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子泣きじじい

作者: 福耳の犬

愛犬のワサビが死んでまる5年、あまりにも悲しくて悲しくて、再度犬を飼うことを躊躇っていた。


外出先で同じ犬種を見ると触らせてもらい、ワサビを思い出しては寂しさを紛らわしていた。


ある日近くの公園で同じ犬種のピンシャー、ミニピンを連れて歩いているおじいさんに出会った。


ミニピンは走り回りたそうにおじいさんの周りをぴょんぴょんと飛び跳ね、おじいさんに一生懸命遊んでアピールをしていた。


『あの〜ワンコ、、少し触ってもいいですか?』


おじいさんは快よく、


『いいよ、いいよ、いっぱい触ってちょうだい。』


人懐っこいミニピンは僕の周りを飛び回り、手を甘噛みしては僕に一緒に遊ぼうと誘ってきていた。


『ダメだよ〜勝手に遊べないからね。』


犬に向かって語りかけているとおじいさんは、


『ちょこっと遊んでくれんかね。わしも足腰が悪くてコイツを満足させてあげられないんだよ。』


公園の中ではあるが久しぶりにミニピンと駆け回り、とても楽しいひと時を過ごした。


それからおじいさんがいそうな時間を見計らって、公園を散歩した。


数回に一回は会うことが出来て、ミニピンと楽しく遊ぶことが出来た。


ある時ミニピンと遊んだ後、おじいさんの家に招待された。


おじいさんは一人暮らしで、


『気兼ねいらないから!』


と家に上がらせてくれ、


(ミニピンを連れだしていつでも散歩してもいいよ)


と提案してくれた。


そんな関係を続けるうち、我が家にもおじいさんは頻繁に来る様になった。


おじいさんは必ず缶酎ハイを【2つ】持って訪れた。


おじいさんの過去話は壮絶で話をするのも楽しく、いつも僕が夕食を用意して晩酌するのが日課になっていた。


おじいさんは缶酎ハイを飲んでいる間ご機嫌だった。


ある時アルコール販売店で格安の【18リットル】焼酎を見つけた。


(おじいさんも楽になるし買ってしまおう。)


酎ハイ用レモンジュースもセットで買い、家でおじいさんに披露した。


『これは有難い。これだけあれば【いっぱい】飲めるなぁ。』


後から思えばここから道を誤ってしまったのだ。


おじいさんは夕方になるとミニピンを連れて僕の家に現れ、【深酒】をすると泣き上戸になった。


最後は酔い潰れてしまい、朝僕が仕事に行く時も目を覚まさなかった。


仕方なくそのまま仕事に行くと、帰ってきた頃には酔って泣き叫び手がつけられなくなっていた。


(焼酎が無くなれば、、元に戻るだろう、、、)


おじいさんは僕のいない間に焼酎を買って取り寄せ、僕の背中にはずっしりとおじいさんの影が抱きついていた。


(.辛い。息苦しい。)


まるでいつも石を背負っている様に身体は怠く、おじいさんの泣き声はいつも耳の中に響き、僕の姿はみるみると痩せ衰えていった。


そして今日も家に帰ればおじいさんがいるだろう、、


赤ん坊の様に泣き続けながら、、




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