表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミュータント・ブラッド・ゼロ  作者: 玖音ほずみ
純然/神倉沙月
9/36

第3節 ①

「ちょっと遅くなっちゃったかな」


 買い出しを済ませて帰路に着くと、沙月は独り言を呟いた。

 プリンや牛乳、晩ご飯用の弁当だけでなく、ついでに枯渇しかけていたいくつかの日用品も購入したので、遅くなった。スーパーマーケットに立ち寄ると、こうしたついでの買い物もついついやってしまう。

 おかげで、両手がレジ袋で塞がっていた。

 こんなとき、何かに襲われたり事故にあったら身を守れないなと思った。


「野良に出会ったら、ね…‥」


 スカートのポケットの中に入れた護身用ナイフの重みを感じながら、沙月はセンセイに忠告されたもしものことを思い出す。

 そんな出来事は、そうそうないだろう。だけど最近、野良が現れたという報告がやけに多いのも事実だ。

 それはこの地域だって例外じゃない。事務処理がやけに多いのも、きっとそのせいだろう。


 センセイが言っていた〝野良〟とは、突如として街中に出現した変異血種のことである。

 通常、変異血種ミュータントは突発的には発生し得ない。天然変異型はもちろんのこと、自然変異型として覚醒するにしても、何らかの兆候がある。


 その兆候がある人間や動物が確認されれば、研究機関が保護・観察しに向かうことが常々だ。

 だがそういった兆候が周囲にバレないようにしていた、研究機関から漏れ出したデータが一般人に利用された、急な自然現象が原因で変異したなどで、予想外の変異血種が現れるときもある。


 特に多いのが、どこからか漏れ出した研究データを元にして作られた薬物を、一般人が服用してしまうパターン。

 ヤクザやマフィアなどの裏社会の組織がそういった薬物を使用するのなら、彼らも極力バレないように徹底するので、よっぽどのことがなければ、その類が野良になることはない。


 だが半グレやクスリの売人、少しハミでた若者の集まりなど、そういった表とも裏とも言い難い部類の一般人が、変異血種化の薬物を入手した場合が一番危険性がある。

 裏の組織としてもみ消すことも出来ず、かと言って表沙汰に出てくるほどに目立っているわけでもない。そんなところで偶然生まれてしまった変異血種が、〝野良〟になりやすい。


「ま、そんな簡単に出会わないよ、うん」


 沙月はそう呟き、いつもと変わらない帰り道を歩く。

 だが公園の近くを通りかかったとき、沙月はいつもと違う違和感を感じ取った。


「……このにおいって」


 勘違いかもしれない。

 けれど、うっすらと、血の匂いがする。


「一応、ね」


 沙月は買い物袋を左手にまとめて、護身用ナイフをいつでもポケットから取り出せるような状態を保つ。

 沙月は予想外の人物と遭遇した。

 そう、彼女は確か――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ