「クロ、もみもみ」
初めまして、にゃあと申します。今は無き「すぴばる」で何編か投稿しておりました。
にゃあは、基本的に長いものが書けない字書きです。こちらでも、幾つか、短編を投稿させていただきたいと考えています。
よろしくお願いいたします。
さて、今回は、三題噺。今日のお題は、『毛布』『家』『腰』です。
「つっかれたあ。」
私は、ばったりと玄関に倒れ込んだ。
ぶんぶんと脚を振って、脱げかけのパンプスを靴脱ぎに落とす。冷たい廊下に顔を着けると、酔っぱらってほてった顔に、それはとても気持ちいい。
「うにゃあ。」
うちの子たちが、様子を見にやってくる。
「何でもないの、ちょっと疲れただけえ」
ふんふんと、みんなが、私の服をかぎ回る。
串焼きやで食べた鶏の匂いが、ついているのかもしれない。
「ぐるるるるる。」
のどを鳴らしながら、最後に、クロがやってくる。クロは、うちの子たちのリーダーで、とにかくでっかいオスの黒猫だ。
うにー。
私の鼻に自分の鼻を押し付けてくるクロ。
私が、背中をなでてあげると、ウニュウッと、背中を反らすようにして、そのまま、歩いていってしまう。
クロについて、他の子たちも行ってしまう。
私は叫ぶ。
「誰かあ、誰か、いないのおおお」
間。
なあんてね。
この家には、誰もいないのだ。
住んでいるのは、私とネコたちだけ。
でも、ちょっとぐらい、言ってみてもいいでしょ。
「クロお、クロおおお」
うにゃあ、と向こうの部屋でクロの声がする。
あ、そうだ。
私は、いいことを思いついた。
私は、ヨロヨロと起き上がって寝室に向かうと、通勤用のスーツを脱ぎ、ハンガーに掛ける。
そして、毛布を持って、居間に移動する。
キャットタワーに、ネコたちが乗っている。
私は、一番上の段に、クロがいるのを確認し、毛布をマントのように羽織って、床の上にうつぶせになる。
「クロ、もみもみ」
私は、クロに、そう呼びかける。
「クロ、もみもみ」
私は、背中に手を回し、ぴくぴくと、毛布を動かす。
「クロ、もみもみ」
とん、とん、とん。
クロが下の段に降りてくる音がする。
ぷにゅっと、私のほほに、クロの冷たい濡れた鼻が押し付けられる。
「クロ、もみもみ」
もう一度、私はそう言って、毛布を動かす。
クロが、私の背中に前足を掛け、のっそりとあがってくる。
彼は、もぞもぞと体を動かして、腰のくぼみに体を落ち着けた。
ぎゅっと、クロの前足が押し付けられる。
それは、すぐに離れて、その横に、また別の脚が押し付けれられる。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
リズミカルに繰り返されるネコのもみもみ行動。
手のひらを開くようにして押し付けては、握るようにして引き戻される、小さな前足。
もちろん、人の手には及ばないが、気持ち的には、十分だ。
私は、疲れた腰をもまれることで、どんどん癒されていく。
もみもみ。
クロのもみもみ行動は続く。
もみもみ。
あれ? と、私は、不思議に思う。
どんどん背中が寒くなっていく。
じゃ、なくって、背中の毛布がなくなっていく。
もみもみついでに、クロが爪を立てているのだ。
クロがどんどん、毛布をたぐり寄せていく。
毛布が、腰の方によっていくのが分かる。
そして・・・・
「痛い!」
私は、背中に鋭い痛みを感じる。
とうとう、クロの爪が、スリップ越しに、私の背中に食い込んだのだ。
私の背中の毛布は、今や、完全にたぐり寄せられている。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
クロの爪が、リズミカルに、背中に食い込む。
痛いことは痛いのだけれども、布越しだから、我慢できないこともない・・・。
この萌えるシチュエーションはあまりにももったいないじゃない?
背中の痛みで、心の痛みが癒されるのなら・・・・・・。
私は、クロに声を掛ける。
「クロ、もみもみ」
前書きにも書きましたが、基本的に長いものは書けません。
今回は、OLさんの登場です。基本的に、他の作品に登場するOLさんと、別人と考えていただいて結構です。
以前書いたものと、登場人物が似通っていると、合わせて、合わせて、まるで群体のごとく長編になったりもします。
魅力的な登場人物(あくまでも、にゃあにとってですが)が出来上がると、シリーズ化することもあります。