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episode.5 裏切り者





先程とは立場が逆になった、山賊と馬車の護衛達。護衛達の視線は俺に集まり、俺の言葉を待っている。


「俺は、夜鷹幽斗。見ての通り、異国の旅人です」


いきなり異世界人だと名乗って、驚かれるのも面倒だから今は嘘を付いておく。まぁ、どう見ても、服装が制服じゃ旅人には見えないか。


俺の自己紹介を聞いた女性達も自己紹介を始めた。


「私は、冒険者のアンネです」


盾と剣を持つ戦士は、アンネ。


「私は、《剛剣》のファルジアだ。同じく冒険者」


両手剣を持つ戦士は、ファルジア。


「私は、ネネ。こっちは、魔術師のネロ。助けてくれてありがとねー」


「同じく冒険者」


弓使いがネネで、魔術師がネロか。2人は姿が似ているな。姉妹か?


「一応言っときますが、皆さんは死んでますよ」


4人が数回瞬きを繰り返し、互いの姿を確かめる。


「でも、今は生きてるだろ?」


「そうですね」


「うん、良かった、良かった」


「だね」


この4人、ポジティブ過ぎてちょっと引いてしまう。もしかして、冒険者ってそういう連中が多いのか?


確かに、ライトノベルとかで見る冒険者は命の価値が低いイメージだ。


「本当に、私達は死んだのですか?」


馬車の中から初老の男性が現れた。彼女達に護衛を任せていた依頼主か?


すると、俺の前に赤髪が特徴のアンネが立ち、頭を下げた。


「フランネルさん、すみません。私達が弱かったばかりに、依頼主である貴方を護れませんでした」


「頭を上げて下さい。元はと言えば、無理を言ったのは私です。寧ろ、このような老体の為に、皆さんの命を散らしてしまった事に謝罪させて頂きたい。そして、再び、命を与えて下さった貴方様に感謝を」


なんか色々、堅っ苦しい爺さんだな。


「俺も皆さんを利用するつもりなので、感謝はしないで下さい」


俺の言葉に反応し、5人の雰囲気が変わる。


しかし、先程の戦闘で俺の支配力を身を持って体験している為、特にこれと言って行動しょうとする者はいなかった。


「利用、とは?」


「大した事じゃありません。ですが、この場を離れますか」


「では、死体を片付けた方が……」


「その必要はありません。スキル発動『強欲の霊王』」


再度、黒い光が一帯を塗り潰し、死んでいた山賊達が起き上がる。近くに倒れていた山賊の頭も起き上がる。その際、斬り落とされた腕が時間を巻き戻すかのように再生した。


なんだか、海外のゾンビ映画を思い出すな。


「ぁ、俺は……」


「《静かに》」


命令に従い、場が静まり返る。


命令を限定して行う事は出来ないようだ。これは、『強欲の霊王』のレベルが低い所為なのかどうかは分からないが、このままでは不便だな。


「どこか、安全で人に見つからない場所に案内して下さい」


これは命令ではなく依頼に近い。つまり、強制力はない。


しかし、山賊の頭は俺を鷹のように鋭い目で睨み付けた後に「付いてこい」と言い、歩き出した。その後ろを俺達は付いて歩いて行く。


その途中、山賊の少年が掴みかかって来た。


「何ですか?」


「なぜ、投降した者まで殺した?」


そんな事か、下らない。


「投降を信じるより、蘇生させた方が安全だろ?」


「貴様ぁ、それでも人間か!」


この少年の言葉を真に受けるならば、敵であっても命乞いをすれば救うのが人間という事か?何て、下らないんだ。


「愚かだな」


「なっ……」


「俺は殺されかけた、だから、殺した。俺は自分を殺そうとする相手に慈悲をかける聖人じゃない。それに、元はと言えば貴方が俺を見つけたんじゃないですか?」


その瞬間、少年の目が見開かれその場に崩れ落ちた。そこに、数名の山賊達が駆け寄る。それ以上、少年に興味を持つ事はなく、こちらを睨み付ける山賊の頭の元に行く。


相変わらず、鋭利な視線で睨み付けられているが気にしない。





案内されたのは、簡素な山小屋だ。周辺の木々や雑草は適度に切られ、難なく山小屋まで辿り着いた。


山小屋の中は、2メートル程の長テーブルと囲むように椅子が並べられていた。俺は勧められるまま椅子に座り、反対側に山賊の頭が座る。


「まずは、自己紹介をしましょうか。俺は、夜鷹幽斗です」


「俺は、ガラルドだ」


山賊の頭ーーガラルドが名乗った瞬間、意外な人物がガラルドの説明をしてくれた。


「ガラルドさんは、ベスティアス王国に使えていた元戦士です。実力は、国内でも屈指だと言われていましたが、ある事件の怪我が元で退役したと聞いています。私も王宮で何度か顔を合わせているので、間違いないかと」


「ガラルドさんは、襲った相手がフランネルさんだと知っていましたか?」


ガラルドは、少しの間目を瞑っていたが、程なくして「知っていた」と答えた。フランネルも少なからず、ショックを受けているように見える。


しかし、少しだけ不思議だな。


「フランネルさんの荷物は何ですか?」


「……薬草と魔物の素材です。私は、ポーションや薬の調合が趣味でして」


フランネルの言葉を聞いた山賊達の様子を観察する。すると、明らかにガラルドの様子が不審に感じた。


俺が問いただすより早く、あの少年の声が上がる。


「どういう事だ、ガラルド……」


「殿下、これは、その……」


ん、ちょっと待て、殿下?もしかして、この少年は王族なのか?つまり、この山賊達もただの山賊じゃないのか。


まずい、これは面倒な事になった。


「もしや、貴方はアヴェリー殿下ですか?」


「ああ、私……」


「……【少し、待って下さい】」


支配権を使い、一度話を止める。


「話を1つずつ片付けましょう。ガラルドさん、貴方がこの山賊の纏め役ですね?」


「そうだ」


「では、どうしてフランネルさんを襲ったんですか?【教えて下さい】」


支配権を行使する。


「ぅ、部下からフランネル殿が、陛下を暗殺する薬を作っていると情報が入った」


「その部下はこの中にいますか?【教えて下さい】」


ガラルドの腕がゆっくりと動き、1人の男を指差す。


「貴方は、フランネルさんが王様を暗殺しようとしていると、【誰に聞きましたか?】」


「く、宰相……ゲルアードルの使い、からだ…ちくしょう!」


「【動くな】。アンネさん、ガラルドさん、その人を拘束して下さい」


俺の言葉に、ガラルドが逸早く動き剣を抜き、振り下ろすが、剣は済んで所で止まる。


「ガラルドさん、その男は今後も利用価値があります」


「……分かった」


ガラルドさんは、男を殴り意識を刈り取る。


一応確認しておくか。


「この中で、アヴェリー殿下の不利になる情報又は、者との繋がりがある人は【教えて下さい】」


しかし、誰も声を出さない。


「それと、【俺の不利になる情報の開示はしないで下さい】」


俺の力は出来る限り知られない方が良さそうだ。


「では、次の話に移りましょうか」

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