プロローグ
主要キャラは執筆時点に脳内で声を付けて書いています。
それを想像して読んでいただけるとよりお話に臨場感が増してお読みいただけるかもしれません。
主人公は○山潤さん、杏里は伊○静さんです。
「鷹遠杏里!異界の門を探しに行くぞ!」
七月七日の午後19時。
そこが事の起こりだった。
俺、笹垣七哉は妙な確信に導かれているのを感じていた日。
「ちょっと七哉。なんでまた異界の門なの。
異界の門〜とかのブームは中学入ったあたりの時に1回やらなかったっけ?」
「なぜ……? ククッ――'cause my Destiny
導かれたからさ!」
「いやいや、全然わかんないから。
てかそれ構文とかあってんの?
……いやまぁ、いっか。アンタ昔から意味はそこそこ。響きさえカッコ良ければオッケーだったもんね」
この手のツッコミは無駄か、などと喚いているのは、
このセミロングの赤髪女は、俺の古きからの盟友……認めたくは無いが姉のような存在だ。
「時に杏里よ。貴様、異界の門を探しに行くというのにそんな防衛力の低い装いで出向くつもりか?」
緩めの黒のタンクトップにデニムのホットパンツ、そしてビーサン。
いかに夏だといえど、普段ただ外出するだけにしても微妙な格好だ。
特にタンクトップから溢れそうな胸元が目のやり場に困るので何か羽織るなりしてほしい。
俺はデザインがクールな黒の登山靴に黒のパンツにシャツ、そして異界探索用のバックパックと全身黒ずくめの動きやすい恰好で決めているというのに。
「え、なになに。
そんな茂ってる感じのとこに行くつもりなの」
「いや、そういうわけでは無いが、
せめてスニーカーくらいにした方が良いだろう。
無事異界へ着いた時に、そんな装備で大丈夫かと現地のものに驚愕されてしまうぞ」
「あー、それは無いからへーきへーき。
それじゃ、お姉さんとサクッと七夕デートと洒落込もっか!」
「異界の門の調査、だ。杏里」
へーきなどと言いながら、素直に履き替えている。
たかが3つ歳上なだけでえらいお姉さんぶりよう、
しかも事あるごとにからかってくるのが厄介だ。
流石に長い付き合いなだけあってある程度耐性は付いているのだが、稀にタチの悪い絡み方をしてくるのはまだ慣れそうにない。
「それで、結局どこに向かってるわけ?」
「裏のハゲ山の廃トンネルだ」
「へー、意外と近場なのね。
なんだか七夕デートっていうより肝試しみたい」
「いや……だから異界の門の探索だと何度も……」
デートはともかく、廃トンネルという明かりも人気もない場所の特性上、肝試しという表現にはやや肯定的な要素はあるな。
それならそれで、霊が出たなら出たで従えて霊能力者としてデビューするのも悪くないな……。
「ねぇ、また何か馬鹿なこと考えてるでしょ、
七哉すぐ顔に出るんだから……」
「馬鹿なこととは心外な。また新たな力について空想していたというのに……、
おや、あれは……」
トンネルから薄ら光が漏れている。
今はもう使われていないトンネルだ、光源なんてあかりあるわけも無い
クフフ、どうやら今回はアタリかもしれんな……。
中に入っていよいよ確信する。
「七哉。何かトンネルの壁光ってるんだけど……」
「愚問だな。杏里よ。
これこそ異界の門、その入口に違いない。
さっさと突入するぞ」
「いやいや、落ち着きなって。
確かにちょっと普通の光じゃないっていうか、かぐや姫思い出す感じの怪しさだけどさ。
ただ中に何か光る奴埋まってるだけじゃない?トンネル掘った時に使った明りとかが何かの拍子で電源入ったとか……?」
「そんな事あるか? コンクリ貫通して漏れる光って相当だぞ……
ほら、手だってスイスイ呑みこまれてちゃんと入口になっている」
「ちょ、えええええ!
アンタ何してんの!!流石にマジなら危ないから止めときなって!」
「ふっ、大丈夫だ問題ない。
では予定通りこのまま異世界探索と洒落こもうではないか」
「ちょっと七哉!ああもう!どうなっても知らないんだからね!!」
こうして、俺たちはあれやこれやと言う間に異世界に迷い込んだのだった――。
た……。