員。
希少な回復魔法を使えることから、若くして指揮官となった女。普段は大人しく、愛想がいい──
「そんなわけ」
あり得ないが一応袖で、頬を拭う。
「ね?」
袖は滲みができていた。
言われてから自分がいつもより、いろいろと何かを考えていることに気が付く。
普段ならあいつのいびきがうるさかろうと気にしないし、この女の気配に気付かないわけない。
嫌な気分だ。
「誰にも言うなよ」
「はーい、じゃあ代わりに補習してあげるから、空いてる夜に来なさい」
そう言ってルーナは意味ありげな視線を向けてきた。
俺は無視して洗面所へ向かい、顔を洗って部屋に戻る。
これ以上あの女に付き合ってられない。
ただでさえ胸糞悪い任務が待っているというのに。
──王都グランエルム第三地区
途中でポーションや保存食、簡易トイレなんかも買い足して行く。
今日から5日かけてダンジョンを完全攻略する予定だから、それなりの備えが必要だ。
背負ったリュックサックがパンパンになったところで、やっと本来の目的地に足を向ける。
5分歩いた所で、第一地区へと続く門に着いた。
2人の兵士が門の前で談笑している。
俺が近付くと、2人の兵士はこちらに向かって敬礼をしてきた。
しかし、俺だと気付くや否やすぐに手を下げる。
向けられるのは侮蔑を含んだ目。
いちいち気にしていられないので、無視して通行許可証を提示しさっさとと門をくぐった。
「ちっ、無色の忌子かよ」
神の祝福を受けない、僕の異名だ。
まさかのいきなりタイトル修正!