教室
俺は昨日の放課後、変なものをみた。なんだろうか、この世界のものと思えない美少女がこの世からういなくなろうとしていた、とでも言おうか。
たしかあいつは同じ学年にいたと思う。先月入学したばかりで、まだ同級生全員は把握できてないから確信は持てない。あたりを見回してもあの女の子はいない。
「次の休み時間に、ほかの教室をみようかな」
そんなことを思いながら、三時限目を過ごす。
―チャイムが鳴った。とりあえず次の授業の準備を済ませ、教室を出る。
「まずは隣っと…」
「おーう、どーしたんだ?お前からこっちに来るなんて珍しいなー」
しまった。隣のクラスにはこいつがいた。向井 浩一。俺の中学の友達で、同じ高校に合わせにきたヤツだ。自分の将来とか考えてないのだろうか。
「あ、いや違うんだコウ。ちょっと人を探しててな」
「へー、お前が人探しなんて珍しいなー。で、どんな人?」
こいつは入学初日にこの学校の生徒と友達になったとの噂だ。こいつなら聞く価値はあるかもしれないな。聞いてみよう。
「えっと…身長がこんくらいの、黒髪ボブの女子」
「…お前なあ。自分のタイプ言ってもおすすめの女子は紹介しねーぞ?」
「ちげえよ!一瞬だけみて気になったから探してるんだ!」
この言い方もちょっと怪しいなと思っているとコウは少し残念そうに言った。
「悪いがそんな女子に心当たりはない。バスケ部ならショートはいっぱいいるけど、みんな身長高いから違うだろうな」
そうか…と肩を落とすとチャイムが鳴った。そんなに長く話してしまったのか。互いに軽い挨拶を交わし、自分の席へ戻る。
席に座った時、彼女が不登校がちだったことを思い出した。じゃあひょっとしたら友達さえいないかもしれない…?そんなことを思いながら、四時限目を過ごす。